哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

愛し方がわからない(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2006-06-09 22:54:44 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載「人間自身」今週号は、「愛し方がわからない」という題でした。教育基本法改正案の愛国心の話の続きです。ポイントとなる文を要約しつつ抜粋します。

「改正案の「愛する態度」というのも相当変だ。心とは内面であり、外面としての態度とは別のものとしたいらしい。しかし、態度とは別に心があるなんてことはない。
 そして、心=内面の自由は規制されるものではなく、考えることで自由を確保できる。観念を見抜き、詭弁を見破り、虚構を虚構と自覚する。国なんてしょせん虚構だと自覚するなら、抵抗するまでもない。悪法も法なり、服従しながら自由でいられる。」



 最後の文は、ソクラテスたる池田さんの真骨頂ですね。「悪法も法なり」というフレーズは人口に膾炙していますが、考え方は必ずしも理解されていないように思います。要するに思考と肉体の分離と言いましょうか。悪法だから違反してもいい、とはならず、悪法が現実に肉体を規制するのならどうぞ、精神=思考は一向に自由であると言いたいわけですね。

 安直に考えれば負け惜しみに聞こえますが、カエサルのように、死してなおその思考したことが、残された人間に大きく影響を与えた歴史的事実を思い起こせば、精神=思考の勝利もありうるのでしょう。