海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「オバマのカトリーナ」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』の記事。

2010年05月29日 | 災害と事故
2010年5月28日:金曜日にオバマ大統領は4月20日以後、二度目に、災害地域の現状を見るために、災害地域のルイジアナ州の石油掘削基地「ディープウオーター・ホライゾン」に行った。彼は飛行機でニュー・オルリーンズへ行き、ミッシシッピー河河口への旅行時間を節約した。環境汚染危機は、とっくに、ホワイト・ハウスに届いていた。ブッシュ大統領が2005年8月に起こったハリケーン「カトリーナ」の災害に対して反応したよりも、オバマの反応のほうが良かったとは言えないというのが世間の意見になっている。メディアは、この災害を、今や「オバマのカトリーナ」と呼んでいる。世論調査では、10人中6人は、「石油汚染を食い止めるための政府の仕事ぶりは拙劣であるか、あるいは非常に拙劣だ」と答えている。
 爆発事故から5週間以上経った金曜日、政府は、どれぐらい多くの原油が掘削パイプから噴出したかについて独自の見積もりを公表した。それによると、1日に1万2千バレルから2万5千バレルの原油が出ている。石油会社のBPは、最初、一日あたり、1千バレルと述べていたが、4月29日には、それを五倍に増やした。しかし、実際は、それよりも更に2倍から5倍ぐらい多い量の原油が噴き出している。(中略)
 政府官僚がメキシコ湾の災害を「国家的な規模の事故」だと宣言したのは、事故発生後9日後だった。国家財政から無制限に費用を支出し、災害防護局と防衛省の道具や装備を十分に投入しうることが前提となった。
 しかし、今日まで、原油が海岸に到着し、沼沢地帯に侵入するのを防ぐためのビニール防護幕が欠けている。人工的な砂バリアーで出来るだけ海岸から離れたところで原油を食い止めようというジンダル・ルイジアナ州知事の4週間前の提案を、米国政府は環境と調和するかどうかまだ検討中である。(後略)
(訳者の感想)自然災害や人為的災害に対する政府の対策というのは、どこの國でも後手後手に回るもののようです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ドルは高いが、ユーロは安い」と題する『シュピーゲル・オンライン』の記事。

2010年05月24日 | アメリカの政治・経済・社会
 米国のギリシャは、カリフォルニアである。その財政状態は非常に悪いので、社会保障費を削られた市民達は、州の刑務所に入っている囚人達をうらやんでいる。「彼らは、私達よりましな社会保障を受けている」とロサンジェルス出身の版画家ジェームズ・ジャクソンは、ののしる。「刑務所に入ったほうがましだよ。」
 これは勿論ちょっと行き過ぎているが、米国では、財政難は、カリフォルニア州の州民の手におえなくなっているという心配が増大している。「ヨーロッパの状況は、米国の状況との比較を迫っている」と「ゴルドマン・サックス」のアナリストのアレック・フィリップスは言う。
『ニューヨーク・タイムズ』は、既に「ギリシャの悲劇」に言及し、『ウオール・ストリート・ジャーナル』は、「ギリシャとカリフォルニアのどちらがはじめに債務支払い不能を宣言するか」という問いを出した。
 昨年、人口が最も多いカリフォルニア州は、その巨大な財源不足を緊急地方債と80億ドルのワシントン政府からの資金援助で補った。シュヴァルツェンエッガー州知事と州議会は、数万人の学校教員の首を切り、社会保障費を削減し、国立公園を閉鎖し、税を増やした。だがもうすでに財政には次の穴があいている。財政赤字は、191億ドルから199億ドルに達する見込みだ。最近、シュヴァルツェンエッガー州知事はワシントン政府に国家援助を依頼した。同時にカリフルニア州は、土地税の増額に反対する決議を行った。それによって、収入を増やす可能性がなくなった。
勿論、日の良く当たる州は、ギリシャとは別の状況でゲームをやっている。経済的な総生産では、カリフルニア州は、ギリシャの7倍に達する。カリフォルニア州の赤字は、州民の総生産額の10%に過ぎない。これはギリシャに比べれば低い。ギリシャの赤字は、国民総生産の120%に達している。
 他方で大きな共通点がある。
1)欧州連合の加盟国の国民総生産は、約14.5兆ドル(1,305兆円)あるが、米国の国民総生産は、14.3兆ドル(1,287兆円)である。
2)ユーロとドルは、長いこと殆ど等価値の基軸通貨だと見なされている。
3)債務危機の帰結は、両方の通貨圏において殆ど同時である。
 それでは、ギリシャの財政危機がユーロを下落させたのに、なぜカリフルニアのような病気に罹っている州は、ドルをひきさげないのか?
