風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

茶番・続

2011-06-05 18:11:47 | 時事放談
 さすがの菅総理も、自らの置かれた状況をようやく悟ったか、遅くとも8月までに退陣する意向を固めたそうです。日刊各紙によると、主要閣僚あるいは自らに近い閣僚と電話で会談し、「今夏の早期」(朝日)あるいは「そう遠くない時期」(読売)に退陣を受け入れる意向を伝えたと言われます。ただ時期については、第二次補正予算案の国会提出のタイミングでの退陣が念頭にあるとみられ、枝野官房長官は「そんなに遅い時期ではない」「(9月前半に予定される日米首脳会談も)自分が出るという趣旨のことは言っていない」と述べ、安住国対委員長は「夏を区切りにするというのは一つはある」と述べましたが、自民党だけでなく同じ民主党内でも鳩山氏や小沢氏は月内退陣を主張しており、まだ多少なりとも波乱含みではあります。
 産経のWebニュース(阿比留瑠比という署名記事)に勝海舟の言葉が引用されていました。「政治家の秘訣は、ほかにはないのだよ。ただ誠心誠意の四字しかないよ。伊藤(博文)さんは、この政治家の秘訣を知らない」1896年5月のことだそうです。造反の芽を摘んで不信任決議案を否決した途端に続投表明したことに、「誠意」の「せ」の字もない、卑怯で姑息と断じ、首相が愚弄したのは首相の延命に手を貸すピエロを演じた鳩山氏だけではなく、首相の意思を尊重し不信任決議案に反対票を投じた党所属議員、そしてその背後にいる有権者も等しくコケにしたと、手厳しい。
 確かにこれほど「誠意」が見えず、結果として人望がない首相も、珍しい。ルーピー鳩山さんも「菅首相では、この国難は乗り切れない。他人の言うことを聞かず、イエスマンしか近くに置かない。意見した人間には怒鳴り散らして、徹底的に排除する。自分で責任は取らず、他人に押し付ける。この1年で、官僚は面従腹背になった。信頼関係が欠如している。震災・原発事故への対応が遅れているが、菅首相に大きな原因がある」と評しましたが、なかなか的確だと喜んでいられません。同じ党に所属する前首相から、ここまで言われてしまうのは異常です。また、かつて市川房江さんを担いで政治行動を共にし、その後は疎遠になって、今はホームレスに身をやつすかつての同士・田上等氏(4月の文芸春秋やTBS報道特集に登場)は「福島第1原発事故で何でも東電のせいにしたり、東電本店に怒鳴り込んだりしたのは、彼独特の「合理性」から。みんな自己責任だと思っている」と述べて、田上氏が自己破産したときも「自分の家を取られた不始末はお前の責任だ」と血も涙もなく突き放されたエピソードを披露し、「当時から国家観や哲学なんてものはなかった」「落選中、社会市民連合の代表となったが、口の利き方にはほとほと呆れていた。日ごろ手足となり応援してくれる年上の市会議員が事務所にきても、なぜか敬意を払おうとはしない。だから話はちっとも和まない。要は処世術がないのだと思う」「菅が将来、もし首相になったら日本人を辞める、という仲間が周りに少なくなかった」などと話しています(産経ニュース)。ホームレスだからこそのウラミツラミとは思えないほどのリアリティがあります。
 世論調査では、首相の震災対応を評価しない声が大半なのにも係らず、この困難な時期に首相交代を望まない声もまた大半という、矛盾した状況です。確かに、小泉さんが退陣した2006年9月からの5年で5人の首相が登場し、1年以上勤めあげたのは安倍さん(366日)だけで、その後は福田さん(365日、但し閏年のため一年に一日足りず)、麻生さん(358日)、鳩山さん(266日)、と一年未満が続き、菅さんはようやく6月8日から二年目に入るそうですが、私も、当初は、世論調査同様、国際社会の世間体と復興の大義から、我慢すべきと思って来ました。それはまた、仮に交代するにしても決定打がいない、貧しい政治状況が見えているからでもあります。これを誰かが政治的ニヒリズムと呼んでいましたが、まさにその通り。やはり日本がこのまま沈むのを見過ごすべきではありません。
 今朝のNHK討論番組で、下地某なる国民新党の小物は、「大連立」の考えを示した民主党の岡田幹事長を批判し、この期に及んでなお連立与党の地位に汲々とする見識のなさを晒して、民主・自民の両幹事長から相手にされていませんでしたし、別の番組では国民新党の顔・亀井某も存在感を示そうと躍起になっていたのが象徴的だったように、ここに来てようやく機は熟したか、自民党領袖からも期間限定・目的限定での協力の声があがり、ようやく政治が前進する兆しが見えてきました。政権交代だけが目的だった民主党という、有権者も半ば諦めつつ半ば喜んで騙されて、あわよくば瓢箪から駒のような奇跡を、淡い期待を抱いて待ち続けやっぱり裏切られ続けた、この二年間の日本の政治状況の茶番も、そろそろ打ち止めにし、全ての政治家が政治哲学を明らかにし、理念と政策本位の政治に回帰して欲しいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする