これまでのお話はこちら → 江戸城の刃傷
『第二の使者』
第三幕 播州赤穂城内大広間
播州赤穂城内。広間。
城は普通に赤穂城と称すれども、当時にては苅屋城というを正しいとする。
元禄十四年三月十九日の仏暁(明け方)
ウワッッ、暗~い。
ウワッッ、ちょびっとづつ明るくなっていく~。
OH~!歌舞伎にこんなの有り~!?
照明使ってるヨ。嬉しいな~
夜景のままに暗く、庭園も暗くして分明ならず。
幕あきて暫くして次第に明けはなれてゆく光景を
庭園のさまにて見する。
潮田又之丞(吉之助)達は、
必死に絵図の作成や帳簿をチェック中。
でも、なかなか集中できないみたい…
皆、頭の中は”殿様はどうなったの?”でいっぱい。
大野九郎兵衛(芦燕)と奥野将監(東蔵)も
何やら落ち着かない様子。
言い争ってるヨ~。
家来達は門の外にゾクゾクと集結!
ワイノ~ワイノ~騒いでる。
今にも門を打ち破りそうなんだって!
(突如として口を出す。凛然たる声)ならぬと言え。
大石内蔵助(吉右衛門)だ~!!
待ってましたっっっ!
(むッとして)凶変の場合ゆえ、
常の掟が大事なのじゃ。開門はならぬぞ。
第一の使者が来ただけでは、
江戸の様子がさっぱり判らないんだよ。
非常事態宣言だして、レベル4体制取らなくてイイの?
固く火の用心を申し付くるのほか、あとは何事も常々通り、
通行は元よりの事、諸商売も常通りに致させとうござる。
キョエ~!!何を言うとるんじゃ~。
大野ビックリっっっ!
お互いにこの際には、士農工商の隔てを忘れ、
町人も人、侍も人と思し召されて、
人が人のために働くように致したいものでござる。
広い視野だなぁ~。
そこへ、第二の御早使ほどなく到着との知らせ!
内蔵助は、使者の名を聞いて、
おおよその見当がついたらしい…。
キビキビと大野&奥野に指示を出してる。
内蔵助に圧倒されてる老人2人。
ちょこまかと走る姿も可愛らしい~
この頃、庭園全くあかるく、(略)
遠く、かすかに、御早の駕籠の者の掛け声
『ホイホイ』、『ホイホイ』と聞こえ来る。
オオ、ドキドキしてきたぞ~。
父上、父上…お父上様。
思案に耽っている内蔵助に呼びかけるのは
息子の松之丞(種太郎)14歳。
国の一大事に、いてもたってもいられない!
前髪立ちらを雇うほど人に不足はしていないのだ。
断られると、今度は
父上、今が君国大事の場合、
もし御悠長過ぎたる御詮議がありましては…
終生一期の御恥辱となりましょう(泣く)
ヒヤ~、子供にまで心配されちゃって、
よっぽど頼りない人にみえるんだなぁ内蔵助って。
わしは予々、家中の面々から
昼行燈と渾名されていることも承知している。
自分もまた、終生昼行灯と嘲られて、
無用の人としてこの世を送りたかったのじゃ…
(ホッと嘆息して、意味ありげにいう)
うう~む、うう~む、
言葉の裏がまだ飲みこめない松之丞。
なおも食い下がれど…。
怒られちゃったよ~。
種太郎くん、一生懸命にお父上に物申してるんだけど、
台詞が空回りしてる…。
難しい言葉の連続なんだけどね。
泣き台詞になっちゃダメなのですよ…。
余計お客さんに、心が伝わらないのよぉ。残念…
廊下が騒がしいっっ!!
待ちに待った”第二の使者”が到着したんだ!
人々に見守られ、支えられて
年配の原惣右衛門(桂三)、若い大石瀬左衛門(亀寿)
われら、われらの御城に帰った~!
もっと、焦燥と安堵と高揚感と緊張感で、
熱エネルギーをポッポポッポ言わせて、
泡を吹いて来るかと、思ってたのにな…。
早駕籠は、駕籠かき6人が1組で猛ダッシュ!!
