風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中国落穂拾い(1)距離感

2011-06-28 23:50:45 | 永遠の旅人
 今回の出張で、認識を新たにしたのが、中国の地理的な近さでした。東京~北京3時間強、北京~上海2時間、上海~東京3時間弱、実際には待ち時間がありますが、乗っている時間だけなら東京~上海(飛行機)は東京~大阪(新幹線)よりも近い。こうして見ると距離感というものは、如何に心理の影響を受けるかが分かります。私にとって、中国は遠い。初めての海外は台湾で、台湾が最も近い海外だという思い込みもありましたが、実際には台湾よりも上海の方が日本に近いのでした。
 近さということでは、まさに、長崎、佐賀、熊本、大分などの九州各地の代表団が6月上旬、中国からの観光客を誘致しようと上海と北京で相次いで会見を開いたそうです。そのとき、九州7県はいずれも福島第1原発から遠く離れている点をアピールしました。例えば大分から直線距離で福島まで974kmあるのに対し、上海までは860kmだそうです。
 こうしてあらためて地図を眺めて見ると、日本列島は中国の喉元に突き刺さった匕首だという軍事戦略的な見方も、分からないではありません。最近の報道で、中国が台湾との間で一朝有事の際には、中国軍は沖縄をはじめとする米軍基地を叩こうとするだろうという米国のレポートが紹介されていましたが、当然のことなのでしょう。日本列島自体がいわば大陸・中国への最前線基地になるわけで、そうした地理的特性と言う意味では、沖縄だけの問題では済まされません。
 一方で、週末のNHKの番組では、ホットスポット(放射線がそこだけ強いという意味ではなく、地球上で2%しかない希少な生物が生息する地域)の六番目に日本列島を挙げていました。数千万年前に海流の流れが変わり、赤道付近から暖流(黒潮)が日本列島にやって来るようになって、豊富な水蒸気が雨となり、地球上では中国にせよ中央アジアにせよ中近東からアフリカに至るにせよ乾燥地帯の緯度に位置しながら、雨が多いことにより、様々な生命を育む豊かな森林資源に恵まれることになったというわけです。海洋資源にも恵まれ、豊かな自然環境の中で穏やかな国民性を育んで来たこの国が、今なお冷戦が残る北東アジアの重要な一角を占めるという、地政学的に極めてややこしい立場にあることの不思議を思わないわけには行きません。
コメント
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