海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ゴア元副大統領曰く、ブッシュは変節した右翼過激主義者」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年05月31日 | アメリカの政治・経済・社会
 アル・ゴアは、ジョージ・ブッシュ大統領を厳しく批判し、現在のアメリカ行政府を「変節した右翼過激主義者の集団」だと述べた。
 今日のガーディアン紙との会見で、元副大統領は、自分自身を「回復中の政治家」だと述べた。だが、彼が以前にグローバルな温暖化の脅威についてキャンペーンしていたときよりも、もっとはっきりと政治的論争に乗り出している。
 2000年の大統領選挙で負けて以来、自分の政策が左にシフトしたということを否定しながら、「だが、われわれが、今権力を握っている変節した右翼過激派集団を持っているとすれば、物事すべてが右よりなのだ」とゴア氏は言った。
 だが、彼は自分は「再び大統領候補になろうとは思わない」と主張し、はっきりと別の路線を除外することを拒否した。なんらかの出来事が彼の決心を変えるかと尋ねると、「それはありえない」と彼は言った。
 ガーディアン紙の文芸祭りに現れたゴア氏は、気候変動の危機を詳しく述べた『不便な真実』という新著を奨励している。
 彼が新しいレベルの注目を浴びたことによって、何人かの民主党員は、彼をもう一度大統領にしようと呼びかけている。他の民主党員は、ゴア氏は、2000年のキャンペーンにおけるのと同じレベルの情熱を示さなかったと怒って応じている。
 彼はあのキャンペーンの間、彼のコンサルタント達の言うことに余りに率直に従いすぎたことを認めた。
 その後の年月、彼はブッシュ政権の批判者であった。大抵の民主党議員がイラク戦争を支持したとき、彼はそれに反対した。もっと最近では、彼は情報機関による電話盗聴行為に関して「政府による粗野で過度の権力行使」を非難した。
 インタービューで、ゴア氏は、原子力発電に関してブレア首相からも距離を置いた。ゴア氏は、「それがもっと大きな役割を演じることについて懐疑的である」と述べた。原子力発電は、英国や中国では演じる役割があるかもしれないが、地球温暖化に対する戦いにおいて「銀の弾丸」ではないだろう。
 米国では、ゴアの環境保護キャンペーンは、右翼陣営からの反発を招いた。彼らは彼をデマをまき散らす男だと非難した。「競争力ある企業」研究所というシンク・タンクが提供した一連のテレビジョン広告は、「二酸化炭素の排出は、アメリカの生産性と進歩の証拠」だと主張した。
 大統領戦への復帰の可能性に対するゴア氏の態度は、未知のままである。(以下省略)
[訳者の感想]2000年の大統領選では、ゴアとブッシュのどちらが勝ったのかしばらく不明でした。もし、あのときゴアが勝っていたら、世界は現在とは大部違っていただろうとおもわれます。3年後の大統領選に出でたとして、ヒラリー・クリントンに勝てるかどうか。
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「天安門の母達、天安門事件の補償を要求」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年05月30日 | 中国の政治・経済・社会
北京発:「天安門の母達」は諦めない。1989年6月4日の虐殺から17年経ったが、70才の元哲学講師であるディン・ジリンに率いられた殺された者達の家族の会は、公開状によって名誉回復と損害補償とを要求している。彼女は、中国政府がデモ隊に対して人民軍を投入したとき、非人間的な犯罪を行ったと、中郷政府が認めることを要求している。彼女は、更に当時の出来事に対して責任がある者達の責任を問うために、調査を要求している。「中国が現在その平和的な転換の重要な局面にあるので、6.4事件の新しい評価は、党指導層の日程に上がっている」と彼女は言う。「どれほど長くかかろうとも、問題解決の時は必ず来る。」
2000年以来「天安門の母達」と称する遺族会の会員126人は、米国の人権組織である「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」を通じて公表された公開書簡に署名した。彼女らは中国国内で厳しく監視され孤立した団体を解散させようとする役所の圧力に抵抗している。母親達は毎年の請願書や書簡によって、1999年には裁判所に提出した告訴状で北京政府の禁止を繰り返し突破した。中国政府は、胡錦涛主席による指導の下でも、人民解放軍の助けを借りて「反革命的な反乱」を鎮圧したとき、政府は正しく行為したのだという判定に固執している。
母親達は、自分たちが和解を求めているのであって、復讐を求めているのではないと強調している。彼女達は、北京政府が17年後に、彼女達と6.4事件の犠牲者を監視し、行動の自由を制限することを止めるように要求している。彼女達は、記念日に自分たちの哀悼を妨げられることなく、公に告知したいと望んでいる。この運動の創始者であるディン・ジリンの17才の息子は、1989年に射殺されたのだが、彼女は、中国国内では本を公刊できず、厳しく監視されてきた。彼女は2005年に香港で『6.4事件の犠牲者を探して』と題する著作を刊行した。417ページにわたって、彼女は家族によって突き止められた186名の犠牲者の生涯を描写した。何人の人間が天安門事件で犠牲となったかは、国家秘密である。
[訳者の感想]これも『ヴェルト』紙の中国特派員であるジョニー・エルリング記者の書いた記事です。天安門事件の犠牲者の遺族達がどれほど苦労して犠牲者の名誉回復と補償とを求めているかが分かります。
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「被害者は、エイズの薬を処方された」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2006年05月29日 | 犯罪
