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『ちくま日本文学 泉鏡花』その3

2016年01月14日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
▼第3回目は『高野聖』で、この作品を読みたいがために、図書館で『ちくま日本文学 泉鏡花』を借りたのです。泉鏡花作品の代表作とも言われる本作は、評判にたがわず、緩みのない迫力満点の描写が連綿と続きました。

【99~100ページ】
ポンと煙管(きせる)を払(はた)いて、
(何、遠慮をしねえで浴びるほどやんなせえ、生命が危くなりゃ、薬を遣らあ、そのために私がついてるんだぜ、なあ姉さん。おい、それだって無駄じゃあいけねえよ、憚(はばか)りながら新方万金丹、一帖三百た、欲しくば買いな、まだ坊主に報捨をするような罪は造らねえ、それともどうだお前いうことを肯(き)くか。)といって茶店の女の背中を叩いた。
私はそうそうに遁出(にげだ)した。

【127ページ】
私は余りの気の毒さに顔も上げられないでそっと盗むようにして見ると、婦人(おんな)は何事も別に気に懸けてはおらぬ様子、そのまま後へついて出ようとする時、紫陽花の花の蔭からぬいと出た一名の親仁(おやじ)かある。
背戸から廻って来たらしい、草鞋(わらじ)を穿(は)いたなりで、胴乱の値付を紐長にぶらりと提げ、銜(くわえ)煙管をしながら並んで立停まった。
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