みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0845「しずく84~反抗」

2020-03-26 18:18:41 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは男を睨(にら)みつけて言った。「あたしは戻(もど)って来たんじゃないわ。本当(ほんとう)のことが知りたかっただけよ。…あたしをどうするつもりなの?」
 男はがっかりした様子(ようす)で溜息(ためいき)をついて答(こた)えた。
「そんな顔をしないでくれ。せっかくの美人(びじん)が台無(だいな)しだ。ママも悲(かな)しむぞ。…君(きみ)には、ぜひやってもらいたいことがあるんだ。ママの代わりに、我々(われわれ)に協力(きょうりょく)してほしい。これは、君(きみ)のためにもなる話しだ」
「イヤよ。あたしは、ママを殺(ころ)した人たちなんかと…。そんなのあり得(え)ないわ」
「パパが頼(たの)んでもかい? よく考えるんだ。私の誘(さそ)いを断(ことわ)るということは、どういうことなのか…。それとも、ママから何か、聞かされているのかな?」
「そんなこと…、あなたに教えるつもりはないわ。絶対(ぜったい)に協力なんかしない!」
 男は、つくねの後ろに回り込み彼女を抱(だ)きしめた。そして、彼女の耳元(みみもと)にささやいた。
「とても残念(ざんねん)だよ。君は、ママと違(ちが)ってもの分かりのいい娘(むすめ)だと思っていたのに…」
 つくねは縛(しば)られた身体(からだ)で必死(ひっし)にもがいた。そのはずみで椅子(いす)が横に倒(たお)れてしまった。男は、まるで小さな子供をあやすように椅子を戻(もど)すと、
「仕方(しかた)がない。君を助(たす)けてやろうと思ったが…。君には、実験台(じっけんだい)になってもらおう。能力(ちから)を強化(きょうか)する実験だ。これが、なかなか上手(うま)く行かなくてね。でも、君はママの血筋(ちすじ)を引いているから成功(せいこう)するかもしれない。それと、洗脳(せんのう)もしないとな。親(おや)の言うこと聞くように」
<つぶやき>親の言いなりにさせるなんて、ひどい人です。つくねはどうなっちゃうの?
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0844「漂流」

2020-03-25 18:10:53 | ブログ短編

 彼が目を覚(さ)ますと、海(うみ)の上にいた。なぜこんなところに…。彼は考えた。そういえば、昨夜(ゆうべ)、酔(よ)っ払ってボートに乗り込んだのをかすかに覚(おぼ)えている。きっと、乗り込んだ時にとも綱(づな)が外(はず)れて、沖(おき)へ出てしまったのかもしれない。しかし、そんなことあり得(え)るのか?
 回りを見回しても陸地(りくち)は見えない。どこまでも海が広がっている。太陽(たいよう)は容赦(ようしゃ)なく照(て)りつけ、彼は無性(むしょう)に喉(のど)の渇(かわ)きを感じていた。水が飲(の)みたい!
 彼は鞄(かばん)の中からペットボトルを取り出した。しかし、中身(なかみ)は入っていなかった。喉の渇きはますます激(はげ)しくなってきた。彼は、海水をペットボトルに汲(く)み取った。彼の理性(りせい)は完全(かんぜん)に失(うしな)われていた。彼は汲み取った水を口にした。
 だが、どうだろう。その水は塩辛(しおから)いはずなのに、彼には甘(あま)く感じてしまった。彼の身体(からだ)がおかしくなってしまったのか――。彼は、汲んだ水を一気(いっき)に飲み干(ほ)した。
 彼は満(み)ち足(た)りたのか、いつの間(ま)にかまた眠(ねむ)り込んでしまった。
 次に目覚(めざ)めたとき、彼は大きな水槽(すいそう)の中にいた。辺(あた)りを見回すといろんな魚(さかな)が泳(およ)ぎ回っている。これは、一体(いったい)どういうことなのか…。彼は、自分も魚のように泳いでいるのに気がついた。俺(おれ)は、魚になってしまったのか――。
 彼はパニックになって、めったやたらに泳ぎ回った。回りの魚を蹴散(けち)らして、とうとう彼は水槽に激突(げきとつ)した。薄(うす)れていく意識(いしき)の中、彼は水槽の向こう側に自分の姿(すがた)を見つけた。
<つぶやき>これは夢かうつつか…はたまた幻(まぼろし)か…。彼はどこへ流れ着くのでしょうか?
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0843「チョイス」

