[『機動戦士ガンダム THE ORIZIN ⑮』を買って読んだ]
▼今、いわゆる「ファースト」で呼ばれる『機動戦士ガンダム』の一作目をビデオ等で見ても、あまり面白くない。
と言うか、あまり見る気も起きない。
どうしても、最近の、「ガンダム」シリーズの面白いエッセンスを抽出し、グレードの高い画質で作られた『SEED』シリーズには見劣りする。
だけども、「ファースト」を忠実に描いた、安彦良和によって描かれたマンガ版『THE ORIZIN』は面白い。
「忠実に描いた」と書いたが、このマンガ版を読み始めたときは、かなりの肉付けをしている、だから面白いのだ、などと思ったものなのだが、後からテレビ版の方を見て確認したりすると、その物語の「深み」がちゃんとテレビ版のほうにも語られていたりするのだ。
私は、一方的な時間で支配されている映像版よりも、ゆっくり吟味できるからこそマンガだからこその面白さの再発見なのかも知れないと思っている。
(蘭注)・・・マンガ版では、マンガ版オリジナルの「エピソード0」も丁寧に描かれているが、それがなくてもマンガ版の「深み」は損なわない。
▼最新の15巻では、戦争の停滞期の中で、軍に完全に組み込まれていく主人公達の宇宙戦艦ホワイトベースと、小規模ながらも敵・ジオン軍との戦いが描かれるが、それと寄り添うように、ホワイトベースのメンバーである皮肉屋・カイと、素人スパイ・ミハルの悲恋が描かれる。
テレビ版でも有名なエピソードだ。
戦災孤児のミハルは、幼い妹弟と暮らしていくために、ジオン軍に、連邦軍の動向の情報を売って生計を立てていた。
顔はそんなに美人じゃない。
性格も良くは見えない。
でも、体つきはしなやかだ。
私は、テレビ版を見た小学生の頃から、人物設定が複雑だなあ、と思ったものだ。
アイルランド、ベルファスト・・・。
突然に軍に組み込まれて、組織に属すタイプではないと感じているカイは退艦する。
ミハルは、カイに、町の物売り娘として近づく。
余談だが、かごを下げて、かごの中の物を売る売り子は、いそうでいて、近年の日本にはいない。
私は、東南アジアを旅していて、近づいてくる売り子に対し、いつも、「ミハルみたいだなあ^^」と思うのだった・・・。
さて、カイは、ミハルのたどたどしさに、すぐに「素人スパイ」であることを見抜く。
だが、同時に、ミハルの妹弟への優しさに複雑な気持ちを感じさせられもするのだった。
・・・カイも、ひねくれた皮肉屋である。
簡単には、ミハルへの好感をあらわにしない。
カイは、結局、敵から攻撃を受けたホワイトベースの苦境を見て、艦に戻るのだった・・・。
次の目的地は、はるか彼方のジブラルタル・・・。
艦にはスパイとして、ミハルも乗り込んでいた。
ベルファストに幼い妹弟を残しての密航だった。
艦内で戸惑うミハルを見つけ、カイは自室にかくまう。
ミハルは、無線で、ジオン軍に連絡し、ホワイトベースの行き先などを知らせる。
・・・と、ジオン軍、大西洋上でホワイトベースに攻撃を仕掛ける・・・。
何故、自分が乗っているのに、ホワイトベースを攻撃するの・・・?
ミハルは戸惑い、揺れる艦内を右往左往し、そこに、自分の妹弟と同じくらいの子供が消火活動をする姿をみる。
・・・私、騙されていた・・・。
そして、戦闘態勢に入っているカイに、「手伝わせて、カイさんっ! 私、悔しいんだっ! 私も一緒に戦わせて」と懇願するのだ。
ジオンの潜水艦部隊にふいを突かれたホワイトベースは混乱する。
海上なので、ガンダムも容易には活躍できない。
ジオン軍は、執拗に攻めてくる。
しかし、戦況は次第にホワイトベースに有利になる・・・。
カイも、ミサイル搭載の輸送船で奮闘する。
だが、ミハルははじめての戦場において何も出来ない。
・・・調子良かった攻撃だが、接触不良で発射できなくなった・・・。
「発射台の安全レバーを引けたなら・・・」
「直るのかい?」
喋り方がハスッパなミハルは、「下に行けば、安全レバーがあるんだろ?」と、自分にも出来る仕事ができたので、笑顔でミサイル発射台に向かうのだった。
・・・そして、爆風に吹っ飛ばされるのだった・・・。
▼・・・全く戦場が不似合いなミハルは、兵器や機械を前にすると、普通の母親が最新の携帯の使用にもたつくかのような所作を見せる。
それが、ミハルの持つ母性を感じさせ、残されることになる幼い妹や弟の姿をクローズアップさせる。
外界を斜に構えて見て、大人ぶっているカイであったが、ミハルを失い、子供のように泣きじゃくるのだった・・・。
▼私も、電車の中で、泣きそうになった、・・・と言いましょうか、ちょっと泣いた。