 ベルリンの官庁街で起きた狂気の犯行の犠牲者は、二重のトラウマに罹っており、一種のショック状態にある。一方では、彼らは刺し傷に苦しんでおり、他方でナイフで刺された際、HIVに感染したかもしれないという不安に悩まされている。警察の発表によると刺された人の中にHIVの患者がいた。「負傷者が必ずHIVに感染しているとは限らないが、感染してないとは断言できない」と警察は言っている。ラジオ放送を通じて、該当者や、救助者は、HIVの検査を受けるように要求された。28日の正午までに、フィルヒョウ病院とシャリテ病院で56人が検査を申し込んだ。彼らのうち28人は、直ちに抗HIV薬を投与された。
この薬は投与が早ければ早いほど、それだけ一層効果がある。この薬を飲むことで、エイズになる危険が80%ぐらい低下する。6ヵ月後の検査で、患者は体内にエイズ・ウイルスがいないという確信をもつことができる。「総じて皆非常に落ち着いている」とシャリテ病院の広報員キルスティン・エンデレは報告した。
16才の犯人は上着もズボンも白であったが、事件の晩泥酔していた。彼は友人達と、他の50万人の光のページェントの観客と同様、新しいベルリン中央駅の完成式を見ていた。警察によると、彼はグループから分かれ一人の知人と行動したが、その後で喧嘩なったらしい。この基幹学校生は、知人の持っていた携帯電話を奪い取り、彼を殴った。そのすぐ後で狂気の犯行が始まった。16分後にようやく民間警備員によって犯人は取り押さえられた。その間彼は1キロほどの間で、ナイフで35人の通行人の背中、腰、腹などを刺した。数名は、重傷だったので緊急手術が必要だった。犯行が行われた時刻は、晩の11時30分から46分までであった。この時間帯、道路上や歩道上は通行人で埋められていたので、犯行現場の非常に近くいた人でも犯行に気付かなかった。ベルリン警察署長のゲルト・ノイベックによるとかなり多くの被害者は、彼らが背中を刺されたのに気付かず、しばらく経って、痛みが取れないのに気付いた。
ノイベックの言うところでは、容疑者がある女性の腹部を殴打した際に、警備員によって逮捕されたと言う。彼の動機は全くわからない。
16才の少年がどんな性格だったかは、まだ判定できない。彼の兄は、「あいつは愛すべき人間だ」と述べた。この少年は、ガールフレンドのために詩を作ったり、甥に対しても親切だった。容疑者の父親は、事件を聞いて動揺している。「自分の息子の犯行をどう説明したらよいか分からない」と『ベルリン・モルゲン・ポスト』紙の記者に述べた。(省略)
検事局によると容疑者は28日午後までに一切しゃべっていない。「彼は多量の酒を飲んだせいで、記憶能力が失われている。」数名の証人は、彼が犯人だと述べており、犯行に使われたナイフも彼が所持していた。(省略)
ベルリン中央駅の駅長ハルトムート・メードルンは、日曜日に次のように述べた。「この事件は気がめいる。楽しいお祭りをやろうとしたのに、何かひどいことが起こって、当然気分は落ち込むよ。」駅の広報係りによると、26日の晩は、50万人の人出があり、駅の構内も混雑したので、一時立ち入りを停止した。開場式は、土曜日の午前中に続行された。
[訳者の感想]行きずりに人を刺したり、きりつけるというのは日本でも時々あることですが、起こった場所と時間が問題を大きくしたように見えます。

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「タリバン、領土の獲得を主張」と題する『アルジャジーラ・ネット』の記事。

2006年05月28日 | アフガン問題
タリバンは、アフガンニスタン南部に配置されている国連軍兵士を攻撃すると脅した。
米軍はアフガン駐留の兵士が訓練所の攻撃において、指揮官を含む5名のタリバン戦士を殺傷したと発表した。
米軍は、アフガン南部のヘルマンド州にあるカラ・サク村での金曜日の襲撃の間に殺された人たちの正体を突き止めなかった。
ある声明において、米軍は、次のように述べた。「これらの殺害されたものの中には、タリバン・ネットワークの高位の指揮官がいた。彼らは連合軍とアフガン軍とアフガン官憲と市民に対する攻撃を指揮していた。これは強固な戦術的情報と地上軍と空軍との連携に基づく高度にうまくいった使命であった。」
市民の殺傷や財産への損害についての報告はない。声明によれば、部隊はこの村の中で大きな武器の隠し場所を見つけた。
攻撃は反政府軍による攻撃が増大したことに対して、アフガン南部で先週以来米軍指導で行われた一連の作戦の最後のものであった。
米軍発表とは別に、警察は、金曜日夜、「アフガニスタンの敵」による首都カブールに対するロケット攻撃で、市民2名が殺され、他の2名が負傷したと述べた。
アフガニスタンは、タリバンがオサマ・ビン・ラディンを渡さなかったと言う理由で、2001年末に米軍と北部同盟軍がタリバンを排除して以来、最も激しい暴力に見舞われている。
米軍とアフガン官憲によれば、先週以来、戦闘や待ち伏せ自爆などで300人が殺された。最も多くの死者はタリバン戦士であったが、少なくとも4名の外国兵(タリバンに味方するアラブ人と思われる)と17名の民間人も殺された。
先週の暴力の矛先が向けられたカンダハル地域では、3千人の住民が住居を捨てて避難した。これはタリバン政権の崩壊以来最大の民間人の避難である。
外国軍を追い出し、現政府を打ち負かそうと戦っているタリバンとその同盟軍は、主にアフガニスタンの南部と東部で作戦を展開している。
[訳者の感想]この記事はアルジャージーラ局とロイター通信の記事を結びつけたものです。タリバン軍もヘクマチアル率いる軍も簡単には除去できないようです。住民の間にかなりの支持者がいるのではないでしょうか。ここでも事態はベトナム戦争と似てきているように思われます。
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「不寛容は、イスラム教について無知であることの証拠」と題する『アルジャジーラ・ネット』に載った論説。

2006年05月27日 | イスラム問題
寛容は、キリスト教世界では、反宗教的だと見なされたが、それはイスラム教の主要な部分であった。だが、寛容はもはやムスリムの名誉にはならない。
