夫は私の財産目当てだった?

2006年10月12日 02時28分41秒 | Weblog
 70代の主婦。結婚61年目を迎えます。3人の子どもたちはやさしく、友人たちもいい人で、夫婦共々健康にも恵まれています。感謝しながら暮らしているのですが、夫のことですっかり気落ちしています。

 夫は80代の立派な人で、文句を言っては申し訳ないと思います。しかし、今になってよく考えると、夫は私の家の財力を目当てに、美人でもない私の婿養子に来たのではないかと思うのです。私は夫婦になったのだからと、両親に立ち向かっても、夫に尽くしてきたつもりです。でも夫は、自分の身内ばかりを大事にし、私をかばってくれることはありませんでした。

 私がため息まじりに、これまでの不満めいたことをつぶやくと、夫は「何もそんなに一生懸命やることはなかったじゃないか」と言いました。私の今までしたことは何だったんでしょうか。むなしい気持ちになるこの私を救ってくださいませ。(茨城・T子)



 結婚61年目。3人のお子さんをきちんと育てられ、ご夫婦共々健康に過ごされている。でも、あなたは、人生を振り返り「夫は家の財力目当てで婿養子に入ったにすぎない」との思いに駆られ、むなしさを覚えているのですね。

 そのむなしさは、夫が「キミのおかげだ、ありがとう」と言ってくれさえしたら、消えてしまうでしょうに。

 でも、ちょっと考えを変えてみてはどうでしょう。

 実は、最近、私も気がついたのですが、自分は「親のため、子どものためにこんなに頑張った」と思っていたけれど、私は私の生き方を貫こうとしただけ。そして、それができた自分は幸福だった、と。

 あなたもあなたの生き方を美しくまっとうされたからこそ、今の平穏を得たのではないでしょうか。

 夫とは、過去の愚痴や恨みではなく、楽しかったこと、幸福だったことを語りあってはいかがでしょう。

 晩年になって、ああ、そうだったのか、とはじめて知る夫婦の気づきもきっとあるはず。私は一人なので、うらやましいです。

 (久田 恵・作家)

(2006年10月1日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/kinsen/20061001sy51.htm