ヒグラシ

それは、昨日の夕方でした。
久しぶりに、ヒグラシの声を聞いたのです。

早朝や夕方、このあたりの森の中に『カナカナ』と鳴くヒグラシ。
その透き通るような声がとても好きなのですが、
６月から８月までの３カ月の間、山梨を離れていることもあって、
その声を聞く機会が少なくなりました。

北海道でも、ヒグラシの声を聞くことは滅多になく、
少し寂しく思っていましたので、
昨日は、ちょっと嬉しい気持ちになっていました。

ところが、その声を、今日もまた聞くことができたのです。
夕方から雨という予報が出ていましたが、パラパラと降った程度。
その雨が降った後、『カナカナ』と聞こえてきました。
もしかすると、昨日と同じヒグラシかもしれません。

しっとりとした森の空気が、ヒグラシの声を一層引き立てていて、
物悲しさが漂います。
それでも…？　それだから…？　その声が大好きです。

この森の中も、１０年ほど前には、セミといえばヒグラシの声だけでした。
でも、森の開発が進み、その開発が比較的近くまできた頃からは、
ヒグラシの声がぐっと少なくなって、
ジージーとなくセミの声も聞こえるようになっていたのです。
人の手で、森の生態系が変わっていくのを寂しく思っていました。

今日、ヒグラシの声を久しぶりに聞き、胸にジーンときたのは、
『人』が壊していく自然に対して、申し訳なさを強く感じたからだと思います。
『人』によって生きる場所、生き方を変えざるを得ないモノ言えぬ小さな生き物達。
私達『人』を、どうぞ許してください。