アッパレじゃ!

大好物は舞台観劇♪ようござんすか?ようござんすね。”私見”バリバリ入りますっ!ネタばれアリアリ~。

若手花形歌舞伎 本朝廿四孝

2005年11月21日 | 歌舞伎

文楽11月公演『本朝廿四孝』を観る前に、復習しよーっと。

若手花形歌舞伎『本朝廿四孝』
2005年3月の国立劇場は、近松半二、他の合作。
『伊賀越道中双六』『妹背山婦女庭訓』も先月の『野崎村』も半二先生だ。

1766年正月、人形浄瑠璃として大坂竹本座で初演。
5月には、ご近所の中の芝居で歌舞伎上演。
お客はどっち観よっか迷っただろーねー。楽しそうだなー。
時空を越えた現代では、「花形若手歌舞伎」

キーワードは諏訪法性の兜。これは武田信玄家の重宝。
これを長尾謙信に貸し出しちゃったのね。
んでもって、なかなか返却してくれないもんだから、険悪ムードになったらしい。
「まぁーまぁー」って調整したのが殿サマ足利義晴。
ところが、この人が殺されたんだって。
で、武田・長尾両家が疑われたんだと。

共に無罪を主張っ!!。
汚名を晴らす為に、三回忌までに真犯人を探せなかったら
互いの息子の首を差し出してやるっ!

時計の針はドンドン進むのに、事件解明はききとして進まず、
約束と交通ルールは守りましょう。息子の首をあげましょう。
ってところからこの物語は始まる。

『武田信玄館勝頼切腹の場』

信玄の息子勝頼。なんと盲でごぜえます。
傍らで支えているのは、腰元濡衣の片岡孝太郎。
しぇぇ~。若いのに、ホンニ貴方は大人っぽいなぁ。
うん!上々のスタートではありませんか。
勝頼は片岡愛之助。
女殺油地獄』『傾城反魂香』でも、綺麗なハーモニーだったこのコンビ。
ここでもイイ音奏でてくれヨ。

母が、息子の首を喜んであげたいわけないわな。
だから、首斬りに来た侍に、もう少しの猶予を頼むの。
そーしたらそいつ、庭に咲いてる朝顔を手折って
「こいつが萎(しぼ)むまでだー」っつうわけ。
これは男女蔵!中堅所一色のこの公演支えてますよー。

勝頼は情けをかけられるより、武士らしく切腹ッ!
縋りつく濡衣。
「礼は未来で」と、見えない目に涙をためる勝頼。
√ 惨いつれない胴欲と、我が身をとんと、勝頼の
  膝に打ち臥し、泣き沈む 濡衣

√ ト勝頼は刀をぬき、突き立てる。
  ノウ、悲しや御切腹。叫ぶ濡衣。驚く母

√ 手負いは合掌、ぱっしり立て切る生死(しょうじ)の境
勝頼死亡。

エイサッサホイサッサ~。
籠の中から出てきた男は、勝頼にクリソツー。
これこそ待ち望んでいた”身替り”。
されど、遅かりし由良之助~。
事の真相に、おったまげたクリソツ男。
「お呼びでない。こりゃまた失礼~」と逃げようとする所を、
家来がバッサリ斬ろうとする。
しかーし障子越しに、反対にグサッと突かれ、
家来は、はい、それま~で~よ。
誰?誰なの?正義の味方ゼブラーマン(by哀川翔主演!)?

なんとこの家の主人・武田信玄とな!
実は勝頼は、死んだ家来の息子で、
本物の勝頼は今やってきたクリソツ男!名は蓑策。
家来は家を乗っ取ろうとしていたんだ。
しかしこのクーデター計画は筒抜けさぁ。
蓑作が自分の出生を知っていた!信玄だって全てお見通しだっ!
ドンデン返しのドンデン返し~。オリエント急行殺人事件か!

「ちょ、ちょっと待って~」
恋人の勝頼が目の前で死んだ。と思ったら、
そっくりさんが出てきて立ってるんだもん。
瞳ウルウルの濡衣「死…死にますっ」
でも、皆に止められちゃってヨ~、
「謙信に奪われた、諏訪法性の御兜をこの男と一緒に奪還せよ」だとー。
マジかよ~!?ちょっときついんじゃないのー。そのミッション。
どーする!濡衣!

『道行似合の女夫丸(めおとがん)』

濡衣と蓑作、いやホンモノ勝頼は薬売りの夫婦と偽り旅道中。
「まるで”冬ソナ”のようですね」とイヤホンガイド。
「チュンサンは記憶を無くして、ミニョンという名でユジンの前に現れたけど」
…それってこの状況と同じか~?