今日では、あるムスリムは自分自身を「宗教的」であると見なせば見なすほど、それだけ一層寛容ではない。その原因は、イスラム文明が知的に衰退したことにある。
 ムスリムたちは西欧の人々にイスラム理解が欠けていることに不平を言うが、宗教的テキストの解釈におけるこの間違いが、不幸なことにムスリムの心には蔓延している。
 アブドル・ラーマンのキリスト教への改宗、西欧からの大きな圧力によってアフガン政府が彼を死刑宣告から赦免したこと、その影響などは、この混乱を明るみに出した。
 このアフガン人の背教者が精神病であろうとなかろうと、イスラム教の経典や原理に関して言えば、裁判全体がナンセンスである。
 ある人の知的選択を理由にして、その人を殺すということは、信仰と礼拝の自由についてのイスラム的原理の本質に矛盾する。この原理は、『コーラン』と預言者ムハンマドの実践のなかで強調されている。平和がムハンマドの上にありますように。
 自分のイスラム的信仰を変えることは、重大な罪である。それは彼の神との個人的な契約のはなはだしい侵犯である。
 『コーラン』は、イスラムの信仰を変えるものたちを繰り返し断罪しており、最後の審判における厳しい処罰について警告している。だが、『コーラン』は、背教に対する世俗的な罰を定めてはいない。それゆえ、あるムスリムが自分の信仰を変えたいと望むならば、そうさせるがよい。定義によれば、信仰は個人の心から流れ出す。イスラム教は勇敢な信仰者のためにあり、臆病な偽善者のためのものではない。
 信仰が個人の選択と確信の問題であるという点で『コーラン』は、はっきりしている。それゆえ、いかなる強制力もある信仰を受け入れるように、あるいは彼らの信仰を変えるように人々を強制するのに使われてはならない。
(省略)
今日のイスラム文化において最も不幸な現象は、道徳性と合法性との区別がないことである。
「正」と「不正」によって、特定の人間行動を判断することは、相対的に容易である。だが、包括的で実践的であることは、われわれにもっと先へ行くことを要求し、行動が非合法、あるいは不道徳であると判断されるべきかを決定することを要求する。
 この区別は、非常に重要である。なぜならば、人々や機関は、自分たちが間違っていると信じるものに対してどう反応するかを決定せねばならないからである。ある行為は、合法的であるが、非道徳的であるかもしれない。あるいは逆に道徳的ではあるが、違法であるかもしれない。
 イスラム法にいては、道徳性と合法性との間には明白な区別がある。ほとんどすべてのイスラム法は道徳的である。
 その生活で道徳性に忠実であることは、個々の信者の責任である。それは神に対する責任であって、人々に対する責任ではない。イスラム的道徳性を課するために、如何なる強制力も用いられるべきでない。
 その理由は、この種の如何なる強制力も否定的な帰結をもたらすからである。それは個人を神を意識した信者から状態を恐れる偽善者に変えることによって、個人の道徳的良心を堕落させるからである。
 イスラム教は、個人が神に仕える者であることを欲するが、状態の奴隷であることを欲しない。イスラム教においては、あらゆる信仰の問題や個人の行動と選択の問題は、道徳的な性質のものであって、合法的な性質のものではない。(省略)
 不幸なことに今日、多くのムスリムは、何人かの自称「学者」を含めて、道徳性と合法性とを明確に区別しない。
 この知的混乱は、いくつかのイスラム政府が個人的確信や市民の選好の中に介入し、自分たちは神の法を適用しているのだと主張することを可能にしている。こうすることによって、彼らは人々の権利を侵害することによって、自分たちの不法性と無責任性とを覆い隠しているのだ。
 だが、もし、『コーラン』がはっきりと信仰の自由を肯定しているとしたら、なぜ、背教者を殺すことについての議論がおこるのか?
 この問題は、背教に対する処罰として死刑を示唆する若干の「ハディット」(ムハンマドの言葉)についての間違った解釈から始まる。
 混乱の源は、「背教」(riddah)という語は、イスラム教のテキストでは、二つの異なる意味で使われている。第一の意味では、それは私的な背教を意味し、それは知的選択であって、イスラム教では罰の対象ではない。第二の用法では、それは政治的軍事的背教を意味している。それは共同体の社会的平和とその合法的指導者に対する反逆を含んでいる。
 この罪に問われたものは、イスラム法によって、罰することができる。
社会を裏切ることは、すべての神の法と世俗の法の元で処罰可能である。この点では、イスラム法は例外ではない。
 今日アフガニスタンには裏切る政治的指導者や部族の指導者が沢山いる。彼らはイスラム法における高度の裏切りの罪で消されても当然である。
 彼らのある者は、新しいアフガンニスタンの「尊敬される」指導者の中にいる。アブドル・ラーマンは、明らかに彼らの一人ではない。
[訳者の感想]道徳性と合法性との区別がイスラム教にもあるということに基づいて、キリスト教に改宗したアブドル・ラーマンに死刑の判決を下したアフガンの法廷を批判しています。アルカイダやタリバンのイスラム法解釈と違うことは分かりましたが、最後の文章を読むとどうもカルザイ大統領の率いるアフガン政府に対してもかなり批判的であることが分かります。筆者はモハメド・エル・モクタール・エル・シンキティというアフリカ西部の国モーリタニア出身のイスラム学者で現在はアメリカ在住です。

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「中国の軍事力増強に対して国防省は警戒」と題する『シドニー・モーニング・ポスト』紙の記事。

2006年05月25日 | 中国の政治・経済・社会
中国の軍事力近代化についての国防省の報告は、台湾を威嚇し、その重点を東アジアにかける中国の能力に対するアメリカの関心が増えていることを明らかにしている。
 火曜日に発表された報告は、中国が日本との対決を準備し、海軍、空軍およびミサイルの増強を要求していることに対する米軍の内部での恐れに照明を当てている。
