ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

映画「ソウル・パワー」@爆音映画祭

2010-05-28 20:54:50 | ソウル、ファンク
今日は吉祥寺のバウスシアターに映画「ソウル・パワー」を観に来ています。ジェイムス・ブラウンやBBキングが出ているあれです。一般公開前なのですが、明日から始まる「爆音映画祭」の前夜祭として今夜先行上映されるそうです。楽しみです!




帰宅後追記:(多少、映画のネタバレになりますのでご注意ください。)

いや~、映画でこんなに興奮したのは初めてかも知れません。ジェイムス・ブラウンが格好良過ぎます! さらにJB’Sの演奏がファンキー過ぎるんです! 参りました。もちろんそれだけではありません。BBキングは恐ろしく濃密ですし、サルサの女王セリア・クルースも凄い。そして彼女のバックを付けるファニア・オールスターズがまたディープ。スピナーズも格好良いですし、ビル・ウィザースは深い。クルセイダーズも相当ヤバいし、ダニー“ビッグ・ブラック”レイのコンガも強烈。さらにミリアム・マケバをはじめとするアフリカ勢も素晴らしい!

これは「ザイール’74」と題された歴史的なコンサートを収めたドキュメンタリー映画です。このコンサートは1974年、ザイールにてモハメド・アリとジョージ・フォアマンの対戦前に行われたそうです。人種差別やブラック・パワー、そしてアフロ・アメリカンの故郷としてのアフリカ。そういった背景がこのコンサートをとんでもないエネルギーと高揚感で包み込みます。ドキュメンタリーなので、演奏シーンが少なめなのが少々残念ですが、しかしその演奏シーンはエキサイティングこの上ないです。この日は爆音映画祭の前夜祭という特別なムードだったこともあるかもしれませんが、終わった後に観客から拍手と歓声が沸き起こりましたから。


さて、爆音映画祭です。今年で3回目だそうですが、私ははじめて足を運びました。映画館に入るとスクリーンの両側に、なるほど映画館には不釣り合いなスピーカーが積み上げられています。しかもスクリーンの裏側にもスピーカーが設置されているとか。映画が始まるやいなや、その音の大きさというか低音の厚みに嬉しくなりましたね。座っていても腰にきまくりました。正直、立ち上がって踊りながら観たいぐらいでしたよ。爆音というと、パンク/オルタナ的なノイジーに割れんばかりの音量を想像しがちですが、そういう爆音ではなく、音楽映画を最高の臨場感で味わうことの出来る爆音です。とくにリズム! 恐ろしい程に肉感的に迫ってきます。ジェイム・ブラウン&JB‘Sは本当に凄かった。もちろんJBに限った話ではないですよ。演奏シーンの間、私はその音の素晴らしさに終始ニヤケ顔になってましたから。

もちろん映画それぞれについて音の調整をしているらしいので、爆音にも色々あるのかもしれませんけどね。ただ残念なことにプログラムを見ると、分かりやすい音楽映画はほとんどラインナップされてないんですよね~。ザ・バンドの「ラスト・ワルツ」ぐらいですかね。ビデオで何度も見た映画ですけど、この爆音で観てみたいという気にもなります。どうしよう…。あ、「爆裂都市 BURST CITY」も気になるな。


爆音映画祭 → http://www.bakuon-bb.net/2010/program.php

コーリー・ハリス

2010-05-28 15:53:25 | ブルース
もう明日に迫ったジャパン・ブルース&ソウル・カーニバル! どうしても初来日の帝王ソロモン・バークに話題が集中してしまいますが、せっかくなのでコーリー・ハリスにも注目してみました。

コロラド州デンバー出身。1969年生まれだそうなので、現在40歳を超えた辺りですね。アルバム・デビューは95年の「BETWEEN MIDNIGHT AND DAY」。ミシシッピ・スタイルのカントリー・ブルースを弾き語りで歌う朴訥なブルース・マンといった印象でした。ですがその後はまるでルーツ・ミュージックの探求者、もしくはルーツの旅人? ルーツ流浪人? いやルーツ迷い人かも?って感じにルーツの深い森をさまよっています。そんな彼の音楽遍歴の一部をご紹介。



