JAZZ最中

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鍵盤上の模写と創造 think bach / edouard felet

2012-09-25 21:54:31 | 聞いてますCDおすすめ


ベースのジャン=フィリップ・ヴィレのトリオは研ぎ澄まされたようなシャープなラインを創り出すけれど、そこでピアノを弾いているのが、このアドアール・フェルレで、現役JAZZピアニスト100人にも選んでいる人。
そのフェルレが、「think bach」というタイトルでピアノ・ソロ・アルバムを澤野工房からリリースした。
「ジャズ・セバスッチアン・バッハ」「プレイ・バッハ」「ロココ・ジャズ」などバッハを素材にしてきたものは数多くあるけれど、タイトル通りのthink、全曲フェルレのコンポジションであることで画期的なジャズとバッハになった。

1曲目、ピアノのどの部分か弦を押さえてか叩く音から始まり驚かされ、バッハの正調メロディからジャズのインプロ・ラインに変化していく、ファルレとバッハがいる世界。
2曲目は静かに始まる幽玄な空間という感じ。このアルバム、曲名がフランス語なのでわからない。
この“Dictama”というのはゆりににた植物の名前だろうか。ぜひ日本で解る名前で行きたい、というのも曲調と曲名は関係はきく者にとっても参考になる。
3曲目“ジャンの継承”という題だとしたら大した題名、セバスチアン・バッハがピアノの横に立ってファルレに何か指示を与えているのだろうか。自由な発想でバッハの姿が伝わってくるのです。
4曲目、バッハの時代にはないハーモニーとリズムで始まって、やがて左手のアルペジオはバッハのライン、右手が別な世界、それが最後にはバッハのラインに、これは凄い演奏だと思う。
5曲目、このアルバムを聴いていると、ファルレがピアノに精進し始めたころに、無心でバッハの平均律クラヴィア集などを弾いていた姿が思い浮かぶ。山のようにバッハを弾いて後に、インプロヴァイザーとなった彼が、改めてバッハと対峙しているのだと思う。
7曲目バッハのメロディから変奏に入る。このアルバムを聴いた最初、バッハのフレーズを探るように聞いてしまったけれど、それはあまりよくない。ここはあくまでファルレ、正統なバッハはクラシックの人に任せればいい。
そうすると8曲目、見事なファルレのバッハが流れ出す。この勢い、題名は“Lapsus”筆の走ったといか、バッハを思い描いて走ってしまったという演奏です。
最後は軽快にバッハよりか明るく初めて、一番最後はバッハらしくおわります。

曲名はほかにも“境界”とか“斜線”とか“逆襲”などとついていて、ファルレらしい形而上学的感覚だけれども、ジャケの中に大きく書いてある英語“Constant tension between replication and invention"(英語もよくわからないから、間違ってるかもしれないけれど)という句、“模写と創作の間の、絶え間ない緊張”という言葉が一番このアルバムを表しているように思います。

ファルレとバッハ音楽との関係、ジャン=フィリップ・ヴィレのアルバム「LE TEMPS QU'IL FAUT」のところでも思い出したけれど、「ロートレアモンの歌」みたいに言うと、「鍵盤上の模写と創造の絶え間ない緊張」が美しいのです。


think bach / edouard felet

Edouard Felet piano compositions
2012年3月 録音

1. Analecta
2. Dictame
3. A La Suite De Jean
4. Verso
5. Lisiere
6. Souffle Magnetique
7. Que Ma Tristesse Demeure
8. Lapsus
9. Diagonale
10. Replique
コメント (2)
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