国立大劇場 10/15(日)
史上初!『元禄忠臣蔵』全十編通し上演スタート!
作:真山青果
初演:「江戸城の刃傷」「第二の使者」
S11年(1936)1月 東京劇場
「最後の大評定」
S10年(1935)4月 東京劇場
お客の会話がいつもと違うよ。
さっすが『忠臣蔵』!みなさん”通”ですな~
って言っても、中年男性の方々に限るっぽいけど。
数々の映画や大河ドラマ、講談、浪曲、
果ては歌謡浪曲に親しんで来たんだねぇ。
『赤穂浪士』(1964年)の長谷川一夫
「おのおの方」って物真似出来るんだろうな~。
え!私は見てませんヨ。S39年なんてぇぇぇ。
でも『俵星玄蕃』は知っている!
三波春夫亡き後、誰も歌ってくれない~
何だか、宝塚に来たようなワクワク感
今まで”伝統物”で、ドッキンドッキンしたこた~ね~ヨ。
どうしちゃったの~私ってば~!
『江戸城の刃傷』
第一幕 江戸城内松の御廊下
時は元禄十四年三月十四日四ツ半時、
いまの時刻にて午前十一時頃。
所は江戸城本丸のうち松御廊下(一に大廊下とも)という辺。
ドタドタ、ザワザワ、バタバタ、ワイワイ、ガヤガヤっっっ。
奥から聞こえる騒ぎ声は録音っっ!
OH~!歌舞伎にこんなの有り~!?
松の廊下の大事件なんだから
皆が右往左往してるかと思いきや。
それは映画の世界だったのね。
少ない人数で雰囲気作り。
後は「お客さん、イマジネーションでヨロシク!」ってことか。
これこそ舞台だ!よっしゃ~任せとけ~
「何、吉良どのが切られた?」
お~。
騒いでる人の後ろを、両脇抱えられて
そ~っと走り去るのは…吉良上野介~!
でも、顔が見えない~。ミステリアスー。
半廻しとなりて、松の廊下を正面に見る位置に定まる。
浅野内匠頭(梅玉)を後ろから抱きとめているのが、
梶川与惣兵衛(吉三郎)
いだき止められたのは何人か、御無体と存ずるぞ…
(ハラハラと落涙)拙者も五万石の城主、
お場所柄を弁えぬほどの者ではない!
もはや追わぬ。衣服を、直し…侍らしく、御法度を受けたい、
未練は致さぬ、放してくれ…。
ドッタンバッタンしている所へ
訊問担当者・多門伝八郎(歌昇)登場ー!
役儀なれば言葉を憚らぬ。梶川どの、先ず手を放さッせえ。
あ~ヨカッタ。自由にしてあげてちょーだいよ。ホント。
ここから伝八郎の株がグングン上がるヨ。
まず、梶川が”刃傷”という言葉を使うと、
刃傷か、喧嘩か、その見分けを致すための目付役でござる。
ピシッッッ!
それにしても、
梶川証言は、ナマナマしいね。
聞いてると、ドンドン頭の中に”その瞬間”が浮かんでくるー。
思い起こせば、
贈り物(賄賂)の中身に始まり、畳替えの命令!
ケチをつけられた水墨画の衝立!教えられた礼装が違う!
叩かれたり、なじられたり…。
次々に吉良が仕掛ける”いじめ”という罠。
どーにかこーにか掻い潜って、
ラストデイ!今日だけ耐え忍べば…
♪なのに~何故~♪(by若者たち)
松の廊下でっっっ!!!暴れちゃった~!!!
日活:片岡千恵蔵
東映:中村錦之助(萬屋錦之助)
大映:市川雷蔵
東宝:加山雄三
映画で取り揃えましたるは浅野内匠頭役の面々。
夫々、キレ方も違うし、撮り方も違うけど、
ああ、内匠頭よ、哀れ…。
正義の味方伝八郎ー。
吉良が脇差に手を掛けなかったのは、何故かを追求。
ケッ狼狽してたのか!何て恥知らずなの!吉良ったら!
この場にいないのに、観客を敵に回しているゾ!
服装を改めて内匠頭、再び登場。
いたって冷静。
癇癪持ちの一面は影を潜めているのか…
この場においては、もはや何事も…申し上げられませぬ。
ただ残念なのは…、上野介を討ち損じたること、
(ハラハラと落涙)浅疵にござりますれば…。
いや、疵は浅いが老年じゃ。殊に疵所は面体と申し、
養生のほどは…心元なく思われる、のう。(わざと同役の方に話す)
伝八郎~イイヤツだ~!
江戸城内御用部屋
御用部屋とは、老中大老の執務の座敷を言う。
時刻は前場より二刻ほど過ぎ、現時の午後四時頃
目付役4名が迎えたのは、加藤越中守(東蔵)、稲垣対馬守(松江)
(多門に向かいやや鋭き声)浅野内匠頭儀、先刻御場所柄も弁ず、
自分宿意を以って吉良上野介へ刃傷に及び候段不届に付、
田村右京太夫へ御預け、その身は切腹仰せ付けらるるものなり。
一方、吉良へのお咎めはナッシングっっっ!!!
