旅限無(りょげむ)

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為らぬ堪忍するが堪忍 其の参

2006-03-06 20:59:45 | 外交・情勢(アメリカ)
■そんなに簡単にイラクに新しい国家が生まれて、皆仲良く連合軍の駐留部隊に感謝をしながら涙ながらに見送ってくれるなどと思っているとエライことになるかも知れません。

イラクでは次期政権の首相候補である移行政府のジャアファリ首相への反発が強まり、初の国民議会招集がずれ込むなど、新政権発足に向けた動きが停滞している。政府筋は4日、「混迷が深まっている。新政権の姿がまったく見えない中で撤収開始に踏み切るのは難しい」と語った。外務省幹部も同日、「最も気になるのは、各派による『ジャアファリ降ろし』の動きだ」と懸念を示した。

■ブッシュ大統領の自画自賛を真に受けていると大変な事になりますぞ!確かにニューヨーク攻撃では日本人も犠牲になってはいますが、日本には復讐どころか「交戦権」も「集団的自衛権」すら認められていないのですから、アルカーイダの残党狩りなど出来ませんし、直接的にサダム・フセインに憎しみを持つ関係でもないのですから、あの「全面的支持」が正しかったのかどうか?妙に運の良い小泉さんが、後々歴史に書かれる段階になって、「あれが最初だった」と言う裏話がゾロゾロと出て来るのかも知れません。石油の旨味を知ったアラブの人々を操って国を作ったり壊したり自在に出来ると思っている米国は、歴史を見誤っているかも知れないのです。


政府は、陸自撤収の前提として、新政権樹立など政治プロセスの進展、多国籍軍の主力である米英などの了承、サマワ住民の理解などを挙げている。政府内では「今の段階で最も重要なのは、イラクの政治プロセスだ」(防衛庁幹部)とし、想定していた「3月末開始―5月完了」の撤収日程を再検討せざるを得ないという見方が広がっている。小泉首相も3日夕、首相官邸で記者団に、「総合的に判断しなければならない」と述べ、撤退時期を慎重に見極める姿勢を強調した。

■誰も本当の意味を知らない小泉さんの「総合的判断」を、どの新聞もしつこく追い掛けないのは不思議ですなあ。今回の民主党の永田スットコドッコイ議員の自爆によって、小泉総理もブッシュ大統領を見習って、最後の国会を舞台にして自画自賛を始めて気持ち良さそうなのは、問題ですぞ!


政府が3月中の撤収開始を目指す大きな要因となっていた、サマワを含むムサンナ県の治安を担う英、豪軍の撤収計画も、流動的になりつつある。2月24日にロンドンで開かれた日米英豪4か国の外交・防衛当局の実務者会合でも、「任務完了のめどがついた」とする英、豪両軍に、米国が「イラクが安定しなければこれまでの活動は無駄になる」とクギを刺し、「部隊の撤収時期はイラク情勢を見て最終判断する」方針を確認した。このため、政府は「自衛隊の撤収時期がずれ込んでも、英、豪軍の撤収に乗り遅れる心配はない」と見ている。

■英豪両国には、米国の思惑に反して独自の判断で行動する自由は残されていますが、日本は完全に米国の手に手綱を握られているのですから、「総合的判断」はそのまま「米国の胸先三寸」と同義です。


首相は、今月中にも撤収時期を最終判断したい考えだが、当面はイラク情勢の推移を見守るしかない状態となっている。
読売新聞 - 3月4日

■3月末から撤収を始めるのは、新年度の予算を執行させるのに便利だからではないのでしょうか?そして、5月に撤収が完了すれば、国会の会期中でも有りますから、小泉内閣の判断と実行力は世界に認められた!と正当性を大声で宣伝するのに丁度良く、対米従属外交をそのまま次期政権に丸投げ型で継承させられる、これが外務省と自衛隊幹部の読みではないでしょうか?参議院選挙との絡みも計算に入っているのでしょうが、そんな「家庭の事情」が通るほど今の国際情勢は甘くはないですぞ!最後の最後に、運を使い果たした小泉政権が先送りして来た諸問題が深刻化して噴出し、その対応に追われている間に正真正銘のスキャンダルがまとめて発覚したりしたら、自衛隊撤収問題は後回しにされてしまうでしょうなあ。

■強引に日本だけが撤収を決定したら、それこそ米国の謀略によって政権が瓦解、スットコドッコイ民主党には政権移譲は無理ですから、米国の注文通りの後始末内閣が組まれるような事になれば、撤収どころか急転直下で「増派」やら「長期化」も議題になる可能性も出てきますぞ。


ペース米統合参謀本部議長は5日、FOXテレビに出演し、イラク駐留の米英軍が1年以内の全部隊撤退を計画しているとの英紙報道は「正しくない」と否定するとともに、治安情勢を見極めて駐留軍の規模を判断する方針を改めて示した。時事通信

■ハンバーガーやらステーキが大好きになってしまった日本ですから、ちょっと心配な牛肉を我慢して輸入するくらいは仕方が無いでしょうが、中東で戦争などしたくない日本は我慢してイラクやアフガニスタンで標的になる謂われは有りません。そこのところを、米国に一言告げておくべきだったのに、帰る段になって今更そんな話は聞いてもらえないでしょうなあ。インドに外務大臣を送って米国政府に対する口利きを頼みますかな?最近の日本は、イラクをすっかり忘れているように見えるのが心配です。

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