ルーツな日記

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フジ予習:ジョン・バトラー・トリオ

2010-05-11 14:33:10 | フジロック
THE JOHN BUTLER TRIO / APRIL UPRISING

さて、ゴールデン・ウィークも終わったことですし、今年も張り切ってまいりますよ!フジロック予習特集~!栄えある 第1回目はジョン・バトラー・トリオです!

07年にリリースされた「GRAND NATIONAL」は傑作でした。ジョン・バトラーの操る多彩な弦楽器による音像と、それに絡み付くようにグルーヴするリズム。カントリー、ブルース、ソウル、レゲエ、ヒップ・ホップ、あらゆるジャンルを飲み込みながら緻密かつ奔放に編み上げられた楽曲群。オーガニックな質感と土の香り、それらをジャム・バンド的なスリルを伴ってダイナミックに駆け抜ける。ジョンの暖かい歌心とプログレッシヴな感覚のバランスも見事でした。私はこのアルバムでジョン・バトラーを好きになりました。

そして今年の3月に発売されたばかりの最新作「APRIL UPRISING」。これが予想外にポップで驚きました。前作「GRAND NATIONAL」のルーツ色やスピリチュアルな広がりをもっと深化させたような作品になるのでは?と思っていただけに。もちろんポップと言っても、音楽性自体はこれまでのジョン・バトラー・トリオを裏切るものではありません。ジョン・バトラーは相変わらず11弦ギターを中心に、ラップ・スティールやバンジョー、マンドリンなどを取っ替え引っ替え弾いてますし、彼ら独特のルーツ&ヒップな感覚やフォーキーな高揚感で満たされています。ただ初めはどうしても「One Way Road」、「C'Mon Now」、「Don't Wanna See Your Face」などの陽性で楽しい曲や、エレキ・ギターがリードする「Close To You」のようなロッキッシュな曲が耳に残ります。でも何度も繰り替えし聴いてるうちにアルバムの全体像が見えてきます。

実は今作、ジョン・バトラー以外のメンバーが新しくなっているということが、物理的以上の作用をもたらしたのかもしれません。ドラムスにニッキー・ボンバ(ジョンの義兄で「SUNRISE OVER SEA」でも叩いてました)、そしてベースにはバイロン・ルイターズ(もうすぐグリーンルームで来日するザ・レイ・マン・スリーのベーシスト)、という新生トリオです。

そんなジョン・バトラーにとって心機一転の作品となった今作、その1曲目は「Revolution」。革命です。聴く者の深層心理にジワジワと訴えかけてくるような力強さを感じる曲。ジョン・バトラーの意図する「革命」の意味は、私ごときには量り知れないものがありますが、ただこの曲から始まり、「One Way Road」、「C'Mon Now」、と続く展開には、その躍動感溢れるリズムや、抜群の開放感から、何か新しいものに立ち向かう、フレッシュな勇気を与えられたような気分になります。そんな新鮮な気分とメンバーを一新したトリオの境遇が重なります。

このアルバム発売直前に、ジョン・バトラー・トリオはプロモ来日し、代官山UNITにてショーケース・ライヴを行いました。幸運にも私はそのライヴを観ることが出来たのですが、それはバンドの演奏が観客の心を喚起させ、会場全体が一体となって幸福感を味わうような素晴らしいライヴでした。一つ一つの小さな喚起が大きなエネルギーを生むような。そしてこのアルバム「APRIL UPRISING」にもまさにそんな力を感じます。

大地を感じさせるニッキー・ボンバのドラムスと、ジョン・バトラーのバンジョーがリードする「Ragged Mile」。ストリングスが美しい「Fool For You」。ジョンの12弦ギターの広がりが秀逸な「Mystery Man」。これぞジョン・バトラーなレゲエ&ラップ曲「Gonna Be A Long Time」。ニッキー・ボンバがアコーディオンやスティール・パンでオーガニックな土っぽさを演出する「Johnny's Gone」。エモーショナル且つオルタナティヴな力強さを持つ「I'd Do Anything」や「To Look Like You」など、生命力溢れる曲が並びます。

そしてファンキー・ラップな「Don't Wanna See Your Face」に、ドライヴ感抜群の「Close To You」、ラップ・スティールによるパーカシッヴなバッキングが冴え渡る「One Way Road」。一見ポップなこれらの曲にこそ、現在のジョン・バトラー・トリオが持つ革命的なエネルギーが詰まっているのです。

先のショーケース・ライヴではこれらの新曲も沢山披露してくれました。過去の名曲も、新しいポップな曲も、それぞれが違和感なく極上のグルーヴとヴァイヴで奏でられていました。そして何よりトリオの一体感から来る高揚感が堪らないのです。しかもフジでは新作からの曲がさらなる盛り上がりを見せることは必定。アルバムで聴くより絶対良いです! もちろん、ジョンの圧倒的な弦裁きにも注目ですね!


果たしてフジではどのステージに登場するのか? 夜のヘヴンが絶対似合うと思うんですけど、ジョン・フォガティと被りそうで怖い…。



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 10.03.07 ジョン・バトラー・トリオ@代官山UNIT
 07.08.01 フジ・ベスト・アクト第5位