息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

愛逢い月

2012-10-29 10:39:56 | 著者名 さ行
篠田節子 著

いかにも篠田節子らしさを発揮している短編集。
どれも女性の心情を鮮やかに切り取り、的確な言葉にうつしかえる。

中でも「秋草」は美しい襖絵と、相手の心変わりを知った女心との対比が
素晴らしい。
源氏物語の世界を見るようで胸が締め付けられる。

そして「柔らかい手」。
奔放に生きた男が海での冒険で事故に遭う。瀕死から立ち直った彼は
妻に介護を受けることになる。
やがてそれが恐怖となり、疑心暗鬼にとりつかれていく。

登場する男性が少しずつ情けないのがリアルだ。
ダメなところ、頼りないところこそ愛すべき部分だが、
それが増幅したり、年月を重ねたりしていくと崩壊する。

人の心の揺れや運命のいたずら。
読んでいてドキッとしたり、ぐっときたり。
響いてくるのが魅力だ。

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