 その理由は、両者の間の決定的な違いにある。米国には強い中央政府があるのに、欧州連合には、それがないということだ。EUは、経済上、通貨上の連合であるが、政治的連合ではない。この点で、米国は欧州連合に対して巨大な長所をもっている。(後略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ヨーロッパの終わり--ムスリムの統合についての見解」と題する『メルクール』誌の論説。

2010年05月19日 | イスラム問題
(前略)イスラム教徒に対する非イスラム教徒の適切な関係は、奉仕である。それに一致して、ムスリムは、ある非ムスリムに対して命令を受け取るという関係になってはならない。このような掟が教育領域や労働の場でどのような帰結を持つているかを想像するのは難しくない。ドイツ社会から孤立している場合、出身国の文化に過度に依存している場合、「ドイツ社会は、自分の社会だとは見られず、自分の社会のために利用し尽くされるべき被搾取社会と見なされる。説教者オマル・バクリが、イスラムは、非イスラム国家から社会保障を受けることを承認していると宣言する場合、彼がそれで意味しているのは、ムスリムが非ムスリムに課している年貢の取り立てである。社会保障をこのようにイスラム教的に解釈し直すことによって、それを受け取ることがノーマルであることになり、多くのムスリムがそれを悪用するようになる。(中略)
このような敵対的な態度の帰結は、非イスラム社会の内部にイスラム的空間を作り出そうとする努力となる。ルフトは、「民主主義的文化のためのセンター」の2004年度の研究報告を引用している。「彼らの多様な活動によって、イスラム主義的組織は、「イスラム化された空間」を作り出そうとしている。・・・ガドバンによると、進行中のイスラム化は、平行社会を固定化し、正当化している。「あらゆる世論調査の回答で明らかになるのは、人々はドイツ社会への社会的組み込みを想像することができず、彼ら自身の社会的環境を維持したいと思っているということである。」(後略)
[訳者の感想]ジークフリート・コールハンマーという人の書いた論説です。イスラム教徒をドイツの社会や文化に同化させることがどれほど困難かということがよく分かります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「私のお金はまだ安全か」と題する『シュピーゲル・オンライン』の記事。

2010年05月12日 | 国際経済
ダムは、ついに崩壊した。7500億ユーロ(75兆円)をユーロ諸国は、必要な場合、危機的な国々に役立てようとしている。「欧州中央銀行」は、怪しい国債を買い取り始めた。ユーロの交換比率は上がったり下がったりしている。そこで、突然、われわれが長いこと考えてきた問いが生じる。つまり、「われわれのお金はどれほど安全か」という問いである。苦労して貯められた銀行預金は、二年間で大幅に価値が下がった。どうしたら私は私の財産を守れるのか?