「彼らは中国人が日本との海上で対決する姿勢を取りつつあることを憂慮している」とワシントンにある「情報研究と分析のためのセンター」の副所長であるジェームズ・マルヴェノンは述べた。
 多くのアナリストは、中国軍事力の増大が東アジアでの力の均衡を覆すかもしれないというブッシュ行政府の関心を共有しているが、報告による中国軍事費の推定は、いささか懐疑的に対応された。
 国防省は、2006年度の中国の軍事費支出が、1千50億ドル(11兆6550億円)であるとする「防衛情報局」の推定を引用した。マルヴェノン氏は、実際の数字は500億ドル(5兆5000億円)以上ではないようだと言う。
 アナリスト達は、中国の努力が太平洋におけるアメリカ海軍にとって直接の脅威となることを疑っている。「国防省は、中国の近代化が東アジアにおける支配的立場を作りだし、アメリカに取って代わることを目指していると思っている」とケイトー研究所で「防衛と外交研究」の副所長をしているテッド・ガレン・カーペンターは述べた。「それは長期の目標であるが、われわれはそれを年ではなくて十年単位で測らなければならない。」
 報告書は、中国との軍事競争について北京との調和的な関係に対する楽観主義を表現する慎重な言葉でバランスをとっている。
 昨年、報告書は、米国内からのひとわたりの分析と批判の火をつけ、それが逆に中国からの批判と分析の反応を引き起こした。
 今年の50ページに及ぶ記録文書は、台湾ではなくて東アジア全体を攻撃する中国の能力について延々と述べている。それは中国と日本の関係が悪化しており、それが大部分東シナ海にある潜在的なエネルギー備蓄を巡る対立に関係していると指摘している。
 「中国の軍事力増強のペースと範囲は、既に地域の軍事的バランスを危険にしている」と報告書は述べている」と報告書は述べている。
 報告書は、台湾に対して使用されるかもしれない短距離ミサイルを含む過去の中国の軍事力におけるいくつかの拡大を引き合いに出している。
 この報告書は、また、戦闘機の飛行範囲を拡大できる空中給油機の獲得について論じている。
[訳者の感想]アメリカ国防省も中国軍の近代化と増強が東アジアの力の均衡を破る可能性を憂慮しているようです。
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「メルケル首相の中国訪問の収支決算」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年05月24日 | 国際政治
上海:彼女の最初の中国旅行の終わりに、アンゲラ・メルケル連邦首相は、中華人民共和国における宗教の自由と人権のためにもう一つのシグナルを送った。最初のドイツ首相として、彼女は上海で中国におけるキリスト教的信仰の高位の代表者であるアロイジウス・ジン司教を訪問した。
メルケルは、1982年まで27年間牢獄に入れられていた91才の司教に会い、たっぷり半時間個人的な話し合いをした。それに続いて、司教は連邦首相を1千300万都市である上海の中心にある教会を案内した。ジンは、教皇を権威と認めない中国のカトリック教会の司教である。だが、彼はバチカンの祝福を受けている。別れ際に、ジンは、メルケルに、「私はあなたのために常に祈るでしょう」と言った。連邦首相は、流暢なドイツ語を話すジンとの出会いに際して「非常に心動かされた」ように見えた。
連邦首相は、人権に関する中国の国家と党の指導者との対話の決算を引き出した。彼女の相手はこのテーマが出た際、「注意深く傾聴した。」「民主主義と自由は社会にとって役立つという経験は、慎重にしか受け入れられないだろう。なお多くの対話がなされなければならないだろう」と彼女は述べた。
知的財産の保護の問題に関して、ドイツ連邦共和国は、将来とも強調してゆくだろう。彼女は対話において、「われわれは断固と明確にことを進める」ということを指摘した。「技術的ノウハウの保護は、ドイツにおける福祉の確保につながるだろう」と彼女は上海での経済フーラムで述べた。
来るべき数年を見越して、彼女はまた中国との交渉において連邦政府とドイツ企業はより厳しい態度を取るだろうと予告した。「中央ドイツ放送」に対して「われわれは批判的な調子で物を言う勇気をもたねばならない。われわれは何もただでくれてやるつもりはないということをはっきりさせねばならない。台頭しつつある国が普通の価格を支払うことをわれわれは期待している」と彼女は述べた。このことは中国で建設中の「トランスラピッド」にも当てはまる。すでに期待されていたいくつかの契約は成立しなかった。
[訳者の感想]中国は技術援助や経済援助を期待していたようですが、メルケル首相は、その点では譲歩しなかったようです。
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「彼女はわれわれの問題を知っている」と題する『ヴェルト』紙の記事

2006年05月23日 | 国際政治
アンゲラ・メルケル・ドイツ連邦首相の中国訪問は、中国では普通でない注目を浴びている。政府報道官、共産党機関誌、社会科学者、反体制派は、月曜日に、政治的視点では北京の寛容さの限界を綱渡りすることになる彼女の就任初の訪問の跡を緊張して追跡した。街頭の世論調査によると、殆どすべての人が、破産した社会主義政権(ドイツ民主主義共和国のこと)のもとで育ったドイツ首相の訪問について聞いたことがあると述べた。「彼女ならわれわれの問題を知っている」と質問された人の多くが即座に答えた。
北京は今回は他の場合では操作されている報道機関に自由にさせている。どのような期待と恐れをこの権力を握った女性と結びついているかを、一ダースほどの新聞は、全面に押し出した。彼女は自分の東独時代の経験にしたがって、注意深く中国と関わろうとした。そえゆえ、北京の指導層は、政治的な魅力の攻勢で首相の気に入ろうとした。メルケルが政治的な嵐を煽るという心配は、杞憂に終わった。ほっとして、温家宝首相は、メルケル首相が友好的な風をもたらしたと述べた。「コール元首相、シュレーダー首相からメルケル首相に至るまで、ドイツの中国政策には、いかなる変化もない。」
