息をするように本を読む

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ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

葬神記

2012-10-28 10:32:35 | 著者名 あ行
化野燐 著

考古探偵一法師全の慧眼というのがサブタイトル。

遺跡調査の発掘現場で死体が発見された。
そこにあるのはたったひとつ、被害者の足跡だけ。
そして発見したのは現場にアルバイトに来た男・古屋。

「ぬかと様の祟り」という言葉がささやかれる中、考古探偵・一法師が登場する。

豊富な知識と経験であざやかに事件を切る一法師であるが、言葉がきつく
細かい説明はしない。
だから、解決したようでいて、謎をそのまま持ち越したりする。
それに振り回される古屋のキャラクターは、頼りなすぎてあきれるほど。

考古学研究は現実とのしのぎ合いのようだ。
発見される場所は工事現場であったり、公共工事の予定地であったり。
一刻も早く進みたいのに、調査が済むまでできない。
そして発掘は根気と体力と時間との戦い。
発掘の層によって時代を設定するのだから、いい加減なことは許されない。
どこにでもありそうなかけらが、世紀の新発見であることもある。

そして、役所絡みの不正とか、考古学への情熱のあまりの私物化とか、
集団ヒステリーともいえる祟りの噂と、それをあっという間に拡散した
ネットの怖さとか、そんなものすべてで物語が構成される。

何がこわいって人間だ。
長い歴史もネットのスピードも、そこに人を介さなければ何事もない。
悪意の人がいたときに恐怖が始まる。

発掘やら考古学の常識やらのなるほどなエピソードも楽しかった。

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