 専門家はパニックを起こさないように警告している。通貨安定化のための緊急計画は、「ようやく落ち着きをもたします」と独立の投資顧問シュテファニー・キューンは言う。したがって、財産をあちらこちら動かすことは何の役にも立たない。
 しかし、思いめぐらさなければならないのは、「物事を問いただすよい機会です」とキューンは言う。「自分の投資が危機にどれぐらい強いかをまだ吟味したことがない人は、それを今すべてきです。」
 なぜなら、これまで、十分に伝統的だと思われ、特に利回りが大きいと思われてきた多くの投資は、その良い評判を駄目にした。「その多くは、端的に値札詐欺でした」と銀行論教授ハンス・ペーター・ブルクホーフは言う。 それゆえ、大事なのは、株式を詳しく調べて、資金がどこに投資されているか見ることである。投資ファンドの出資者は、自分たちの金が何に対して使われているかよく見るべきだ。
 原則的に、現在重要なのは、出来るだけ、多面的に投資することである。なぜならば、個々の投資対象の将来の発展は、戦後の歴史にまだ一度もなかったぐらい非常に不確かだからである。(後略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「欧州中央銀行、その原則を破る」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2010年05月11日 | 国際経済
欧州中央銀行(EZB)は、ユーロを巡る戦いで最後の武器に手を出した。ヨーロッパ通貨の守護者たちは、月曜にかけての夜中に、多額の負債を抱えたヨーロッパ諸国の国債を直接、買い上げることを決議した。これは発券銀行の11年間の歴史では初めてのことである。EZBは、この措置で金融市場を落ち着かせようとしている。
公表のすぐ後に、ドイツ連銀と16カ国の発券銀行は国債の買い入れを始めた。それに先立って、EUと「国際通貨基金」(IMF)とは、ユーロに対する7,500億ユーロに達する救助ネットを張った。市場では、EUとIMFの歩みは肯定的に受け取られた。ユーロは、再び1.3ドルまで上昇した。先週は、共同体通貨は、1.25ドルまで下落していた。株式市場でも株価は上昇した。
この決断でもって、通貨政策のさらなるタブーが破られた。これまで、EZBは、国債を買うことを断固として拒否してきた。なぜなら、それによって、発券銀行は、間接的に、ギリシャや他のユーロ諸国の負債を間接的に引き受けることになるからである。定款によれば、EZBには、国債の購入は禁じられている。通貨量を操作するための公開市場ビジネスは例外である。
批判者達は、この決定によって、発券銀行は、その独立性を危険に曝したと見ている。「国債の購入は、堕罪であり、それは大きな信用喪失につながる」と「コメルツバンク」のミヒャエル・シューベルトは述べた。銀行論の教授であるヴォルフガング・ゲルケは、その転換によってEZBは、国家の手先になったと考えている。これは、結局、フランスのサルコジ大統領の圧力で起こったことではない。「これは、長期的には、より高いインフレに入ることである。ドイツ連銀だけなら、起こりえないことだった」と彼は言う。(後略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「株取引の専門家は、ユーロに対する集中攻撃があったと推定」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2010年05月09日 | 国際経済
ヴェルト紙日曜版:ミュラーさん、あなたはちょうど講演を終えたところです。テーマは恐らく自然と生じたでしょうね。それとも?
ディルク・ミュラー:当然です。木曜日のダウ平均の暴落は人々を驚かせました。彼らは何が起こっているのか理解したいと思っています。
ヴェルト紙:あなたが助けてくれると私たちも思っていました。
ミュラー:原因については、いろいろ推測できます。タイプの打ち間違えが原因だというのは、あり得ないですね。それに対する安全措置は厳しすぎるぐらいですから。どのトレーダーにも彼がビジネスができる限度があります。一定の取引量以上は四つの目で確かめるという原則なしには何も起こりえません。市場は、1987年の大暴落以来常に学習しています。
ヴェルト紙:原因はおよそ捜査されるのでしょうか?
ミュラー:われわれは何も知り得ないということはあり得ますね。だが、一つのことだけは、私は確実に知っています。われわれがユーロ圏での国家破産や通貨圏での暴落について議論している最大限可能な神経質な領域でこのような前例のない暴落が起こったとすれば、それは絶対、偶然ではないのです。
ヴェルト紙:それを聞くとちょっと陰謀説臭く聞こえますね。そのことをもっと詳しく説明してもらえませんか?
