旅限無(りょげむ)

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準強姦とセクハラ 

2011-12-09 14:46:56 | 社会問題・事件
■本日で強引に閉じられる国会で野田ドジョウ内閣の法案成立率は34%なのだそうです。プロ野球で打率が3割台ならば大打者なのですが、国家公務員の給与を平均7.8%引き下げる特例法案などの「自ら身を切る」重要法案のほとんどは年明けの通常国会に先送り、連立相手の国民新党と固い約束を交わしていた郵政改革法案までも一緒に見送りとなって国会では野党が一川シリビリアン防衛大臣と山岡マルチ消費者担当大臣に対する問責決議案を参議院で可決させ、参院外交防衛委員会では8日に、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国との原子力協定の承認案をトンデモない原子力政策を続けていた責任を感じない自民党も協力して可決されると聞けば、野田ドジョウ内閣が青息吐息でやっと成立させた法案が3割台という数値の低さよりも中身と方向性の方がずっと心配になります。

■問責決議を突きつけられた一川シビリアン防衛大臣は、自分の歳費(月給)120万円余は平気な顔で懐に入れて大臣職手当て分の20万円ほどを返却することで責任を取ったことにしようとしているそうですが、ロクな仕事もしない民主党政権自体を仕分けして税金の無駄遣いを無くす第一歩として、自らの身を切って見せては如何でしょう?一般企業ならば顧客と市場という手強い監視がついていますから信用を失う不用意な発言をしたら即刻処分して善後策を次々に打ち出さねば生き延びられないものですが、政治家と官僚は不思議なくらいに「責任」を取らずに逃げ遂せる場合が多過ぎるようであります。そうした馴れ合い構造を壊すための政権交代だったはずなのですが、天災に世界的な経済危機も加わって本当の国難が襲い掛かって来るという時に役人天国は花盛りで、一緒に政治家も何も決めずに暢気な日々を送っているようでありますなあ。

■今年一年、あちこちで「格差」の問題が噴出して歴史は曲がり角に差し掛かっていることを証明しているのですが、日本に根深く潜んでいる格差のとても分かり易い例がマスコミに取り上げられております。法律には「格差」などあってはならないはずなのですが、日本の検察は証拠を偽造してまで国策捜査を行なって権力を濫用していたことが明らかになる中で鈴木宗男さんが仮釈放となって娑婆に戻って来たと政界もマスコミもちょっとしたお祭り騒ぎ状態のようですが、ムネオさんが冤罪事件の被害者のような扱いを受けていた同じ頃、警視庁捜査1課は、準強姦容疑で、アテネ、北京両五輪の柔道金メダリストの内柴正人さんを逮捕したのでした。男女の仲は余人には分からぬ事がありますから、事件の真相やら今後の展開はまったく分かりませんが、未成年者の飲酒が横行している事実は看過されてはなりますまいなあ。まして内柴元選手は既婚者でお子さんもいるとのことですから、大相撲の八百長事件とは違った意味で大問題となって波紋が広がって行きそうですが、今回の事件には相撲を含む運動競技界に蔓延する人権も法律も無視した強圧的な上下関係や支配関係が深く関わっている可能性が高く、準強姦罪が成立するかしないかとは別に最も広い意味での「セクハラ」犯罪が起こる危険性は高いと言えそうです。

■「教え子を泥酔させて強姦した!」とマスコミは自らの好色さを押し隠しながら面白おかしく報道を加熱させているようですが、内柴元選手の騒動を隠れ蓑にして尻に帆かけて逃げ出したもう一人のセクハラ犯人を見逃してはなりますまいぞ。


外務省は8日、現地女性職員へのセクハラ疑惑に伴い、田村義雄駐クロアチア大使を年内にも交代させる方針を固めた。同省は内部調査により、セクハラまがいの行動があったと判断した。ただ、事実関係にはあいまいな点が残っていることなどから、処分は見送るという。
 田村氏に関しては、一部週刊誌が女性職員に抱き付くなどしていたと報道。外務省幹部が田村氏に事情聴取するなど調査した結果、不明な点はあるものの、大筋でセクハラまがいの行動を確認し、「いつまでも現状を続けるわけにはいかない」(同省幹部)と結論付けた。
2011年12月8日(木) 時事通信 

■内柴セクハラ疑惑に目を奪われていた人には何の話やら、さっぱり分からないかも知れませんが『週刊ポスト』がスクープした卑劣な強制猥褻事件をさすがの外務省でも闇から闇に葬り去れなくなって大慌てで苦汁の選択をしたという恥ずかしい話であります。交代が決まる直前に『週刊ポスト』は田村大使を執拗に追求して「事実無根」という本人の発言を取っていたのは立派です。時系列を遡って事件を追ってみましょう。