伝八郎は他の目付と囁きあってたんだけど
毅然とした態度で「御最案を願います」
きちんとした審問もなく、即刻切腹とはあまりに御手軽!
吉良が内匠頭の為すままに任せ、
刀に手を掛けなかったことが、いかにも神妙だったと…。
侍たるものには、生まれついて、
脇差心ーと申すものがあるはずでござる。(略)
生きようにも、死のうにも、武士の最後を頼むものは
わが帯する刀より外にはない。
侍として敵の狼藉をうけたる場合、その手は先ず第一に、
わが刀の柄にかかっておるべきはずだ。
侍の世の中が嘆かわしいことになっている
その事実を突きつける言葉だな~。
柳沢美濃守へ申し立てを願い出る伝八郎
厳しく拒否する加藤
何度も懇願する伝八郎の肩が、上下に激しく揺れている…
幕
音楽もなく、ただ言葉と言葉が響くだけ…
内匠頭の長袴が畳とすれる音に
彼の心中を思って、♪私のハートはチクチクしちゃうの~♪
舞台で上演する『忠臣蔵』物。
わたしゃ、こんなのを待っていたのかもっっ
『仮名手本忠臣蔵』みたいに偽名じゃないしさ。
時代考証と人間心理に深く食い込む~
ああ、たまらん
めちゃくちゃ馴染んじゃってるんだけど~。
いやいや、これも、
岩波文庫『元禄忠臣蔵』を読んだおかげかもね。
途中までだけど~(早く読みきれよ)
第二幕 田村右京太夫屋敷大書院
浅野長矩が田村家へ御預けとなり護送せられて同屋敷に到着したのは、
その日の申の刻、今にていえば午後五時近くであった。
田村家は、(略)やや程度を過たる警戒ぶりであったという。
切腹の検使役は、庄田下総守(由次郎)、多門伝八郎ら。
田村右京太夫(彦三郎)が出迎える。
なるほど庭先に涼台のようなものを置き、
雨障子をもって屋根の形を作り、幕を引き廻し、
毛氈を敷きつめたる体は、いかにも家体作りらしく見えまするが、
庭先はやはり庭先、家屋の中とは見受けられませぬ。
武家切腹の作法に、庭前室内の区別あるは、
その身の身分を重んじての事なれば、
作り飾った庭先の切腹よりは、破れたりとも家内の御仕置を、
侍においては眉目と致すかと存ずる。
目の前には見えない、内匠頭が最期を迎える場所。
伝八郎の言葉に、お客の頭はフル回転~!
六つを報せる鐘が響く
田村右京太夫屋敷小書院
片岡源五右衛門(信二郎)が来た。
伝八郎すかさず、
御検使の御許しが出ました。それ、その用意を…。
ただし、無刀無言でござるぞ。
浅野内匠頭長矩、廊下をしずしずと出で来る。
麻上下。長矩は心付かざれど源五右衛門はハッとして平伏す。
吉良の疵は、やはり浅かった事を知った内匠頭。
「老年だから、この先どうなるか判らないよ。」
と、伝八郎&大久保(吉五郎)が口々に…。
”この殿故に命を賭して敵討ちをする赤穂浪士達”
「それって何で?」って、ピンと来ない人もいるかもね。
真山青果が書いた時代は、
『忠臣蔵』って、国民的代表作だったんだよね、きっと。
一昔前までは、いや、二昔かな、
Q:12月と言えば? A:忠臣蔵
Q:討ち入りの日といえば? A:12月14日
即答が当たり前!それくらい身近だった物語。
だって、テレビでやってたもん!
冬は忠臣蔵だよ~。って勢いだったじぇ。
『元禄忠臣蔵』って、”もとネタ”知ってることが前提かも。
体に染み込んでる人達だけが、ザッブ~ン!
思いっきり飛び込めるんだな
庭前を眺めて伝八郎
それ御覧なされ。明日は満月、見事な月ではござらぬか。
伝八郎が扇子で指す方を見る内匠頭
四つの目、相吸わるる如く、凝然として動かず。
検使たちもその光景を見て、暗涙を催す。無言、沈黙。
(略)定めて今日の事を聞かば、不審にも…不審にも存ずるであろうー
声高らかには言えない遺言を残し、
風さそふ、花よりもなほ、我はまた…、春の名残を、如何にとかせん…
桜が散る散る…。
客席からもすすり泣く声、声、声…。
私の瞳もウルルンルン…
思わず声を漏らす源五右衛門。
1度、2度、3度と泣き声がクレッシェンド!!
ア~ンド緞帳が降りるペース配分がドンピシャっっっ!
号泣の声を残して…幕
グエェェェェェェ!これぞ舞台の醍醐味でありましょう!
相乗効果とはこのこと!
演者だけで成り立つ世界ではないのよね。
VIVA!裏方さん~
30分休憩
案の定、若い女性が「退屈」「ほんと」と言ってます~。
台詞長いしね。
そこに、様式美に支えられた流れがあるんだけど
吉右衛門も言ってたよ。
「台詞劇も最初は辛抱です。台詞の中に音楽があります。
そういう風に作品が出来ているんです。」(「映画の夕べ」より)
もう少しガンバッテみよ~
→ つづく
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