 中国政府は、もっと強硬な調子に備えていた。、「メルケルもブッシュ大統領と同様、人権問題の取り扱いについては具体的であろうとしている」と述べた中国の反体制派の作家ユー・ジエの主張は、中郷政府に警戒を呼び起こした。家庭内教会運動のメンバーであり、ペンクラブのメンバーであるユー・ジエは、二人の中国人キリスト教徒であるワン・イとリ・バイグアンと一緒に、訪米の際、5月11日に驚いたことに、ブッシュ大統領の私的会合に招かれた。中国大使館が抗議したけれども無駄だった。ユー・ジエは、『ヴェルト』紙にその会合について漏らした。彼はブッシュに対して、フランス及びドイツの国家指導者が中国との経済交流にのみ考慮し、人権に対してもはや配慮しないと言う理由で、彼らの弱腰の態度について不満を述べた。ブッシュは彼らに対して、米国はそのようには振る舞わないだろうと保証した。ドイツでも、新しい連邦首相のもとでは事態は変わっただろうと述べた。言葉通りに引用すると、ブッシュは、「私は丁度メルケル首相と電話で話したところだ。私は彼女に、人権問題についての彼女の憂慮を強調するように助言した。彼女は同意したよ。」
『中国ビジネス・ニュース』のような公式の日刊紙は、その読者に対して「メルケルも好ましくない非政府組織や作家にドイツ大使館内で会うだろう」と述べていた。「彼女は中国の社会問題を理解し、市民の政治参加がどうなっているかを知るという関心を持っている。」メルケルは、昨日、4人の社会批判者に会い、特に作家のチェン・グイディとウー・チュンタオ夫妻と会った。彼らが書いた『農民の状況についての研究』は、農村における腐敗を暴露したため、禁書にされた。メルケルの結論は、「中国ははらはらさせるダイナミックな国だ」というものであった。
[訳者の感想]『ヴェルト』紙にしばしば中国に関する記事を寄稿するジョニー・エアリング記者の記事です。メルケルは温家宝首相が招待した晩餐会で人権問題について発言をしたという記事を他の新聞で読みました。彼女は中国への武器輸出禁止は、解除する気はなさそうです。
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「中国の第二の長城」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事

2006年05月22日 | 中国の政治・経済・社会
 ダムは、かってモスクワ大学で水力発電所の建設について研究し、大きな抵抗を押し切ってプロジェクトを実現した李鵬元首相の一番お気に入りの子供である。1998年に李鵬が引退したとき、この巨大な建設プロジェクトは、もはや止めることはできなかった。彼の後継者であった朱溶基首相は、自分はこのプロジェクトとは関わりたくないということをはっきりさせた。
 先週、土曜日、最後のコンクリートが高さ185メートルに及ぶダムの壁に流し込まれ、12年に及ぶダム工事の後、公式の完成が祝われたとき、北京からは高位の政治家はだれもやってこなかった。宣伝は、2008年に稼働を始める予定の世界最大の発電所の建設の一里塚を祝った。
 だが、ダムでは、建設労働者だけが簡単な儀式で祝い、中国の伝統にしたがって、悪しき霊を追い払うために、爆竹を鳴らした。それも必要だった。なぜならば、ダム建設に反対してきた環境保護主義者ダイ・チンは彼の心配が現実になっただけでなく、彼の心配を遥かに越えていると考えている。
 「環境汚染は、建設前にわれわれが想像していたよりもずっと酷い」とダイ・チンは、長さ660キロメートルに及ぶダム湖に沈む町や村々の残滓や取り残された工場や、物資集積所や墓地を引き合いに出して言う。その上、長江はここではもはや以前のように速く流れない。「水質は、季節によっては、都市の近くでは、もはや飲むに堪えない。」
 事情が分かっている党幹部達は、自分たちのためにこっそり井戸を掘ったが、人民には何も知らせなかった。ダムが建設された地点は固い岩盤でできているが、ダム湖の沿岸は大抵は地盤が軟らかいので地滑りが起こった。「これは大きな問題になるだろう。」
 ダムは、致命的な洪水を防ぐことできるという主張は、彼らの目から見ると現実的ではない。ダムの貯水量は、1998年の最後の大洪水を防ぐのに必要だったと推定される容量の10分の1しかない。100万人がダムのために故郷と家を失った。多数の人々はもっと高い山の上に引っ越さなければならず、豊かな農地を失い、自然を破壊したので、結局別の土地に移された。
 移転の費用は党幹部が管理していた。十分な補償金をもらえなかったという該当者の嘆きは終わることがない。「腐敗は明白だ」とダイ・チンは言う。役所も繰り返し捜査し、腐敗した幹部を裁判にかけ、その一人を見せしめのために死刑に処した。「だが、にもかかわらず、腐敗を防ぐことができなかった。」
 「生産される予定の電力も安くはない」とダイ・チンは言う。「長江の電力はもっとも高い。国営の電力供給者は、三峡ダムのために、普通の費用の二倍の費用を払わねばならなかった。会計検査官のヤン・ヤは、「完全な稼働が開始された後10年間に、1800億元(2兆7000億円)の建設費が取り戻されなければならない」と言う。
 外国の専門家は、費用をその2倍に見積もっている。だが、本来、建設費が実際にどれほど高くついたのかを知っている者は誰もいないのだ。ましてや、移住が実際にいくらかかったのか、どのような価値が水中に没したのか、環境破壊がどれほど大きいのかは誰もしらない。
[訳者の感想]公共事業はしばしば採算を度外視するようですが、三峡ダム建設もその一つかもしれません。
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「仮想戦争の隠れた指導者」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年05月19日 | イスラム問題
2001年9月11日のテロから殆ど五年たったが、オサマ・ビン・ラディンはいまなおアメリカ軍の追跡を免れている。「山のライオン」作戦は一月近くパキスタンに隣接したアフガニスタンのコナール州の全体を掃討しているが、今週あきらめのため息と共に終結した。アルカイダの指揮官がそこに前にはいたとしても、もはや彼はそこにはいない。