ミュラー:アングロ・サクソン圏から、ユーロに対する集中した攻撃が起こっています。それが投資家達を不安にするはずです。米国の銀行は、スペインの支払い能力とユーロ圏からのドイツの脱退についての噂でもって、信頼を駄目にしました。救済案が既に出来上がりつつあるのに、格付け会社の「スタンダード&プーアズ」は、ギリシャの借金を「危険」のレベルにまで引き下げました。
ヴェルト紙:格付けは、ギリシャの経済状態の反映です。
ミュラー:「スタンダード&プーアズ」社は、マクグローヒル財閥に属しています。その会長は、ハロルド・マックグロー3世は、ジョージ・ブッシュ前大統領の顧問でした。米国政府が認めなければ、S&Pは、何も出来ないはずです。
ヴェルト紙:陰謀論者は、政府に操縦されている株式市場介入部隊「プランゲ防衛チーム」(PPT)が存在するという主張をしています。あなたの意見では、このPPTが木曜日に株価暴落の後、奇跡的で急速な回復のさいに介入したのでしょうか。
ミュラー:この場合は私はそう思いませんね。私たちが持ったのは古典的な売り急ぎであり、しかも極端な売り急ぎです。多くの市場参加者達はこのような状況を待っていたのです。株価暴落の一部は、引き起こされた限界売り
に原因があります。・・・・(中略)
ミュラー:私たちが長く劇的な下降運動の始まりを見たのではないかと私は恐れています。非常に悪くなると、われわれは、まもなく第二のリーマンショックを蒙るでしょう。当時は銀行だけが問題でした。今度は、国家全体が問題なのです。ダックスが2009年初めの下値以下に下がるということは、理論的に考えられます。投資家達は、来月に対する戦略をはっきりさせるためには、今週の週末を利用すべきでしょう。
ヴェルト紙:あなたは具体的に何を薦めますか?
ミュラー:現在、値打ちのある商品を買う人は、どうやって自分がそれを売りオプションによって確保するかをよく知っているべきでしょう。ユーロに代わる通貨としては、スイス・フランとかノルウエー・クローネが買い得かもしれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「テロリストは、米国の旅券を所持」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』の記事。

2010年05月06日 | テロリズム
パキスタン出身のファイサル・シャーザッドは、アメリカの夢に到達する4車線の高速道路を走っていた。だが何時の時点でか、彼は行き止まりの道に入り込んだ。先週、土曜日、彼は多数の人々が往来するタイムズ・スクウエアで消火器と、ガスボンベと石油缶と肥料を載せた車を爆発させようとしたのだ。テロ攻撃は失敗だった。
明らかに不細工な寄せ集めの爆弾は、信管をはずされ、車は文字通りFBIの捜査官にとっては、宝箱だった。53時間後、テロ容疑者は、ニューヨークのJ.F.ケネディ空港発ドバイ経由イスラマバード行きの「首長国」航空会社の飛行機の中で、逮捕された。
ファイサル・シャーサッドは、テロの試みを認めたそうだ。彼は最初の尋問の前に、彼が選んだ弁護士と事前に相談せずに、黙秘権があることは聞かされていた。その点では、何人かの野党の共和党議員は、腹を立てた。結局、明らかに大量殺人をしようと決心し、イスラム教徒の憎悪に狩りたてられたテロリストが問題なのだから、普通の犯罪者とは違う扱いをするべきだったと彼らは言う。
シャーザッドは、「国内製テロリスト」の典型であり、それはアメリカ社会に対する明らかに増大しつつある危険を意味している。彼は、1979年にパキスタンのカラチで生まれたと書かれているが、彼の家族は明らかにパキスタンが支配しているカシミール地方のパッビの出身である。そこには悪名高いアルカイダの訓練センターがあった。父のベンハルイ・ハクは、パキスタン空軍の退職した地位の高い将校であり、後には航空局の局長代理として勤務した。パキスタンのエリートらしく、彼は息子に良い教育を受けさせた。ファイサルは、カラチの大学に入学する前に、パキスタンとサウディ・アラビアの私立学校を卒業した。カラチの大学は、ワシントンにあるその間に廃校となった「サウスイースタン大学」と連繋していた。1997年にシャーザッドは、ワシントン大学の援助で、米国の奨学金を受け、ワシントンで、情報科学とマーケッティングとを勉強した。(中略)
