「ほんとに凄(すご)いのよ」美咲(みさき)は友だちの幸恵(ゆきえ)に言った。
「うちのお母さんって、あたしの思ってること何でも分かっちゃうの」
「えっ、そんなことあるのかな?」幸恵は信じられないという顔をした。
「だって、あたしが欲(ほ)しいなぁって思っただけで、宅配(たくはい)で届(とど)いちゃうのよ。この間だって、地元(じもと)の味噌(みそ)と醤油(しょうゆ)でしょ。それに、あたしが子供の頃(ころ)から大好きだったお菓子(かし)まで入ってたのよ」
「へえ、よかったじゃない。もうなくなりそうだって言ってたよね」
「そうなの。電話(でんわ)しようかなって思ってたところに届いたから、びっくりしちゃった」
「じゃあ、もう大丈夫(だいじょうぶ)だよね」幸恵は嬉(うれ)しそうに訊(き)いた。
「でもね、あたし…。お母さんの手料理(てりょうり)が食べたくなっちゃった。お母さんの作るカレー、もう絶品(ぜっぴん)なのよ。幸恵にも食べさせてあげたいなぁ」
美咲と別れた幸恵は、スマホを取り出して電話をかけた。
「ふるさと便(びん)の吉川(よしかわ)です。いつもお世話(せわ)になっております。実(じつ)は、美咲様がお母様のカレーを食べたいと……。はい、それはもう大丈夫です。当社(とうしゃ)ではオプションサービスで、手料理を温(あたた)かいままお届けすることもいたしております。……はい、ありがとうございます」
<つぶやき>故郷(ふるさと)から届く荷物(にもつ)には、家族(かぞく)の愛が詰(つ)まっています。運ぶ人も思いは同じ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。