みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0119「初めての笑顔」

2017-12-13 18:45:40 | ブログ短編

 うちのクラスには、ちょっと変わった女の子がいた。誰(だれ)とも友だちにならず、いつも一人でいるのだ。無駄(むだ)なおしゃべりとかしないし、彼女の笑(わら)った顔なんか、一度も見たことがない。別(べつ)にいじめられているわけでもないのに、こんなんで楽(たの)しいことあるのかなぁ。
 学校(がっこう)の帰り道。いつもの川沿(かわぞ)いの道(みち)を歩いていると、土手(どて)の芝生(しばふ)に制服姿(せいふくすがた)の女の子が座(すわ)っていた。よく見ると、それはあの子だ。何でこんなとこにいるのか。彼女の家は、たしかこっちの方角(ほうがく)じゃないはずなのに。僕(ぼく)は声をかけるか迷(まよ)った。クラスメイトと言っても、話をしたことなんてほとんど無(な)い。僕は、そっと彼女の後ろを通り抜(ぬ)けようとした。その時だ。彼女が口を開(ひら)いた。「あの雲(くも)、気持(きも)ちよさそう」
 まわりには僕しかいないから、僕に話しかけてきたって誰だって思うよね。僕は思わず、そうかなって返事(へんじ)を返(かえ)してしまった。後で考えてみると、彼女の独(ひと)り言(ごと)だったのかもしれない。でも、返事をしてしまったからには、そのまま素通(すどお)りなんてできない。
「ねえ、山田(やまだ)くんも一緒(いっしょ)に見てかない?」彼女はそう言うと、恥(は)ずかしそうに笑った。
 僕は突然(とつぜん)のことで、どうしたらいいのか戸惑(とまど)っていた。彼女はそれを感(かん)じ取ったのか、
「別にいいのよ」彼女はうつむいて繰(く)り返した。「ほんとに、いいの。もう行って」
 僕は彼女の隣(となり)に座った。なぜそうしたのか分からない。きっと、彼女の笑顔(えがお)をもう一度見てみたいって、思ったからかもしれない。
<つぶやき>女の子の気持ちは、微妙(びみょう)で複雑(ふくざつ)で…。男子には理解(りかい)できないかもしれません。
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