COREY HARRIS / BETWEEN MIDNIGHT AND DAY
95年のデビュー作。 チャーリー・パットン、フレッド・マクダウェル、スリーピー・ジョン・エスティス、マディー・ウォーターズ、ブラインド・ボーイ・フラーなんかのレパートリーをカヴァーした素朴な作品。でもその素朴さがかえって新鮮だった記憶があります。巧みなフィンガリングとスライド捌き、そして黒く深い歌声。この頃まだ20代半ばですからね~。この作品の印象があまりにも強く、コーリー・ハリスと言えばミシシッピ・スタイルの弾き語り、というイメージがいまだにあるような気もします。



COREY HARRIS / FISH AIN'T BITIN'
ニューオーリンズ録音による97年の2nd作。特筆すべきはチューバ・ファッツを含むホーン隊が数曲で参加していること。と言ってもニューオーリンズ色はほとんど感じられず、そのひなびた雰囲気はジャグ・バンドな雰囲気に近いです。コーリーの弾き語り曲も前作より一層デルタな迫力と切れ味を増し、その一方で流麗なラグタイム調も聴かせるなど、幅広い弦裁きを楽しめます。スライドバーがネックに当たるコロコロした音が気持ち良いんですよね~。この97年にジャパン・ブルース・カーニバルで来日。私も観に行きましたが、あまりにも素朴な弾き語りがかえって異彩を放っていた記憶があります。



COREY HARRIS & HENRY BUTLER / VU-DU MENZ
いよいよ本格的にニューオーリンズ音楽と邂逅した2000年作。かの地が誇る盲目の天才ピアニスト、ヘンリー・バトラーとの共演作です。 数曲にラブボードが入りますが基本的には二人だけのデュオで、楽曲も二人の共作が大半を占めるという、まさに両者がっぷり四つの好盤。ヘンリーの自由奔放にシンコペーションしまくるピアノに、コーリーのデルタなスライドが絡む、これはなかなかスリリング。ブルースあり、ラグ・タイムあり、もちろんニューオーリンズありで、南部ルーツの懐の深さを堪能出来ます。こういう共演って、ありそうでないんですよね~。最後に収録された二人のアカペラによるトラッド曲も良い感じです。



COREY HARRIS / MISSISSIPPI TO MALI
03年にスコセッシの映画「FEEL LIKE GOING HOME」に出演し、ブルースの原点を求めて西アフリカのマリを旅した流れを汲んだアルバム。もちろんアフリカ色が濃厚。ゲストに映画にも出演していたアリ・ファルカ・トゥーレも参加していて、かなり濃密。しかも単純なデルタ+アフリカではなく、同じミシシッピでもデルタとは違う北部ヒル・カントリーの伝承音楽であり、アフリカン・ルーツを色濃く残したファイフ&ドラムを取り入れたり、ハープにボビー・ラッシュ、ドラムスにサム・カーを向かえた南部セッションがあったり、ブルースとアフリカ、米南部とアフリカ、そういった流れを含めての音楽という広い大地を感じさせてくれるアルバム。最後を締める「Dark Was The Night, Cold Was The Ground」は名演ですね。



COREY HARRIS / ZION CROSSROADS
07年作。アフリカの次はレゲエです。完全なレゲエです。まあ、レゲエ・ファンの方が聴けばちょっと違うのかもしれませんが、ブルース・ファンが聴けば、これは完全なレゲエでしょう。私はこのアルバムで、コーリー・ハリスが分からなくなりました…。まあ、このとき既に、次は何をやってくるか分からないタイプの人ではありましたけどね。でもまさかレゲエとは思いませんでした。ただ、レゲエできたと分かって聴けば、これがなかなか面白い。レゲエのルーツとしてのアフリカが見えてきますし、単純にレゲエ・シンガーとしてのコーリーの歌心にも痺れるものがあります。



COREY HARRIS / BLU. BLACK
そして09年の最新作。これはレゲエもアフリカもブルースも飲み込んだスピリチュアルなブラック・ソウル。これまでのルーツ・ミュージック探求者な佇まいではなく、ある種の境地を感じさせられます。やはりレゲエ色は強いですが、そういうジャンルや音楽形態を超越した、黒人音楽としての芯を感じます。だからと言ってここが彼の終着地点だとは思いませんが、このタイミングでの来日はやはり嬉しいですね。ぜひ、このアルバムの世界観を表現出来るバンド・セットで来日して欲しいところですが、どうなんでしょう? また一人かもしれませんけど。なにせソロモン・バークが大所帯っぽいですからね~。