財務省出身で環境省事務次官も務めた田村義雄・駐クロアチア大使(64)が現地採用のクロアチア人女性職員へセクハラ行為をしていたことが週刊ポストの報道で発覚した。今年4月、外務省では佐々江賢一郎次官が田村大使を一時召還し、内々に事情を聞いたという。だが、大使はあっさりとクロアチアに帰っていった。
省内では、「次官が大使を厳重注意して当面、改善されるか経過を見ることになった」とされている。査察官の調査で田村大使のセクハラ行為が裏付けられたにもかかわらず、身内だけで事実上、不問にしたのである。もし、東京の外国大使館に勤務する日本人女性が大使に同じ行為を受け、相手国でその事実が問題化しているにもかかわらず、大使が処分もされずに居座れば国民は屈辱に震えるはずである。邦人女性を暴行した在日米軍の兵士が日米地位協定で守られ、日本の裁判も受けずに帰国することに唇をかんできた国民には、その実感があるはずだ。…… 

■一川シビリアン防衛大臣が国会の場で「詳細は知らない」と臆面も無く国防の最高責任者としてあるまじき寝言を発して大騒ぎになっていますが、沖縄で起こった悲劇の加害者は身の丈2メートル超の変質者3人組で被害者は小学生の女の子でした。『週刊ポスト』がスクープしたセクハラ事件の加害者は元大蔵省エリート官僚の大使で被害者は貧しい現地の若い女性であります。


駐レバノン大使を経験した元外交官の天木直人氏が指摘する。
「事件の舞台が米国やフランスなど主要国であれば一発でアウトです。被害女性からセクハラ訴訟を起こされ、とうに外交問題に発展しているでしょう。クロアチアでもこれからそうなる可能性は少なくない」そのうえで、「国益より省益」の霞が関の構造的問題が外交の重大過失を招いていると分析した。
「問題は事件を起こしたのが財務省出身の大使だということです。主要国の大使など9割は外務省プロパーが務めているが、北欧や東欧の、治安や生活環境が良く、外交案件が少ない国には外務省が交流人事で他省庁に大使ポストを配分している。
次官経験者となれば実質的な天下り先です。仕事があまりないうえに、外交官特権が与えられ、給料も月額100万円以上の本俸に加え、税金が一切かからない在勤手当が月に50万~80万円も出ます。そうしたおいしいポストを与えるかわりに、財務省に在外手当など予算で便宜をはかってもらう霞が関の悪しき慣習だからクビにできない」…… 
■「月額100万円以上の本俸」の上に「無税の在勤手当が月に50万~80万円」とは驚くべき好待遇ですが、それに見合うだけの外交を展開してくれているのなら誰も文句は言わないのでしょうが……。


大使は国家の全権代表として赴任し、相手国政府との交渉や邦人保護に責任を負う。そのため米国などでは、議会の公聴会で適格性が厳しく審査され、議会の承認を得なければ任命されない。だが、日本では外交官の訓練も受けず、資質もない官僚が霞が関の天下り人事の一環でトコロテン式に任命される。
大使の給料は最高月額約120万円にボーナスが加わるうえ、天木氏の指摘のように在勤手当がつき、他省からは、「大使を2か国やれば田園調布に家が建つ」とうらやましがられる風潮さえある。田村大使のようなOB官僚は、ざっと8000万円とされる次官時代の退職金に加えて、大使を3年やれば最低でも500万円の退職金が出る。そのうえ、赴任地では日本の恥をさらし、国家に外交的損失を与えるとは言語道断だ。…… 

■ロクな仕事をしない外務省を廃止して東日本大震災の復興費用に回したらどうか?とも思ってしまいますが、諸悪の根源の天下り構造に在外公館も組み込まれているのなら、この「トコロテン式」任命システムは難攻不落の永久陣地なのでしょうなあ。


……クロアチア政府の見解を問うと、「事実関係を把握していないので対応はお答えできない」(同国外務省)と回答した。日本の外務省と田村氏の古巣の財務省はこの外交問題にどう始末をつけるのか。「本件の事実関係についてはコメントできない」(外務省報道課)
「現在は財務省の職を離れているので事実を確認する立場にない」(財務省)
本誌は田村大使を直撃したが、そのやりとりはこうだ。
――大使のセクハラが問題になっている。
「はァ、まったく事実じゃありません」
――今後も大使の仕事を続けるのか。
「(目を丸くして、一瞬口ごもり)いえいえ、もう全然、だいいち、まったく事実じゃありませんから……」つとめて平静を保つようにそう語って公用車に乗り込んだ。
だが、本誌はその後、田村大使が大使館員たちに「『週刊ポスト』の取材に気をつけるように」と指示を出したことを掴んでいる。事実でないならば、何に「気をつけろ」というのか――。
週刊ポスト2011年12月16日号 

■身請け人の外務省はノーコメントで、古巣の財務省は無関係だと言い張る。それならこの不始末の責任は誰が取るのでしょうなあ?!天下りの中でも最も美味しい「渡り」で退職金を行く先々から掠め取り、その上に非課税の在外手当てまで上積みされてこの大使様は一体、どんな大仕事をしていたのかと思ったら……。『週刊ポスト』が抉り出した天下り・渡り大使のセクハラ事件は何とも情けないものでありました。


