哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『クローズド・ノート』

2007-10-14 16:40:00 | 時事
映画「クローズド・ノート」9月29日全国東宝系ロードショー オフィシャルサイト 

 映画はたまに見ますが、今回はこの日本映画を見ました。繊細な印象の映画で、あまり急ぎすぎない淡々とした流れや日記を読みながらのストーリー展開が、小説を読むような雰囲気で楽しめました。


 ところで、池田晶子さんが映画について書かれた文は、『悪妻に訊け』の「シンドラーのリスト」くらいしか思いつきませんが、ここでは池田さんはこの映画(シンドラーのリスト)にかなり辛らつです。

「娯楽でなければ言い訳以外ではないのだよ、太平楽の人々が反戦映画を観に行くという行為の意味はね。・・・殺される人の演技をすることで作られる反戦映画を観るのを好かない。それが演技であるということを、知りながら忘れて涙を流す観客も、うそっぱちだ。・・・スクリーン上の生死には涙するが、現実の生死についてはその考え方さえわからんような人こそ、根っこの脆弱な反戦論を唱えたがるものなのだよ。」


 「シンドラーのリスト」もかつて映画館で見ました。確かに誰も批判できないような、有無を言わせない雰囲気の映画です。
 しかし池田さんは、上のように手厳しく指摘します。最初にこの文を読んだときは、池田さんが「シンドラーのリスト」そのものを批判されていることにびっくりしました。ただ、映画上演技で表現される死を観て反戦なりの理念を強化するような行為を安易なものとして、池田さんは批判されたのでしょう。