息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

沈黙の塔

2013-08-31 10:04:05 | 著者名 ま行
森鴎外 著

なんとも不思議な夢をみる。
それは異世界であり、それでいて既視感がある。
心細さと懐かしさがともにある。
そんな夢の世界を思い出した。

高い塔があり、そこに大量のなにかが運び込まれている。
人に尋ねるとそれはParsi(パアシイ) 族の死骸であるという。
彼らは禁書を読んだ故に殺されたのだと。

言論や思考の統制と、それに対する一方的な敵意。
平穏をみだしたかどでとらわれるParsi族は、単に罪になるものを
探し求めたものからいいがかりをつけられているようにしか見えない。

沈億の塔はゾロアスター教徒が鳥葬に使う塔であるという。
神聖このうえないのに、不気味さと恐怖がぬぐえない場所。

本書は1910年「大逆事件」の際に書かれた。
さまざまな危惧と、権力への反感を込めている寓話である。
時代を考えれば、軍医であった著者が、自分の地位や立場を賭けて書いた
といっても過言ではない。

重みのある作品なのに、異空間を思わせる空気感。
じっくりと読み込むたびに、理解が深まっていくように思える。

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