2020-03-24 18:21:37 | ブログ短編

 彼とのデートで映画(えいが)を観(み)ることにした。
 彼は入口(いりぐち)に貼(は)ってあるポスターを見て呟(つぶや)いた。「えっ、これを観るの?」
「今日封切(ふうぎ)りなのよ。あたし、一作目の観たんだけど超(ちょう)すごかったの」
「でもさ…、二作目ってけっこう駄作(ださく)が多いっていうじゃない。だから…」
「もう、なに言ってるのよ。前評判(まえひょうばん)もすごく良いし、見逃(みのが)すわけにはいかないでしょ」
 あたしは二人で観るのを楽しみにしていたので、彼がかなり引いているのに気づかなかった。お互(たが)い映画好きだし、あたしは彼もこういうの好きだと思ってしまっていた。
 館内(かんない)が暗くなり映画が始まると、彼はあたしの手をつかんできた。やだ、もうそういうのは…。でも、ちょっと嬉(うれ)しかったなぁ。
 映画が戦慄(せんりつ)のシーンになると、観ていた人の悲鳴(ひめい)がどよめきのように湧(わ)き上がった。その中で、ひときわ大声を上げたのは隣(となり)にいた彼だった。彼は、あたしの手を強く握(にぎ)りしめて、あたしの肩(かた)へ顔(かお)を押(お)し当てた。
 あたしは呆気(あっけ)にとられた。えっと…、これって、怖(こわ)がってるの?
 あたしは初めて気がついた。彼が、ホラー映画が超苦手(にがて)だということを――。思い返してみれば、あたしが怖い映画の話をすると、彼はさり気なく話題(わだい)を変えていた。あれは、こういうことだったのね。でも、何かちょっと可愛(かわい)いかも…。
<つぶやき>誰(だれ)しも苦手(にがて)なものってありますよね。彼は、これを克服(こくふく)できるのでしょうか?
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0842「見守り隊」

2020-03-23 18:08:07 | ブログ短編

 とある教室(きょうしつ)に、男の子と女の子が二人っきりで、ちょっとソワソワ、ドキドキという感じで、微妙(びみょう)な距離(きょり)で座(すわ)っていた。男の子が独(ひと)り言のように呟(つぶや)いた。
「何で誰(だれ)も来ないんだよ。放課後(ほうかご)集合(しゅうごう)って言ってたよなぁ」
 女の子はそれに答えるように、「そうよね。あたしも、部長(ぶちょう)が言ってたって聞いたわ」
(何やってるんだよ。早く告(こく)っちまえよ。せっかく二人っきりにしてやったのに)
 女の子は小声で言った。「あの…。変なこと訊(き)くけど、好きな人…いる?」
(あ~ぁ、ダメよ。そんなこと訊いちゃ。やっぱ無理(むり)かぁ。こういうの苦手(にがて)だからなぁ)
 男の子はあっさりと答えた。「いるよ。でも、まぁ、付(つ)き合ってるわけじゃないけど…」
(いるよって何だよ。そんな言い方したら勘違(かんちが)いされちゃうじゃないか)
 女の子はちょっとがっかりしたように、「そうなんだ…。それって、片思(かたおも)いってこと?」
「まぁ、そうなるのかな?」男の子は窓(まど)の外(そと)を見ながら答えた。
「告白(こくはく)とか…、すればいいじゃない。きっと、両思(りょうおも)いになれるわよ」
(こいつら…もう我慢(がまん)できない。俺(おれ)が言ってやる。そうしないと部活(ぶかつ)が…)
(ダメだってば。回りが騒(さわ)いだら、まとまるものもまとまらなくなっちゃう)
 突然(とつぜん)、窓が開いて男の子が身(み)を乗り出して言った。「お前ら、こんなとこで何してんだ?」
 窓の外には、部長をはじめ数人の部員(ぶいん)たちがしゃがみ込んでいた。
<つぶやき>好きな気持ちは、好きな相手(あいて)より回りにいる人の方が分かっちゃうのかもね。
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0841「こそ泥」

2020-03-22 18:08:39 | ブログ短編

 ホテルの一室。ビジネスマンらしき男が仕事(しごと)をしていた。何かの資料(しりょう)を見たり、書き込みをしたり忙(いそが)しそうだ。だが、どこか様子(ようす)がおかしい。そこへルームサービスがやって来て、コーヒーを男の前へ置いた。男はそれに気づくと、
「あっ、ありがとう。どうにも、眠(ねむ)くてね。今夜中に仕事を仕上(しあ)げないといけないのに…」
 男はコーヒーを口にした。そしてカップをソーサーに戻(もど)すと、突然(とつぜん)男は突(つ)っ伏(ぷ)して眠り込んでしまった。――まだ部屋に残っていたホテルマンは、男が寝入(ねい)っているのを確認(かくにん)すると、ドアまで走って別の男を呼(よ)び込んだ。入って来た男は不安(ふあん)そうに呟(つぶや)いた。
「こ、殺(ころ)しちまったのかい?」
「バカ言うな。まったく何て男だ。いくら薬(くすり)を飲ませても効(き)かないなんて…。こんな奴(やつ)は初めてだ。さぁ、さっさと片づけちまおう。契約書(けいやくしょ)を頂戴(ちょうだい)するんだ」
「何でそんなのが必要(ひつよう)なんだい? それよりも、手っ取り早く金(かね)をいただいた方が…」
「お前はどうして目先(めさき)のことばかり考えるんだ? こいつが持ってる金より、契約書の方が高く売れるんだよ。何でそれが分からないかなぁ」
 ――男たちは部屋中探し回ったが、目当(めあ)てのものは見つからなかった。
 後から来た男があせって言った。「やばいよ、早くずらからないと…」
「くそっ、何てこった。仕方(しかた)がない、金だけでもいただいて行こう」
「こいつ、1セントも持ってなかったぜ。…ここの払(はら)いは、どうするつもりなんだろ?」
<つぶやき>ちょっと間(ま)が抜(ぬ)けてますよね。もしかして、入る部屋を間違(まちが)えてるのかも…。
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