米国には見守る以外の選択はなかった。先月、アルジャジーラ・テレビで放映されたビン・ラディンの破壊行為の脅しは、ジョージ・ブッシュが勝てない敵がまだ生きていることを思い出させた。彼を捕獲できれば、ブッシュの30%までの支持率を上向かせる力があったのだが。彼を殺すほうがもっと良かっただろうとパキスタン駐在のある外交官は言った。「われわれが彼を生きたままで捕まえた場合の問題を想像したまえ。もう一つのサダム裁判を望むかね?彼にそのような討論の場を与える気があるかね?」
けれども、米国高官と独立のアナリスト達はビン・ラディンを黙らせることは第二の挑戦だということでは意見が一致している。彼の戦闘的なメッセージを黙らせることは、ムスリム世界内部で荒れ狂っている思想の戦いに勝つ点ではもっと重要である。
アルカイダのメディア戦略は、洗練さの度合いを強めている。イラクとアフガニスタンにおけるムジャヘディンの攻撃や「裏切り者」の斬首を描写するビデオやDVDは、中近東の市場では一般的な流行となった。もっと最近の現象は、アフガンとパキスタン国境にある150のFMラジオ局の出現である。ペシャワール在住の情報提供者によれば、「それらは西欧に対する憎悪とジハードのメッセージをまき散らしている。」
だが、これはより広範な問題のほんの一部に過ぎないと、国防次官ピーター・ロッドマンは今月米国議会で述べた。国防省のチームは、宣伝の演説、グラフィックス、訓練マニュアル、スライドなどを作り出すのに使われている世界中の5千のインターネット・サイトをモニターした。
アルカイダとその連携者・支持者達は、西欧のマーケッティング組織がするように、特定の国を狙っていると国防次官は言った。この中には、インターネットの作品をロシア語やトルコ語に翻訳する仕事が含まれている。国務省の言うところでは、インターネットが「テロリストの待避場所」のリストを載せている。その理由は、それが「敵にそれ自身の公的メディアの窓口を作り支える力を与えているからである。」
アルカイダが暴力的な直接行動と結びつけられているのに対して、その作戦能力は2001年以来低下したと情報筋は述べている。これと対照的に、「反十字軍的抵抗」の推進者としてのその有効性は、増進した。この進化の中で、ビン・ラディンは、仮想戦争の隠れた指導者という役割を演じている。
雑誌『国益』に執筆しているアラブ世界の専門家であるマーク・リンチは、米国は、外交政策を強調しているにもかかわらず、複数メディアを用いたジハードの猛攻撃に対抗するのに失敗していると言う。だが、もっと基本的に、米国は、自分がアルカイダの改宗行動の最終目標ではないということを理解しそこねている。
 アルカイダの目標は、共有されたイスラム的アイデンティティについての過激で教義的に純粋な概念に基づく「単一の政治的ビジョンをアラブ世界」に押しつけることであったとリンチは言う。そうしようと戦う内に、アルカイダは、穏健イスラム主義者や世俗的アラブ・ナショナリストやしばしば敵対的なアラブ・ムスリム系メディアからの反対に直面した。西欧の介入ではなくて、彼らの抵抗こそが、テロを非合法化し、過激主義を打ち負かす最善の希望を与えている。
「イスラムとの現実のイデオロギー上の闘争において、米国は相対的にマージナルな自滅的なプレイヤーである」とリンチ教授は言う。「次の段階は、アラブ人が彼ら自身の間で持っている現実の主張に注意を払い、アルカイダを批判する者達に彼ら自身の戦争に勝つための余地を認めることである。」
[訳者の感想]『ガーディアン』紙にすぐれた論説を寄稿するサイモン・ティスドール氏の論説です。イデオロギー闘争では、アメリカはむしろ守勢に立っており、穏健派ムスリムや世俗的アラブ・ナショナリストの方がアルカイダの偏狭な思想を打破する力を持っているという主張だと思われます。

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「トルコの法廷で、弁護士が裁判官を射殺」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年05月18日 | イスラム問題
イスタンブール発:昨日、一人のトルコ人の弁護士が「私はアラーの戦士だ」と叫んで、トルコの最高行政法廷でピストルを発射、判事の一人を殺し、他の四人を傷つけた。
目撃者によると、裁判所の第二法廷でピストルを発射した際に、その弁護士は「アラーは偉大なり」と叫んだ。
イスタンブール弁護士会の認証をもつこの弁護士は、自分が判事を攻撃した理由は、法廷がある女性に彼がスカーフを着けているという理由で校長になることを止めたからである。判事の一人、ムスタファ・ユセル・オズビルギンは、頭部を打たれて病院で死亡した。
オズビルギンを含む四人の判事は、二月に勤務外でスカーフを被っていた小学校教師の昇進に反対の投票をした。五番目の判事は、昇進に賛成の票を投じた。
裁判所の決定は、レセプ・タイイップ・エルドガン首相によって批判された。彼の率いるAK党は、政治的イスラムの政党である。エルドガン首相は昨日、拳銃発射を非難した。
この攻撃は、宗教心のあるトルコ人がモスレムが多数を占めるのに厳格に世俗的な国にいてフラストレーションを感じているという劇的な兆候である。
この国の次第に進行するイスラム化に対する憂慮を表明したアハメト・ネクデト・セゼルは、この事件を「トルコ共和国における黒点」であると述べ、「圧力と脅迫とはトルコの裁判官をおじけづかせないだろう。裁判官は世俗的で民主的な共和国に義務づけられた憲法上の義務を遂行するだろう」と付け加えた。野党のデニズ・バイカルは、「この事件はトルコが非常に危険な場所に引きずられていることを示した」と述べた。
エルドガンの妻のエミネは、スカーフを被っているという理由で大統領の公務に出席することを禁じられているが、彼女は、この禁止令が撤回されることを要求した。
先週、「アラーは偉大なり」と叫んだ襲撃者は、トルコの最も頑固な世俗主義的新聞社に爆弾を投げた。
