風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

追悼:竹内結子さん

2020-09-29 21:48:52 | 日々の生活
 女優の竹内結子さんが亡くなった。享年40。今年1月には二人目のお子さんが生まれたばかりだったという。一人目のお子さんについては、歌舞伎界の跡取りとして中村獅童さんのご母堂が親権を欲しがったらしいが、幼い日に実母と別れて会うことができなかった竹内さんは、「私がひとりで立派に育てます」と、シングルマザーの道を選ぶような、芯がしっかりした女性だったらしい。インタビューでは愛想笑いはしないし、つまらない話には乗ってこない、しかし言葉遣いは丁寧で挨拶はしっかりするし、自分の意見を論理的に述べるといった、しっかり者の評がある一方、「私、女優よ」といった高飛車なところがなく、周囲が戸惑うほどに天真爛漫な人柄だったとも言われる。芸能界にさほど思い入れがない、関心の薄い私でも、ちゃきちゃきっとした小気味良さを感じるような爽やかさがありながら、泣きの芝居に定評があるように奥行きのある演技も出来て、齢を重ねながら更に幅広い役柄をこなして行くことが楽しみな、これからが期待される女優さんだったと、惜しまれる。自殺だったようで、なおさら驚いている。ご冥福をお祈りしたい。
 その芸能界で自殺者が相次いでいることも話題になっている。7月に三浦春馬さん(享年30)、今月に入って14日に芦名星さん(享年36)、20日に藤木孝さん(享年80)が亡くなった。竹内さんは7月に公開された映画『コンフィデンスマンJP-プリンセス編-』で三浦さんと共演した縁についても取り沙汰された。著名人の自殺に関する報道は子供や若者の自殺を誘発する可能性があるとして、厚労省と、いのち支える自殺対策推進センターから、WHO(世界保健機関)の「自殺報道ガイドライン」を踏まえた報道の徹底を求める、異例の要望書が出された。同ガイドラインでは、報道を過度に繰り返さない、自殺の手段について明確に表現しない、自殺が発生した場所の詳細を伝えない、センセーショナルな見出しを使わないものとされ、死の原因については知られるようになるまで待つこと、とされる。そしてガイドラインに沿って、各種報道の末尾には悩みを抱えた時の相談窓口が紹介されており、シリアスな状況が伝わるとともに、なんとも物悲しくもなる。
 このコロナ禍では行動が大きく制約され、とりわけ芸能人のような自由業の方々には先行きに不安があり(だからと言って自殺の原因をコロナに帰するわけではないが)、呑気な私ですら心理的に不安定で、コロナ「慣れ」するのと反比例するように、ある種の「疲れ」と闘っているようなところがあって、いつもにも増して心穏やかではない。三原じゅん子厚生労働副大臣は、「この7~8月の統計で、昨年比4割の女性の自殺が増加している。コロナ禍のストレスなのか理由は判明していないが大変問題視していた矢先、、、。」とツイートされた。
 先日、日経ヘルスに掲載された陸上自衛隊心理教官で心理カウンセラーの下園壮太さんのコラムによると、震災などではその直後だけでなく、半年、1年たった頃にイライラする人が増える、外出自粛期間、いつまで続くか分からない感染症への不安で、多くの人がプチうつ状態になった、社会や生活の変化とウイルスへの不安などから、少し精神的に「疲労」してしまった、じわじわと蓄積してきた疲労だから、すぐには回復できないかもしれない、と言われる。
 今日のダイヤモンド・オンラインには、サイエンスライターの川口友万さんが、秋に食欲が増す科学的な理由について寄稿されていた。食欲が増すのは、睡眠周期を作るホルモンとして知られるメラトニンの原料であり、快楽と情動に関係するセロトニンという脳内物質が影響しているらしい。このセロトニンは幸福のホルモンとも呼ばれ、幸せな気持ちを作り出すとともに心を安定させるのだそうだ。そして研究によって、光を浴びるとセロトニンの分泌が増加することが知られている。逆に秋から冬に向けて日照時間が減ると、セロトニンの分泌が減り、一般の人でも僅かながらうつ病の症状が出てくるという。秋にメランコリックな気分になるのは、気取っているわけではなく理由があるのだ。そして人はセロトニンの欠乏状態を無意識に嫌い、セロトニンを増やそうとするそうで、そのためには「食べる(!)」「(ジョギングやダンスなどリズミカルな)運動をする」「泣く」のが有効だそうだ。食欲の秋、運動の秋、読書の秋(と言うにはちょっと強引か)と言われる所以である。
 普段は、徒然なるままに心に映り行くよしなしごとをそこはかとなく書き綴る・・・と言うより言いたい放題の備忘録的な独り言ブログだが、今回は柄にもなく殊勝な気持ちで、「食べる(くれぐれも食べ過ぎないように)」「運動する(無理せず適度に)」「泣く(時には感情を露わに)」などしながら、多くの方との連帯でこの苦境を乗り切って行きたいものだと心から思う。
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