私のなべ四器(規矩準縄)

今、自分の周りで起きていること。ご近所のトマソンもそんなに、気にしてない。深めにかぶった帽子で、年内不定休営業中。

いるか煮

2010-02-02 14:47:26 | ご飯ですね
近所の魚屋の大女将に、「いるか煮」はいつ作るのかと尋ねて見た。
「こないだ(先日)、作ったじゃん」と言われ、しまったと思いながら猫なで声で、また煮て頂戴とお願いした。そこに若大将から明日(1/30)煮て欲しいとリクエストもあり、大女将はホンワカした感じで承諾した。

「いるか煮」は清水の食文化なんだから、作り方から見せてほしいと無理を言って、作り方を教えてもらう事になった。小生の両親が清水人じゃないので、興味が湧いてくる。

いるかを食する文化は母の実家(山形)でもあり、野菜の煮物などに黒い皮の付いた脂身が入っていて、出汁として使われていた。そんな煮物を子供の頃食べた事が有った。いるかを食べる事には特に違和感も無く食べられると思うのだが、作り方は全く分からない。最近は近所の生協でも生のいるかが売られていて、需要はある様だ。

今回使用する「いるか」は「つばめいるか」で肉が柔らかく食べ易いそうだ。通好みとしては「まいるか」で煮た方が味が深いらしい。ただ、肉が硬くなるのがやや難点らしいが、味は良いらしい。残念ながら、そこまで「いるか煮」に詳しくないので今回の「いるか煮」の味を覚えておこうと思う。

さて、約束の時間に魚屋に行ってみると、大女将が支度をして待っていてくれた。「レシピなんかないから、みんな適当だから」と大女将の舌だけが頼りの料理が始まる。
美味しい物は、大抵こんな感じで有る事は知っている。教科書の様なレシピ通りに作っても、同じものは出来ないのだ。(笑)

材料 つばめいるかの肉…バット1杯
   あふら身(皮の所)…肉の三分の一程度
   醤油      …適当(見た感じカップ2杯)
   中ザラ糖    …お玉で3杯
   きざみ生姜   …一握り
   人参      …一本
   さらした牛蒡  …適宜





沸騰したお湯の中にいるかの身を入れる。(下ゆで)どのくらい下ゆでをするのか聞くと「ほんのちょっとだよ。臭味を取るんだけど、やり過ぎるとつまんないし」と言う。「つまんない」って旨味が無くなるって事でしょうか。なんだか面白くなってきた。生粋の清水弁に触れた様な気がして、嬉しくなってくる。

下ゆでは一分ぐらいで火から降ろし水洗いをする。大女将も「こんなに沢山一度に煮た事が無いので、適当」としきりに言う。湯気と一緒にいるかの匂いが立つ。独特の匂いが広がる。台所で煮ていたのだけれど、茹で汁は店の流しに流す。この匂いが、一般人には受け入れ難いのかもしれない。



煮る前のいるかの身は意外に大きいのだが、煮込むうちに小さくなるので、大ぶりに切って丁度いいのである。笊に上げ水切りをする。この時まだに肉に赤みが残っていてる。
手で肉の状態を確かめながら、「今日は軟かく煮上がると思うよ」と大女将もちょっと嬉しそうに言う。



醤油と中ザラ糖(お玉2杯)を入れ煮溶かす。
酒も適量入れる。見ているとお玉一杯くらい入ったと思う。もっと入ったかなあ?
醤油の量が少ない様に思えるのだが、炊いている内に醤油が上がってくるので丁度良くなる。いるかから水分が出るらしい。



中ざら糖が溶けたらいるかを入れる。
二分ほど強火で煮る。



天地返しをして、人参とさらした牛蒡を入れる。



約5分後味見をする。甘味が足りなかった様で、中ざら糖をお玉一杯追加する。
更に煮込むと煮汁が少なくなってくる。天地返しを牛蒡が柔らかくなったことを確認する。




煮詰まってきたら天地返しをして味噌を入れる。この味噌は嫁さんの実家製で田舎味噌だ。お玉に半分から一杯の程度溶かし入れる。蓋をしながら味が入るのを待つ。

「仕上げに葱をシューシューと入れるともっと美味しくなるよ」と大女将が言うのだが、近所の八百屋にネギが無く今日は入れられない。「シューシュー」の意味が全く分からないけれど、ぶつ切りの葱を入れればいいのかなあと思った。刻んだネギなら「パラパラ」と言う気がしたからだ。

出来上がったけれど、味が沁みるまで少し置いておいた方がいいと言うので、夕方出直す事にしてた。
思ったよりも簡単に出来てちょっとびっくり。肉と言っても牛肉ほど硬くはないのだった。



仕事をしていると電話が鳴り、魚屋の前を取りかかった家人が「いるか」を買って帰ろうかと言うのだった。自分的には買い占めたい位だったので、夕方行って、まだ沢山あったら5人前くらい買っちゃおうと思っていた。もし、人気商品で売れていたら遠慮して二人前位にしようと思っていたのだが、電話では店の様子が分からない。

帰宅した家人に様子を聞くと、常連さん風の婦人が、「あら、いるかが有るなら頂戴」と言ったらしい。まだ、店先に並んで居なかったのだが、その匂いで清水っ子は分かるらしい。(家人は分からない)

大女将に蒟蒻は入れないのかと聞いたところ、美味しい所を蒟蒻が吸っちゃうから入れないよと言う。入れても良いかも知れないけれど内は入れないそうだ。

食感は豚レバーの様な感じなんだけど柔らかい。甘辛く煮ているので臭味は消えているがいるかの味も物足りなく思う。脂身の方を食べる。「これこれ」と言えるほどいるかの味が口に広がる。この匂いが駄目な人は食べられない。清水っ子に育てたい愚息にも食べさせる。父親に気を使って、小さく切ったいるかを食べた。

いるかを食べたからと言って清水っ子になれるとは思わないけれど、いるかを食べなければ絶対に成れない様な気がする。いるかのたれも食べたけれど、食べ慣れなければ美味しい物には成りえない。
また、いるか煮が店頭に並んだら買って来たい冬の料理だ。

金田食堂で食べた「いるか煮」に蒟蒻がはいていた様な気がしたのだけど、思い出せなくなったので、また食べに行ってみたい。今度は、材料も観察できるかもしれない。
これからもいるか煮が店頭から無くならない事を願う。
コメント (9)
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