ムスタファ・ケマル・アタチュルクが1923年にオスマン帝国から近代的なトルコ共和国を作り出したとき、彼はスカーフを被ることを禁止したのだが、この禁止令は、今日トルコでは、最も不和を生じる問題の一つだと見なされている。来年の大統領と議会の選挙を控えて、この問題はイスラム主義的政府と世俗主義的体制との間の摩擦の源泉となった。
トルコの世俗主義的体制の言論を代表する『クムフリエット新聞』は、最近、それが台頭するイスラム主義だと見なすものを警告するキャンペーンを行った。トルコの世俗主義の擁護者であると称するヒルミ・オズコク大将は、昨日の発砲事件を「憎悪に満ちた不快な攻撃」であると公然と非難した。
[訳者の感想]この記事を読んで、トルコでは、軍隊の方がケマル主義に忠実で、世俗主義的であるのに対して、エルドガンの率いる政府の方がイスラム主義的であることが良く分かりました。
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「キューバ、中国に海底油田の掘削を許可」と題する『アルジャジーラ』局の記事。

2006年05月17日 | 国際政治
 フィデル・カストロの政府は、中国およびカナダの会社と協同で36基の新しい油井を建設する仕事を増やしたと政府高官は述べた。
 キューバ政府は、一般的には石油問題に関しては寡黙であるが、今週、キューバ共産党の機関誌『グランマ』は、キューバがハヴァナの東にあるヴァラデロ近くで最も深い油井を掘削したと報道した。外交筋によると、インド、ノルウエー、スペインの会社がメキシコ湾で油田の探索を始める予定である。
 このニュースは、米国の政治家達を怒らせた。彼らは米国のキューバに対する経済制裁が彼らを潜在的に儲かる事業から閉め出していると述べた。
 二人の共和党の政治家は、米国政府が要求する特別の許可なしに、米国の会社が契約に参加し、キューバに旅行することを可能にする法案を提出した。
 共和党上院議員ラリー・クレイグは、「米国の公衆は、この国が深刻なエネルギー危機に直面しているのに、中国やインドやカナダやスペインやノルウエーが米国の海岸から50マイルしか離れていないところで油田を探索したり、油井を掘削したりしているのを見たら、ショックを受けるだろう。
 キューバ政府は、米国の会社も油井掘削事業に参加するように招待したが、成立後44年経っている経済制裁に妨げられた。
 「国家安全保障戦略会議が指摘するように、中国は世界中で資源に投資している。彼らはわれわれが競争さえできないわれわれの裏庭で資源に投資している」とクレイグ議員は言った。
[訳者の感想]中国はアメリカの鼻先でも油井を掘り始めたようです。東シナ海の油田問題でも簡単に譲歩する気配はありません。
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「米軍移転の負担を分け合う困難」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年05月14日 | 外交問題
米国と日本はかれらの軍事同盟がアジア太平洋地域で最も重要であるということを世界に思い出させる機会を無駄にすることは稀である。
だが、第二次世界大戦以来日本に駐留する米軍の再編成の詳細を解決する段になると、東京とワシントンは、困ったことに、金が外交的意図と同じぐらい声高にものを言うのを発見しつつある。
世界の二つの最大の経済大国が数千人の海兵隊員を日本から米国へと送還するためのうまい汁を誰が払うのかについて言い争っているが、過去数日が示しているように、最低線よりも遥かに多くのものが問題となっている。
去年10月、両国は8千名の海兵隊員を沖縄からグアム島に移転することに合意した。
多くの沖縄島民にとって、海兵隊員とその家族の引っ越しは早すぎるということはあり得ない。この島は日本の全領域の一部であるが、在日米軍総数3万5千人の75%を抱えている。
 米軍の足跡を削減する試みにおいて、日本は友情が高くつくということを学んでいる。
 米国は、海兵隊のグアム島への移転費用が100億ドル(1兆1千億円)かかるだろうと見積もっており、日本が勘定書の75%を負担することを要求している。これまで日本は、30億ドル(3千300億円)支払うこと、さらに残り30億ドルは低利の借款で供与することに同意した。
 小泉政権は両国同盟に対する責任と日本の納税者に対する義務とを天秤にかけるねばならない。日本の納税者は世論調査によれば、政府が彼らの客の帰国費に一文も出すべきでないと望んでいる。
 両者は、海兵隊移転に決着をつけるデッドラインである3月31日を既に逃している。4月中旬に東京で行われた協議は余り進展しなかった。
 五月の初頭に起こりそうな取引についての米国の交渉者の肯定的な声は、一方(日本)が両国の間にある重大なキャップと表現しているものの兆候を隠すことは出来なかった。
法的にはそうする必要はないのだが、日本は既に米軍基地に対して年額2,350億円を支払っている。それは駐留経費の70%に相当する。
 多くの日本人は追加の要求が我慢できないと思っている。
「この要求は度はずれたものだ」と『ジャパン・タイムズ』は社説で述べた。「米軍施設と人員を米国の領土内に移転する費用を相手国政府に出させるということは殆ど前代未聞だ。」同様のドイツ駐留の米軍の再編は、米国政府が負担した。批評家達は40億ドルと見積もられたプロジェクトのために結局二倍以上の費用がかかるということがどうして可能なのかと質問した。その答えは、日本は再配置のための費用を出せと頼まれているのではなく、グアム島における家屋の建設や海兵隊の新居のための設備の費用もだせと頼まれているということであるようだ。もし日本人が譲歩すれば、アメリカ人達は幸せだと考えるかもしれない。グアム島への移転は、結局、太平洋におけるアメリカのプレゼンスを強化しようとするブッシュ政府の努力の一部なのだから。(以下省略)
[訳者の感想]4月18日にジャスティン・マッカリー記者が書いた記事です。アメリカの極東戦略の中に日本はますます組み込まれているようです。小泉政権は結局少し値切るぐらいしかできないのではないでしょうか。