(2007/05/26)
▼今、いわゆる「ファースト」で呼ばれる『機動戦士ガンダム』の一作目をビデオ等で見ても、あまり面白くない。
と言うか、あまり見る気も起きない。
どうしても、最近の、「ガンダム」シリーズの面白いエッセンスを抽出し、グレードの高い画質で作られた『SEED』シリーズには見劣りする。
だけども、「ファースト」を忠実に描いた、安彦良和によって描かれたマンガ版『THE ORIZIN』は面白い。
「忠実に描いた」と書いたが、このマンガ版を読み始めたときは、かなりの肉付けをしている、だから面白いのだ、などと思ったものなのだが、後からテレビ版の方を見て確認したりすると、その物語の「深み」がちゃんとテレビ版のほうにも語られていたりするのだ。
私は、一方的な時間で支配されている映像版よりも、ゆっくり吟味できるからこそマンガだからこその面白さの再発見なのかも知れないと思っている。
(蘭注)・・・マンガ版では、マンガ版オリジナルの「エピソード0」も丁寧に描かれているが、それがなくてもマンガ版の「深み」は損なわない。
▼最新の15巻では、戦争の停滞期の中で、軍に完全に組み込まれていく主人公達の宇宙戦艦ホワイトベースと、小規模ながらも敵・ジオン軍との戦いが描かれるが、それと寄り添うように、ホワイトベースのメンバーである皮肉屋・カイと、素人スパイ・ミハルの悲恋が描かれる。
テレビ版でも有名なエピソードだ。
戦災孤児のミハルは、幼い妹弟と暮らしていくために、ジオン軍に、連邦軍の動向の情報を売って生計を立てていた。
顔はそんなに美人じゃない。
性格も良くは見えない。
でも、体つきはしなやかだ。
私は、テレビ版を見た小学生の頃から、人物設定が複雑だなあ、と思ったものだ。
アイルランド、ベルファスト・・・。
突然に軍に組み込まれて、組織に属すタイプではないと感じているカイは退艦する。
ミハルは、カイに、町の物売り娘として近づく。
余談だが、かごを下げて、かごの中の物を売る売り子は、いそうでいて、近年の日本にはいない。
私は、東南アジアを旅していて、近づいてくる売り子に対し、いつも、「ミハルみたいだなあ^^」と思うのだった・・・。
さて、カイは、ミハルのたどたどしさに、すぐに「素人スパイ」であることを見抜く。
だが、同時に、ミハルの妹弟への優しさに複雑な気持ちを感じさせられもするのだった。
・・・カイも、ひねくれた皮肉屋である。
簡単には、ミハルへの好感をあらわにしない。
カイは、結局、敵から攻撃を受けたホワイトベースの苦境を見て、艦に戻るのだった・・・。
次の目的地は、はるか彼方のジブラルタル・・・。
艦にはスパイとして、ミハルも乗り込んでいた。
ベルファストに幼い妹弟を残しての密航だった。
艦内で戸惑うミハルを見つけ、カイは自室にかくまう。
ミハルは、無線で、ジオン軍に連絡し、ホワイトベースの行き先などを知らせる。
・・・と、ジオン軍、大西洋上でホワイトベースに攻撃を仕掛ける・・・。
何故、自分が乗っているのに、ホワイトベースを攻撃するの・・・?
ミハルは戸惑い、揺れる艦内を右往左往し、そこに、自分の妹弟と同じくらいの子供が消火活動をする姿をみる。
・・・私、騙されていた・・・。
そして、戦闘態勢に入っているカイに、「手伝わせて、カイさんっ! 私、悔しいんだっ! 私も一緒に戦わせて」と懇願するのだ。
ジオンの潜水艦部隊にふいを突かれたホワイトベースは混乱する。
海上なので、ガンダムも容易には活躍できない。
ジオン軍は、執拗に攻めてくる。
しかし、戦況は次第にホワイトベースに有利になる・・・。
カイも、ミサイル搭載の輸送船で奮闘する。
だが、ミハルははじめての戦場において何も出来ない。
・・・調子良かった攻撃だが、接触不良で発射できなくなった・・・。
「発射台の安全レバーを引けたなら・・・」
「直るのかい?」
喋り方がハスッパなミハルは、「下に行けば、安全レバーがあるんだろ?」と、自分にも出来る仕事ができたので、笑顔でミサイル発射台に向かうのだった。
・・・そして、爆風に吹っ飛ばされるのだった・・・。
▼・・・全く戦場が不似合いなミハルは、兵器や機械を前にすると、普通の母親が最新の携帯の使用にもたつくかのような所作を見せる。
それが、ミハルの持つ母性を感じさせ、残されることになる幼い妹や弟の姿をクローズアップさせる。
外界を斜に構えて見て、大人ぶっているカイであったが、ミハルを失い、子供のように泣きじゃくるのだった・・・。
▼私も、電車の中で、泣きそうになった、・・・と言いましょうか、ちょっと泣いた。
(2007/05/26)