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「宮沢賢治」でございます!(その12)

2016年07月29日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
「よだかの星」
【299ページ】
----、夜だかは大声をあげて泣き出しました。泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。
「ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ1つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫をたべないで飢えて死のう。いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向こうに行ってしまおう。

【304ページ】
夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。もう山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。よだかはのぼってのぼって行きました。寒さにいきは胸に白く凍りました。空気がうすくなったために、羽根をそれはそれはせわしくうごかさなければなりませんでした。

[ken] まるで語り部さんのように、「ぐるぐるぐるぐる」「遠くの遠くの」「のぼってのぼって」「どこまでも、どこまでも」「それはそれは」というフレーズに、何とも言えない心地よさを堪能させていただきました。「よだかの星」では、宮沢賢治さんの仏教思想が色濃く伺えますね。そもそも食物連鎖とは、生物群集内での生物の捕食(食べる)・被食(食べられる)点に着目し、それぞれの生物群集における生物種間の関係を表す概念です。本書では、生物連鎖の無常観に耐えきれない「よだか」の物語です。私たちは必ず死にますし、日々の食べ物に感謝を捧げつつ、ときどき生物連鎖の無常観に浸る時間を持った方がいいと思いました。(つづく)
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