旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

ネットで募集 其の弐

2009-03-31 07:56:47 | 社会問題・事件
其の壱の続き

■携帯サイトで見つけたオイシイ仕事がトンデモない犯罪の下請けだった話の続きです。


……手紙の主は、昨年10月末に連絡が取れなくなっていた大学生の長男(25)で、韓国・仁川市の拘置施設から出されていた。そこには携帯電話のサイトを見たのをきっかけに、韓国で逮捕されるまでの経緯が説明してあった。……携帯電話のアルバイト紹介サイトで「海外旅行して稼げる仕事」という書き込みを見つけ、投稿者に連絡したのは昨年10月初め。都内の飲食店に呼び出されると、5~6人の男たちがいて食事をごちそうになった。その後も何度か食事に誘われ、家庭の事情で学費を稼がなければならないことなど、親身になって聞いてもらった。「これからは生活の面倒をみてやる」。リーダー格の男からそう言われたのは同月中旬。

■「海外で稼ぐ」のではなく「海外旅行して稼ぐ」というのですから、旅行会社などの宣伝に使う体験レポートを書くとか、よほど高い知名度を持っている人なら買い物やらグルメやらの宣伝番組に出演して稼ぐとか……。単純に「移動」するだけで成立する仕事などという物がこの世の中に存在するのなら、犯罪の臭いに気が付かねばならないでしょう。


マレーシアから韓国に「荷物」を運ぶアルバイトをすれば30万円を支払うと言われ、成田空港で引き合わされた20代前半の女性と2人で出国した。マレーシアでは携帯電話で指示を受け、白人の男からスーツケースを1人一つずつ受け取った。その日のうちに韓国に渡ったが、仁川空港の税関で、スーツケースの二重底に覚せい剤が隠されていることを指摘され、そのまま2人一緒に逮捕されたのだという。

■先の「メルボルン事件」でも、ヘロインが動き始めた場所はマレーシアで、運んだ物も二重底のスーツケースでしたなあ。あの時は団体ツアーに参加した客の一人がスーツケースを盗まれて……というストーリーだったのですが、今回の携帯サイトで募集していた「仕事」はずっと単純な形になっております。これもコスト削減だったのかも?


……その後も、手紙が届き、仁川空港で逮捕された日本人が数人いることも書かれていた。実際、東京・練馬の女性の家にも今年1月、韓国旅行に出たきり連絡が取れなくなっていた長男(24)から同様の手紙が届いた。

■北朝鮮の拉致犯罪に巻き込まれた可能性の高い特定失踪者とされる方々とはまったく違うはずですが、「韓国旅行に出かけたきり」という所が紛らわしい。行方不明になった場所が東南アジア諸国であっても同様に紛らわしい。日本国内で発生する外国人犯罪が摘発されると、道案内やら自動車の運転手役が雇われた日本人だった!という情けない話も多いようですから、海外での犯罪でも日本人が雇われているとしても不思議ではないのでしょう。正にグローバル化時代とIT技術が結合した多国籍犯罪が横行しているという話のようです。


……問題のサイトに書き込みをしていたのは、元東洋大生の渡辺恭被告(20)=覚せい剤取締法違反罪で起訴。事件発覚後、退学処分=だった。渡辺被告は、この書き込みを見て連絡してきた無職の男(25)を使い、マレーシアから覚せい剤を密輸したとして先月、大阪府警に逮捕され、今月には、同様に2人の運搬役にトルコから覚せい剤を密輸させたとして、警視庁に逮捕された。

■麻薬の運び人に仕立て上げられたのが20代の若者ばかりだとすると、30年前に公開された衝撃作『ミッドナイト・エクスプレス』を知らない世代が狙われていることになるかも知れません。この暗くて怖い映画は、トルコのイスタンブール空港で麻薬不法所持で逮捕された米国青年の実話!というので日本でもヒットしたのでした。そこで描かれる刑務所生活は実体験に基づいているだけにとてもリアルでしたなあ。主人公のビリー君は麻薬樹脂を地肌に貼り付けて密輸しようとして失敗してしまいます。米国映画らしく「自由」を取り戻す映画に仕上がっているのですが、発端が麻薬の密輸ですから鑑賞後の感想はなかなか複雑なものがあります。監督は『ミシシッピー・バーニング』を撮ったアラン・パーカーで、『JFK』や『プラトーン』を監督することになるオリバー・ストーンが脚本を担当してアカデミー賞脚色賞を受けております。

■携帯サイトで変な「募集」に応募する前に一見の価値があるかも?


渡辺被告は「15人ぐらい海外に行かせた」と供述。警察当局は、このうち横浜市の女性の長男も含め、少なくとも3人が韓国で逮捕されたことを確認した。渡辺被告が、サイトに書き込みを始めたのは昨年9月頃から。知り合いのホステスに紹介された男と、月30万円の報酬をもらう約束を取り決めていた。この男も密輸組織の末端にすぎないとみられ、関係都府県の警察は組織の割り出しを進めている。
2009年3月30日 読売新聞

■元大学生の渡辺被告は20歳!一体、どんな大学生活を送っていたのでしょう?まさか国際貿易や法律を勉強していたのではないでしょうな?!携帯サイトで運び屋を募集していたのが渡辺被告一人だとは限りませんし、韓国以外で逮捕されてしまった若者もいるのかも知れません。仁川の拘置所に入れられている25歳の大学生は、学費を稼ぐ目的で「仕事」をしたという話もあるようです。それが本当ならば、グローバル化の時代にIT技術が発達した上に米国発の金融危機で始まった世界的な景気後退が起こり、究極の日雇い派遣労働者として犯罪の片棒を稼ぐ役を携帯サイトで募集するような現象が起きたということなのでしょうなあ。募集したのも応募したのも大学生だったというのも、今時の日本を象徴してるような気もします。年齢から考えて、募集役は「ゆとり世代」で応募して仁川で逮捕された方は「ゆとり」前の世代に属してることになりますなあ。

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