みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0123「あこがれの人」

2017-12-19 18:37:40 | ブログ短編

 あたしには、あこがれの先輩(せんぱい)がいる。同じ会社(かいしゃ)の人で、そんなにハンサムとかじゃないけど、真面目(まじめ)でとっても優(やさ)しいの。でも、無駄口(むだぐち)を言う人じゃないから、会社では仕事(しごと)の話しかしたことがない。
 この間、二人だけになった時があったの。あたしが残業(ざんぎょう)してるとき、彼が外回(そとまわ)りから帰って来て…。彼が、ただいま戻(もど)りましたって言ったとき、なんかドキドキしちゃった。だって、あたしだけに言ってくれたのよ。他に誰(だれ)もいないんだから…。
 でも、ダメ。あたし、なに話したらいいのか分からなくて…。お疲(つか)れさまですって、言っただけで後(あと)が続(つづ)かない。彼は自分の机(つくえ)のところに座(すわ)って、書類(しょるい)の整理(せいり)をはじめたの。仕方(しかた)ないから、あたしも仕事してるふりをして…。そんな時よ、彼の方から話しかけてきたの。
「山田(やまだ)さんは、料理(りょうり)とか、得意(とくい)ですか?」
 あたし突然(とつぜん)のとこで動揺(どうよう)しちゃって、
「えっ、あの…。得意というほどでは…。でも、料理するのは嫌(きら)いじゃないです」
 ああ…。なんで得意です、好きですって言わなかったんだろ。もう、バカバカバカ…。
 彼は、そうなんだって言ったきり…。えっ、今のは何だったの? そこで終わりってどういうことよ。何でそんなこと訊(き)いたの? あたしの頭(あたま)の中は??????だらけになって…。彼に聞き返したいのに――。ああっ、そんなこと訊けないよぉ……。
<つぶやき>憧(あこが)れの人の前だと、何も言えなくなるよね。彼の方もそうかもしれませんよ。
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