息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

マシアス・ギリの失脚

2014-10-20 22:04:50 | 著者名 あ行
池澤夏樹 著

谷崎賞受賞。
著者の作品は初めて、じゃないかもしれないけど、ほぼ記憶にない。
びっくりした。面白くて。

長編だし、始まりが割合冗長なので、だらだら読んでいたのだが、
途中から目が離せない状態に陥ってしまった。

南洋ののどかな島国ナビダード民主共和国。
マシアス・ギリはここの大統領であるが、一度失脚したことがある。
彼はストイックで国を愛しており、かつて若き日を過ごした日本文化に
多大な影響を受けている。

あるとき、日本からかつての大戦の慰霊団47人がやってきた。
彼らは島内をめぐるバスに乗って出発したが、行方がわからなくなる。
時を同じくして、ゆるぎないと思われていたギリの政治生命にかげりが見え始める。

日本を絡めた国際援助や小さな国が生き延びるために知恵を絞る姿など、
政治的なエピソードはリアリティがある。
そしてそれと全く同じ温度で、巫女や伝説、祭りなどが存在する。
不思議な島の中で起こった出来事は、どんなに非常識でもその島の中では常識の一部。
やがて戻ってきたバスも笑顔で迎えられ、帰国するだけ。

折々に挟まるバス・レポートはおかしさと非現実と、そしてどこかに
シュールな事実を秘めている。

この物語にはさまざまな女たちが登場し、それぞれがとても一生懸命に生き、
役割を果たしている。
ただ面白いだけではない、絶対に忘れられない輝くものを心に残す物語だ。

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