濡衣は、死んだ恋人のそっくりさんと面つきあわせて、
しかも夫婦っぽいことしなきゃいけない。
きっと声も、笑顔も似ているんだろー。
ちょっとした癖まで似てたらどーする!?
心の奥がチクチクだろーな。
涙がポロポロだろーな。
思い出がグルグルだろーな。

勝頼は、そんな彼女を見て罪の意識を感じるでしょうか?
胸がキュンと締め付けられかも…。
このまま時が過ぎたら、この二人は本物になったかもしんない。
けれど、そーはさせまじ第3幕!

『十種香』

2人の旅も終わり、濡衣は腰元。勝頼は花作りの蓑作として謙信館へ!
舞台中央に、蓑作登場。なんと立派な武士姿っ!
後ズ~ッと動かない。愛ちゃん、気品を見せなくてはならんゾよ。

下手の襖が開くと、
そこには、ニセ勝頼を回向している濡衣の姿。
「誰も貴方の忌日命日を弔ってくれないのね」
ウッソ~!?”2人の勝頼事件”から1年経過してるんだと~!

上手の襖が開くと、後ろ姿がボ~ッと浮かび上がる。
出たよ~ん、八重垣姫(中村時蔵)
1度も会ったことのない許婚の勝頼。
その絵姿を一心不乱に見つめて回向しておりますっ!!

何でしょう?、この一途さって。
こんな事やってっか~?フツー!
顔がイイから想い焦がれるんでしょーか?
いつの世も”恋は顔から”ってか!?
香るは香る十種香…。

勝頼は2人の女を思って不覚の泪…。
それに気がついたか、濡衣が出てみると、勝頼のドアップ!
嗚呼、こんな姿を見てしまうと…、
心がいっぱいになってしまったのね。
ビエェェェン!!濡衣泣き出しちゃった。

八重垣姫も扉を開けて…。
信じらぁれなぁいよぉぉ。愛しい愛しい御方!
肖像画と等身大の男を見比べて、
ホッペタつねるわ!アイタタタ~。本物なのネ!
ガバッとすがりついて大ー泣きっっ!!

勝頼はあくまでもクールに
「私は花作りの蓑作っす。勝頼って誰っすかー?」
濡衣が姫に「そんなに好きなら、諏訪法性の御兜を取って来て!」
八重垣姫もピーンときて「やっぱ勝頼さまでしょ!でしょでしょ!」
でも、勝頼もちょっとやそっとじゃ口割らねぇ。
「身の上明かしてー。言わないなら、さぁー殺せ!」負けてない姫。
それにも動じない勝頼。
「姫はもう生きてはいられなーい。」
√ 戯れ言の恥ずかしや。心の汚れ画像にいいわけ
濡衣の目がキラリッ!
「天晴れなるお志。打ち明けましょう。そうしましょう。
正真正銘の勝頼さまでございます。」

恋の成就を確かめる間も無く、謙信が突如現れ
「この文箱携えて塩尻へー」行っちゃったヨ~勝頼。
ところが、「勝頼のお命頂戴」ビューッと追いかけた奴等が。

『謙信館奥庭狐火の場』

「父上ヒドイー!!」真っ青なのは八重垣姫。
追っ手より早く勝頼さまにお知らせせねば。
涙を拭いて、諏訪湖を渡ろうと駆け出しますが…トットットッ。
湖が凍ってる!!

√ アア、翅(つばさ)が欲しい、羽根が欲しい。
  飛んで行きたい。知らせたい

諏訪の御神、助け給え~、救い給え~。
ふと水に浮かぶ自分の顔を見ると…
キ…キツネの顔ッ!!これこそ諏訪明神の遣いに違いなし。
白狐が兜に乗り移った~!
姫は狐火に守られながら、飛ぶが如く、駆けてゆくのでありましたー。

花道途中で、フと振り返る八重垣姫。
兜は彼女を引っ張って行く。
そんな姫の姿が可憐。中村時蔵、新鮮でござりまする~。

あの3人が一緒にいる理由が、やっと判った!
愛のメリーゴーランドだぁねぇ。

長野県諏訪湖の不思議現象。
何世紀も前から人々の生活に根付いている”御神渡り”は、
地球温暖化の影響で、毎年見られるものではなくなっておるとな…。
寂しいことですな…。

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☆あくまでも主観で書いたものです。特に他意はありませんので平に容赦下さい。