休日(きゅうじつ)。妻(つま)は友(とも)だちと遊(あそ)びに行(い)ってしまったので、私(わたし)は家(いえ)でのんびりと過(す)ごすことにした。昼近(ひるちか)くになって、お腹(なか)もすいてきたので昼飯(ひるめし)でも作(つく)るかと台所(だいどころ)へ向(む)かった。
といっても、たいしたものは作(つく)れないし、それにひとりだ。確(たし)か、買(か)い置(お)きのカップ麺(めん)があったはずだ。あちこち戸棚(とだな)を開(あ)けて探(さが)してみる。そこで私(わたし)は、とんでもないものを見(み)つけてしまった。銀行(ぎんこう)の名前(なまえ)が入(はい)った封筒(ふうとう)…。
こ、これは、まさか…、妻(つま)のへそくり!?
私(わたし)は思(おも)わず手(て)に取(と)った。厚(あつ)みがあって、こんなにため込(こ)んでいたのか? 恥(は)ずかしながら、我(わ)が家(や)の家計(かけい)は妻(つま)が握(にぎ)っている。こっちは毎月(まいつき)、雀(すずめ)の涙(なみだ)ほどの小遣(こづか)いのみだ。妻(つま)はパートに出(で)ているので、自由(じゆう)に使(つか)える金(かね)は持(も)っているはずだ。でも、どうやったらこんなにため込(こ)むことができるんだ。いつも、家計(かけい)が苦(くる)しいって言(い)ってたのに…。
封筒(ふうとう)の中(なか)を覗(のぞ)いてみると、三十万(さんじゅうまん)くらいはありそうだ。……ここは、何枚(なんまい)かいただいてもいいかもしれない。私(わたし)の頭(あたま)に、悪(わる)い考(かんが)えが浮(う)かんでしまった。
そうだよなぁ。少(すこ)しぐらいもらっても、ばちは当(あ)たらないはずだ。
だが、私(わたし)は思(おも)い止(とど)まった。妻(つま)は几帳面(きちょうめん)な性格(せいかく)だ。きっちり家計簿(かけいぼ)をつけていて、誤魔化(ごまか)すことなんか…。これは、絶対(ぜったい)に、間違(まちが)いなくばれる。もし、そんなことになってしまったら…。私(わたし)は、そう考(かんが)えただけで背筋(せすじ)に冷(つめ)たいものが走(はし)った。
私(わたし)は何事(なにごと)もなかったように元(もと)に戻(もど)すと、カップ麺探(めんさが)しを再開(さいかい)した。
<つぶやき>ここは触(さわ)らぬ神(かみ)に祟(たた)りなしということで…。でも、何(なん)に使(つか)うか知(し)りたいよね。
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