
最近あまり本屋さんに行かないので面白いであろう本を見逃していることが多い。図書館で借りた古い雑誌をみていたら、この本は真っ先に読んだだろうと思う本がありさっそく借りてみた。
私熱転がって本を読んだり音楽を聴くこと一番で、登山とか冒険とかには程遠い生活をおくっているけれど、遭難だったり、難破だったりのドキュメントが大好きです。
2010年に集英社から出版された角幡 唯介という人のかいた「空白の五マイル」という本はまさにそれだろうと思うから知らなかったことをおどろいた。
角幡 唯介氏は早稲田大学探検部だから、記事にしているマイク・ノックの義弟 高野 秀行氏の後輩になるのです。高野氏の冒険譚はだいすきだから同じようならと読みだした。
世界最大の規模を誇るチベットのツアンポー渓谷、1998年に至っても伝説的な未探検地「空白の五マイル」があった。氏の2002年と2009年の2度にわたる挑戦をこの五マイルへの歴史的な挑戦を合わせて綴った話は、死が幾度も横切った話で、二度目の挑戦などは生きていることが不思議に思うほどだ。
だから高野氏の話よりかはもう少しシリアスでありながら、意外と淡々とした行動の表現になっている。
選択ひとつ間違えば、(たとえばつかむ草であったり、つく足の位置)すぐそこに死があったなどという状況に置かれていない、いやとても置けないとつくづく思う作品でした。
それでは引用を、お気に入りの部分というよりか、冒険家にならなくて本当に良かったと思う一説です。
「川原を上流に向かって歩くと硫黄のにおいが漂ってきた。ツアンポー川は左に屈曲し、その屈曲部分の内側の広い砂地に温泉が湧いていた。お湯の中に手を入れ、湯加減を確かめてみると、ちょうどいい温度だった。そこにテントを張り、温泉に入ろうと衣服を砂地の上に脱ぎ捨てった。その時、私は自分の体に不気味な異変が生じていることに気がついた。手の指先から足のつま先に至るまで、全身が赤いぶつぶつで覆われていたのだ。手のひらで触れてみると、肌がまるで爬虫類のうろこのようにぼこぼこしていた。数えきれないダニが群がっていたらしい。おそらく前日、滑落して外でビバークした時にやられたのだろう。その後、日が経つにつれ、ダニの咬傷はどんどん増え、そのうち表面からすき間がなくなってしまうくらい、私の体はかゆいぶつぶつにおおわれた。」