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「大抵のイスラエル人は、国内のアラブ人の移住を希望」と題する『アルジャジーラ』局の報道。

2006年05月13日 | 国際政治
最近の世論調査によると、イスラエル人の62%は、政府が人口の五分の一を占める130万人のアラブ人がイスラエルから出て行くように説得することを望んでいる。
イスラエルのアラブ人は、1948年のイスラエル建国に続く戦争中に排除されないか、逃げ出さなかったパレスチナ人とその子孫からなっている。
「イスラエル民主主義研究所」によって公刊された調査結果は、イスラエル社会の中にある分裂を際だたせている。
 回答者の14%だけが、ユダヤ人とアラブ人の間の関係は良好であると言っているが、29%はイスラエルの運命を決める決定にはユダヤ人の多数が必要だと言う意見に同意している。
 この報告書は、36の民主国家の腐敗度調査で、イスラエルを20番目にランク付けているが、これは2004年の調査よりも6位下がっている。
 2006年にはイスラエルはエストニアと台湾の間にあるが、フィンランドとニュージーランドがもっとも腐敗していない国にランクづけられている。
 政党とイスラエル議会は、この国では最も信用されない公的制度であるが、回答者の79%は、軍が最も信用できると答えている。
 2,004人のイスラエル人を対象とする調査にはユダヤ人とアラブ系市民が含まれているが、彼らの警察に対する信用は、2004年には66%あったが、2006年には44%に下がっている。メディアに対する信頼度も同様である。
 この報告書は、昨年夏、ガザ地区からのイスラエル入植者の強制退去の際、警察に抵抗したユダヤ人入植者に対する支持が増えていることを示している。
 昨年は、回答者の70%がガザ地区の移住者を退去させるという政府の命令に逆らうことは間違いだと答えたが、今年はそれが58%に減った。
 「数に減少があることは明白だと私は思う」と報告書の著者でハイファ大学の政治学教授であるアシャー・アリアンは言う。「非民主主義的な態度の底流があるということは本当に困った傾向だ。」
[訳者の感想]ユダヤ人の多数はアラブ人がイスラエル国家から出て行くことを望んでいますが、少数派のユダヤ人はイスラエル国家の中でアラブ人と共生することが可能だと考えているようです。もともと現在のイスラエルにはユダヤ人以外に遥かに多数のパレスチナ人が住んでいたのだから、彼らを追い出すのは間違っていると思います。
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「アフマディネジャド、ブッシュにキリスト教的価値について講義」と題する『ニューヨーク・タイムズ』記事

2006年05月11日 | 国際政治
 教師の口調と信者の自信をもって、イラン大統領の最近のブッシュ大統領に宛てた書簡は、西欧の民主主義は失敗したし、イラク侵攻や囚人に対するアメリカの扱いやイスラエル支持は、キリスト教的価値と折り合わないと述べている。
 イランの核開発計画を巡って西欧諸国と対立するはめになったマームード・アフマディネジャド大統領は、月曜日に18ページに及ぶ考察をした。
 書簡は、アメリカ高官によって重要でないとして片づけられたが、それはテヘランのものの考え方についての興味ある窓であることが分かったという人もいる。
 その書簡は、米国との政治的論争の一覧表を展開している。それはまた自分の宗教的信念について公にしているブッシュ大統領にキリスト教的価値に照らして自分の行動を吟味することを要求している。
 「われわれが見ているのは、世界中の人々が全能の神である主要な焦点に向かって押し寄せているということだ」とアフマディネジャドは書いている。「疑いもなく神に対する信仰と予言者の教えを通して、人々は彼らの問題を克服しようとしている。あなたに対する私の質問は、あなたは彼らの仲間入りをしたいかということだ。」
 広範にわたる書簡は、完全に宗教的な用語で縁取りされ、反米主義のポピュリスト的な宣言を展開している。それは中近東の人々の間にイラン大統領の信奉者を作りだしたもののをいちいち列挙している。彼は自分自身をムスリムの擁護者としてだけでなく、アフリカやラテン・アメリカの抑圧された人々の擁護者でもあると提示している。
 だが、彼の主要な焦点はシーア派イスラム教にとって中心的な宗教的原理である。特に公正な支配者と抑圧に対する戦士という概念である。彼は自分のほうが優位にあるのだという調子で、アメリカの偽善の実例を展開するのに問答形式を用いている。
 「私の基本的な質問はこうだ。世界の他の部分と相互作用するこれより良い方法はないか?今日、何億というキリスト教徒や何億というムスリムやモーゼの教えに従う何百万の人々がいる。すべての神的な宗教が共有し、敬う一つの言葉がある。それは一神教であり、あるいは唯一の神があって他の神は存在しないという信念である。」
 それは何ら特別な提案をしていないが、書簡は一神教の諸原理に基づく議論の共通の地盤を確定しようとしている。
 「もし米国がその手紙を退けるなら、それは大きな間違いであるだろう。それを哲学的宗教的歴史的書簡だと考えるならば、ブッシュ大統領がそれに返答するというのは良い考えだ」とテヘラン大学の政治学教授ナセル・ハディアンは述べた。
[訳者の感想]ブッシュ大統領はこんな宗教問答には全く関心がなさそうです。イランの大統領には相手がどういう人間であるかが分かっていないように思われます。アメリカはこれはイランの時間稼ぎの一種だとしか受け取っていません。中世だったら、イスラムの支配者がこんな手紙を寄越したら、例えば、13世紀前半、シチリアのパレルモに居城があった神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒII世ならもう少し真面目な応対をしたに違いありません。現代の西欧の政治家の多くはもはや宗教的哲学的論争には興味がないのです。イラン大統領にとっては、お気の毒というよりありません。
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