犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

堤防を築いても洪水氾濫は起きる

2019年10月20日 | 治水
 台風19号のため破堤による洪水氾濫が全国各地で発生した。

 河水の浸透による決壊に強い堤防、越流しても簡単に壊れない堤防など堤防強化の対策が取りざたされている。

 ところで、堤防強化といっても、そもそも土堤原則であり、堤防は土でできているのだから、水で流され壊れるのはやむを得ない。

 そのうえに、ハード対応には整備の限界があるのに対して、自然は現象の限界がないだろうから、堤防が出来たからと安心できない。

 古来、河道近くで生活する日本人の知恵として、霞堤方式を採用してきた。河道の堤防は連続しているのではなく、ところどころ、切れ間があった。
 増水すると、切れ間から本流の水が徐々に堤防の内側に水が流れ込み、本流の増水が緩和されるようになっていた。堤防の内側に流れ込んだ水は、一時的に遊水して本流が減水するとともに元にもどるようになっていた。あらかじめ、氾濫するところを設定していたわけである。

 ところが、現代社会は、みな平等が原則だから、氾濫させる場所をあらかじめ設定することが無理で、連続堤防で流域全域を同じように堤防で囲んで洪水は堤防の外に閉じこめるということにならざるをえない。

 氾濫をゆるさず、人為的に延々と連続堤防を築けば築くほど、堤防内に収めれば収めようとするほど、河道に流水が集中し、潜在的に洪水氾濫の可能性が高まる。

 そして、自然現象は想定内に収まるわけはないし、堤防も負荷がかかれば容易に壊れる。連続している堤防のどこかの弱みから破堤して氾濫する。氾濫したところが、遊水池となる。
その結果、破堤地点の下流の堤防は決壊を免れることになるが、それは霞堤方式と同じ結果になったともいえる。
霞堤方式は、氾濫するところがあらかじめ設定されているが、連続堤防方式は、氾濫するところがわからないという違いである。

 毎年、洪水氾濫に悩まされるのは、たまらないので堤防は不可欠で連続堤防にならざるをえないが、数十年に一度は、洪水氾濫がどこかで起きると想定するのが自然な考えである。
 洪水氾濫のハザードマップが整備されているので、これで判断することになる。あらかじめ予測できるので避難すれば、命までなくならない。
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