常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

卯の花

2024年05月25日 | 登山
唱歌「夏は来ぬ」には、卯の花が詠みこまれている。卯の花とホトトギスは対のものになっている。歌詞を記すと

うの花のにおう垣根に
時鳥葉やもきなきて
忍び音洩らす 夏は来ぬ

時鳥も卯の花も、『枕草子』以来、日本の夏のシンボルとして語り継がれてきた。これほど、有名なものであるのに、長い人生のなかで、この花が卯の花、この鳥がホトトギスと特定することはいまだにできていない。折にふれて卯の花と思しき花を見ていたろう。山で甲高く鳴く、ホトトギスと思われる鳴き声を聞いても、その鳥の姿を間近で見た経験がない。

枕草子99段。五月の梅雨模様の天気、宮中の女御たちは退屈を覚え、「ほととぎすの声尋ねばや」と言い合って、牛車に4人ばかり乗り合わせて、さる朝臣の邸を見に下り立つ。馬の絵のある障子、網代屏風、みくさの簾。どれも昔の形をうついた奥ゆかしい見ものである。すると、待ちかねていたほととぎすが、けたたましく鳴き会う。ここで、田の稲や、引き臼を回しながら踊る乙女など宮中の女御たちには珍しい見ものばかりだ。さらに萌え出たワラビを手づから取り、門口に咲き乱れた卯の花を折り取って牛車の屋根に挿し、卯の花車に仕立てて意気揚々として、宮に帰っていく。あまりの珍しさに、いつもはまず一首と、詠んだ和歌を書き留めたものだが、定子に「歌は?」問われるまで失念しているありさまであった。

ベランダのラベンダーの花穂を4、5本切り採って束ね、小さなラベンダーの束を玄関脇の壁に吊るした。卯の花を採って飾ることはできないが、せめてものラベンダーで、自然のかおりを室内にとり入れる。少しずつこの束を増やしていくと、乾燥してポプリになる。育てたハーブを日々の暮らしのアクセントにする。これも、体力が衰えつつある、高齢者のできるぎりぎりの自然の楽しみ方だ。
コメント
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