……バルカン半島の小国・クロアチアは、古くからの親日国として知られる。日本大使館は首都ザグレブの中心地にある。4階建てルネッサンス様式の歴史ある建物だ。東日本大震災の直後、クロアチアの官公庁が集まる日本大使館周辺では政権交代を求める5000人規模のデモが行なわれていた。そのデモ隊が大使館の前を通りかかった時である。彼らは一斉に足を止め、手に持っていたろうそくに灯をともし、震災で亡くなった日本人のために黙祷を捧げた。
11月末の大使館終業直後、その玄関前で、田村義雄・駐クロアチア大使(64)は本誌直撃に顔をこわばらせた――。
田村氏の経歴は大使の中では異色といっていい。東大法学部出身で、1971年に大蔵省に入省。霞が関中枢のエリートコースを歩み、財務省関税局長まで上りつめる。それから環境省に移り、官房長、事務次官を歴任し、2008年に退官した後、2009年から現職に就いた。つまり、外務省のプロパー官僚ではない。日本の特命全権大使の中でも2人しかいない事務次官経験者という大物だ。その人物に現地採用したクロアチア人女性へのセクハラ疑惑が発覚した。…… 

■大蔵省内での事務次官レースには参加せず、ずっと格下の環境省で次官になって美味しい在外勤務になったわけですなあ。でも、大蔵省で関税の仕事をして環境省に移った人物に複雑怪奇な国際社会の情報収集や様々な工作など出来るのでしょうか?クロアチアからの密輸事件などは聞いたことはないし、環境問題よりも経済や産業などの問題が深刻な国だと思われますし、これは野田ドジョウ首相の得意とする「適材適所の人事」ではなかったのではないでしょか?日本の在外公館が官僚専用の老人福祉施設になっているのだとしたら、日本政府にに外交能力など期待できそうもありませんなあ。


実は外務省はその事実を把握しながら、ひた隠しにしているという情報を本誌は掴んだ。「大使のセクハラ」は大使館内で問題化し、外務省は現地に査察官を派遣して調査を行なっている。その報告書は佐々江賢一郎・外務省事務次官や木寺昌人・官房長らに提出されたといい、外務省局長クラスにも回覧されている。外務省幹部の一人がこう明かした。
「クロアチアは決して豊かな国とはいえないが、国民は東日本大震災で1億円もの義援金を募って被災地に送ってくれた。田村大使はそのお礼をしなければならない立場だ。だが、不行跡が相手国の政府にも伝わっており、いい印象は持たれていないと聞いている」……
被害を受けたのは昨春から大使館の事務職員として勤務する20代のクロアチア人女性のクララさん(仮名)。170センチ台半ばという長身で髪が長く、現地職員の中でもひときわ目を引く美人だ。
「大使は美人の若い子が好きなようで、採用する時から、クララさんに目をつけていたようだ。大使館勤務の職に応募してきた若い娘の写真を机に並べて、ニヤニヤしながら眺めて選んだと聞いている」大使館関係者はとんでもないというように眉をひそめて証言を続けた……。
大使の「行為」が始まったのはクララさんが勤務を始めて3日目からだった。田村大使は視察に行くのに現地人の秘書ではなく、わざわざ新人の彼女を指名して同行させ、公用車のレクサスの後部座席に並んで座らせた。そして視察の途中で彼女を抱き寄せ、強引にキスをした。
セクハラ行為はその後、次第にエスカレートしていく。車内でクララさんの足を撫で回したり、抱きついて身体を触ったりするようになったという。非常に悪質なセクハラ行為である。
だが、彼女は半年間、大使のセクハラに対して泣き寝入りを続けるしかなかった。大使館の職を辞めるわけにはいかない家庭の事情を抱えていたからだ。父親が失業中であり、兄弟を含む家族の生活がかかっていたのだという。
車内には運転手もいる。大使の強引なキスを目撃し、すぐに職員の間にウワサが広がった。彼女は現地職員たちに打ち明けたという。
「こんなことが近所に知られれば、いまの家にも住めなくなる」
我慢すべきじゃないという同僚たちに、彼女はそうクビを振った。クロアチアでは居住地域の連帯意識が強い。職を失うことが怖いだけでなく、セクハラ行為をされたことで、自分の家族の評判も落とすことになると心配したのだ。……
週刊ポスト2011年12月16日号 

■確かにクロアチアは小国でしょうが、バルカン半島の付け根に位置して旧東欧諸国やギリシアの情報を掻き集めるのには絶好の場所ではないでしょうか?アドリア海の対岸はイタリアでもありますし、EU経済危機の深層情報を集めて分析する仕事もあったのでは?貧困家庭の小娘を玩具にしている暇があったのが不思議であります。かつて、小国エストニアを舞台にして抜群の情報活動を展開した杉原千畝さんがいたことが懐かしい!まだまだ日本には税金が余っているようでありますなあ。

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