風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

G7雑感 中国に歪められる世界

2023-05-28 19:37:33 | 時事放談

 ロシアとウクライナによる戦争が一年を超え、世界が自由・民主主義国と、権威主義国と、そのいずれからも距離を置きたがるグローバルサウスという日和見(と敢えて言わせて貰う)のグループに分断される中で、G7がどのようなメッセージを発出するのか、それに対してG7を取り巻く利害関係者がどのような反応を示すのか、注目された。

 先ず、岸田首相の念願だった地元・ヒロシマ(地理的にとどまらない意味合いを込めて敢えてカタカナ表記する)での開催らしく、将来に向けて核兵器の廃絶を訴えた。共同声明「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」によくぞ漕ぎつけたものだと思うが、反核の市民団体からは不評で、「失敗」だったとこき下ろす声もあった。核保有国の米・英・仏に加え印も参加したG7で大胆な進展など期待できないことは織り込み済みだろう。それよりも、首脳たちが個別に資料館を視察し、被爆者と面会し、G7首脳が揃って原爆慰霊碑に献花し、戦没者を追悼する場面があったのは、日本ならではの貢献であり、快挙と言うべきだろう。

 このヒロシマでの開催に、ウクライナのゼレンスキー大統領が飛び入りで参加し(正確には、オンライン参加を対面参加に切り替え)、G7後半の話題をさらった(いや、そのための花道をわざわざ用意したと言うべきだろう)。2014年以来、米・英をはじめとして様々な支援を受けて来たとは言え、いくら所詮は資源大国でしかない、冷戦時代の装備が残るロシアの攻撃であれ、今なお持ち堪えているのは驚異的だが、これはNATOをはじめとする後方支援あってこそ。ヒロシマという地でのインドをはじめとするグローバルサウスとの対話は、ウクライナの存在感を示す良い機会だったことだろう。移動手段については当初、アメリカ軍機を使う予定だったが(当然であろう)、飛行出来るのが同盟国、友好国の上空になるなどの制限があり、かつ20時間以上かかることから、フランス機に切り替えたようだ。日本に到着してから(日本が用意したとは言え)ドイツBMW社製の防弾車に乗り、会場で最初に面談したのはイタリアとイギリスの首相という(このあたりは日経による)、毎度のことながら気配りの行き届いた訪問だった(微笑)。

 対中では、部分的であっても「デ・カップリング」というネガティブな表現は敬遠され、「デ・リスキング」で纏まった。誰もが巨大な市場の中国に依存し、一定程度の恩恵を受けつつも、一定程度のリスクをも意識する中では、当然の成り行きであろう。もとは3月にEU委員長が発した言葉で、4月にアメリカの安全保障担当大統領補佐官が続き、G7で決定的になった。「人類運命共同体」なる高邁な理想を掲げる中国が、明確に世界の「リスク」と見做されることは、さぞ心外だったことだろう。その中国によれば、G7は「中国を中傷し、内政に乱暴に干渉している」として、「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、日本に「厳正な申し入れ」をしたという(時事による)。とばっちりを受けたのは垂大使だが、「中国が行動を改めない限り、G7として共通の懸念事項に言及するのは当然だ」と反論された。かねて垂大使のご発言には敬意を払って来たが、この毅然たる対応は天晴れと言うべきだろう。中国は都合の悪いときには決まって「内政干渉」だと、グローバルに説得力のあるとされる言い回しで誤魔化す(その根本をなす思想は異なるのだが)。惜しむらくは、日本からではなく駐中国日本国大使からの発言だったことだ。こうした重要な立場は、明確に(言うべきことは言うと言い放った首相や外務大臣など)日本国政府として発信すべきだろう。

 例えばアメリカのCHIPSs法やインフレ抑制法を見ると、あのアメリカが・・・と、隔世の感がある。1980年代後半に不当とも言える(発展途上の、と敢えて言う)日本の内政に干渉したアメリカだったが、今や当時の日本も顔負けの、否、むしろ国家資本主義の中国に対抗せざるを得ない状況に追い込まれ、なりふり構わぬ国内産業育成・保護の補助金行政を強行するのだ。あの、理念の共和国・アメリカが、である。これを、中国が歪めていると言わずして、何と言おう。それは、グローバルサウスに対しても同様であろう。「債務の罠」と呼ばれるが、中国自身は、首尾一貫して他国の内政には干渉しないが、冷徹に経済的な搾取(いわゆる新・植民地主義)を続けている。

 だからと言って、アメリカの行動を許容するものではない。ただ、アメリカ自体は、依然、西側と呼ばれる自由・民主主義世界では唯一と言ってよいほどの人口増加と経済の高成長を続けるが、さすがのアメリカを以てしても、相対的な地盤沈下によって、有志国と共同しなければ単独では対処できない事実に呆然とするだけである。

 問題はやはり中国である。

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