哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『残酷人生論(増補新版)』(毎日新聞社)

2010-11-21 01:59:59 | 哲学
 旧版の『残酷人生論』がいつの間にか絶版になっていて、今月それが増補されて復刊されていた。「古典のように売れている」はずの池田晶子さんだが、出版社によっては絶版になってしまい、それが別の出版社で復刊されていき、どうやら扱っている出版社が絞られていっているようだ。この本の巻末に著作案内があり、他の絶版になった著作がどう復刊されているかも紹介されている。


 増補といっても、加えられたのは一編だけで、しかも調べたら『死とは何か』に既に掲載されていたものだった。残りの文章はすべて旧版と同じだろうが、掲載順序がかなり変更されていて、目次も随分変えられている。とはいえ、以前にもこのブログで紹介した通り、もし池田晶子さんの著作を初めて読む人が大人なら、『残酷人生論』を是非薦めたい。しかも、旧版より値段も安くなり、ソフトカバーの新書に近いサイズだから携帯もしやすい。


 もちろん、池田晶子さんの主著としては、『14歳からの哲学』かソクラテスシリーズが挙げられるが、池田さんらしい諧謔的かつ逆説的言説がもっとストレートに堪能できる著作のうちの一つが、この『残酷人生論』なのである。

 題名の「残酷」の趣旨は、本文に書いてはあるが、少し引用して紹介しよう。


「考えるということは残酷なことである。ぐずぐず悩むことに人を甘やかさない、ありもしない慰めで人を欺かない、人生の真実の姿だけを、きちんと疑い考えることによって、はっきりと知るというこのことは、なるほどその意味では残酷なことである」(『残酷人生論』「プロローグ-疑え」より)