昭和11年2月26日未明、陸軍青年将校1,600が警視庁、首相官邸を占拠し大蔵大臣高橋是清、内大臣斉藤実を暗殺するという大事件が起きた。首相官邸では、内閣総理大臣の岡田圭介がまだ床に寝ていた。この夜、東京に大雪が降り、官邸へ将校たちが乱入してきた時間には雪は止んでいたがかなりの積雪であった。なかにいた秘書や巡査は外の様子を雪明りの中で見ていた。
まだ、就寝していた岡田首相のところに、秘書の松尾と巡査が「来ました、来ました」と声をかけた。首相が「何が来たか」と聞くと、「軍隊が大勢きました」と答えた。「ならばもう致しかたないではないか」と覚悟を決めたが、「そんなことを言っている場合でありません」と二人は言って、首相の手を引き枕もとにある廊下の非常口を開けたが、兵隊が帷集していて逃げられそうにない。そこで、廊下を通り炊事場の陰にある大きなボイラーの後ろに隠れた。その後女中部屋の押入れに隠れた。
秘書の松尾は義弟で首相と容貌が似ていたので、将校の前に出て行って射殺されたが、将校たちはこれを岡田首相と思い込んだため、かろうじて難を逃れた。
かきくらし猶ふる雪の寒ければ春とも知らず谷の鶯 実朝
東京に雪が降るのは珍しいことであるが、桜田門外の変といい、2.26事件といい大事件のおりに雪が降っている。雪は事件の進展にも影響を与えた。立春を過ぎて南岸を通る低気圧は、過去にも雪を降らせている。
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