5日間揺られて、やっとの思いで辿り着いたんだよ~。
映画だと、駕籠かき達は、箱根駅伝状態!
次にバトンタッチしたら、
バタバタ倒れ込んじゃう。
吉右衛門も映画撮影(「忠臣蔵」東宝1962年)の時に、
駕籠に入って短時間乗るだけでも凄かった~。って
内蔵助に一喝されて、平常心を取り戻す2人。
(略)惣右衛門、殿は定めて御切腹であろう
はい!(ハラハラと泣き)三月十四日、
酉の上刻過ぎ、芝愛宕下、田村屋敷御庭前において…
十四日ー? その日即日御切腹か?(思わず声色を変ずる)
奥方は、髪を下ろして里へ。
乗物の中から、泣き声が漏れ聞こえて…
1度も登場していない奥方様を想って
泣いちゃう~。ウウウ~
勅使饗応は、万端順序のごとく、目出度う御大礼をすまされました。
それは何より…有難いことであった。(落涙)
お仕置き文面を読み、何を思うのか内蔵助。
遺言を聞いて、何を考えているのか内蔵助。
そうして、辞世の句…
風さそふ、花よりもなほ、我はまた…、春の名残を、如何にとかせん。
内蔵助の注意も聞かず、一同泣き崩れる。
私の瞳もウルルンルン~
内蔵助も泣いちゃってるぅぅぅ。
目端の効かない江戸家老達、そんな部下しかいなかった
殿さまが傷わしい。
ポロっと内蔵助言っちゃったよ。
そこへ、
京都留守居役・小野寺十内(歌六)がやって来る。
内蔵助が気になるのは、朝廷の態度…。
帝の御喚起に触れなかっただろうか…。
意外にも、同情的だと言う。
(思わず小野寺の手を握って)十内どの!
内蔵助どの。
十内どの。
内蔵助どのー。
グワ~~ッッッ 泣く~~~
家名の断絶は惜しいことではない。
五万三千石、慨くことではない。
京都不敬の罪に問われれば、浅野内匠頭長矩は勅勘の身、
家中一同、日本国中にかがむところがない…。
救われました、救われました。
そう何度も言う内蔵助。
嗚呼、深いなぁ~。
この上は、もはや、いずくを憚り、いずくを恐るる処もない。
家中一同の所存にまかせ、
殿の御無念を報ずるばかりーいや、
殿の御冥福を祈るばかりー、(略)
家中総寄りあいの上、内蔵助より申し上げたき事あり、
集合の御用意、頼みいります。
赤穂藩の秘密兵器『昼行燈』
何処の、何に、標準をセットしたのでありましょうか。
集合の太鼓なり響く。内蔵助、十内、静かに目礼してー。
幕
殿様御切腹の知らせまでの時間をクローズアップ!
ドキュメンタリー見てるみたいなリアリティー。
これぞ”新歌舞伎”
吉右衛門の内蔵助にドンドン引き込まれて行く~!!
♪もうどうにも止まらない~♪(by山本リンダ)
→ つづく
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来月は、いつも単独で演じられる「お浜御殿」「南部坂雪の別れ」が通しだときっとずっしり来るだろうと思って、楽しみです。
無用の人としてこの世を送りたかったのじゃ…
でも、苦境になれば輝く本質がこれからあきらかに!
新歌舞伎の良さを知りました!サンキュ~播磨屋~!ですね。本当~
藤十郎版の「お浜御殿」を観るのは初めてなので、ワクワクです。あれも、アンサンブルが大切なので、「上方チーム」として気合を見せて欲しいっす!(笑)
「南部坂雪の別れ」は、映画のワンシーンがとても心に残っています。
urasimaru様、まいど!
>自分もまた、終生昼行灯と嘲られて、無用の人としてこの世を送りたかったのじゃ…
東宝映画で、白鸚も、イイ声で言ってました。
お客が、ラストを知っていればこその「謎かけ」言葉ですよね。