シャーザド事件は、幾つかの理由でアメリカ社会と専門家を不安にしている・イスラム教徒テロリストの戦略は、アメリカで「9.11」規模のさらなるテロ攻撃を行うことではない。そうではなくて、僅かな費用で、人出の多い広場や買い物場所のような「弱い目標」を当てることである。
その上、かなり以前からアメリカに住んでいるイスラム系移住民や彼らのそこで生まれた子孫が、役所や隣人が気がつかないうちに、過激化しているということは明らかだ。最後に、明らかなことは、容疑者の追跡の際、殆ど信じられない失敗があったということである。シャーザッドが既に5月3日に警察によって飛行機に乗せてはならない容疑者のリストに載せられたのに、
彼は航空会社「首長国」によって、ドバイ経由イスラマバード行きの航空機の乗客として搭乗出来た理由は、そのリストが明らかに航空会社に届いていなかったということである。乗客リストの手交が離陸30分前に初めてFBIに渡されたので、捜査員に警告された。共和党の下院議員であるピート・ヘクストラは、水曜日に、「運が良いということが、われわれの国家安全戦略であってはならない」と述べた。(後略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ブルカと漂白クリーム」と題する『シュピーゲル・オンライン』の記事。

2010年05月04日 | イスラム問題
ブルカ商人は立派な商業人である。しかし、彼はヨーロッパでは、非常に脅かされている。それに対する全く追随可能な理由が存在するけれども、自動車は禁じないだろう。なぜならば、自動車産業は恐らくブルカ産業よりももっと沢山のロビーイストを持っているからだ。
アブドル・ガフルは、カブールでブルカを売っている。薄青色のブルカが現在、濃青色のよりも売れ行きがいい。「一人の女性は、平均して1年に一着新しいブルカを買っている」と彼は言う。女性たちがブルカを着るのを止めたら、私は新しい職業を探すだろう。だが、私には常に女性の顧客がいるだろう。それがまさにイスラムなのだ」と彼は言う。彼は危機に対して安全な仕事を持っているわけだ。
 彼がブリュッセルやパリで支店を経営していないのは結構だ。
 誤解を防ぐために言っておくが、私はブルカは好きではない。私はただ、アブドル・ガフルが良い奴だと思っているだけだ。私たちはパキスタンに暮らしている。この國については、大抵の人が間違った考えを抱いている。ここでは、女性達は特に田舎ではブルカを着ている。特にアフガニスタンとの国境地帯では。
 イスラマバードでは、ブルカは、余り流行ではない。私の妻は多くの女性のように、体をすっぽり覆ってはいない。だから、彼女は白人であることがすぐ分かる。彼女にとっては良いことだが、私にとっては妙な結果が生じる。なぜなら、東南アジアの男達は、白人女性に関しては、ある強迫観念を持っているからだ。白人女性は、欲求する値打ちがあり、何でもする用意があり、言葉の最善の意味で、いかがわしいと見なされている。
 私が私の妻と町を歩いていると、ときどき、全く未知の若い男たちが私に目配せをする。それは「上手くやったね」という眼差しだ。彼らが私の肩を叩くということはない。「こいつは上手くやった」と彼らは考えている。彼らの顔には、「どうやって、あいつは白人の女を手にれたのか」という疑問が浮かんでいる。
 最近、私たちはある大きな本屋にいた。私たちは買い物を済ませて、私は買い物袋を手に持っていた。私の妻は、本棚の間を通って本を眺めていた。すると若い店員が私のところへやってきて、小声で「ちょっと個人的な質問をしてもいいですか?」と尋ねた。「勿論、良いよ。一体なんだい」と私は問い返した。すると彼は「この女性は、あなたにいくら払っているのか」と尋ねた。給与についての質問は、全く普通である。しかし、私はちょっととまどった。彼が何を目指しているのかが明らかになるまで数秒かかった。彼は、私を外国人女性のための召使だと思っているのだ。そこで、私は、「彼女のところへ行って自分で聞いたら。ひょっとしたら、君は僕のために給料値上げをやってくれるかもしれない」と答えた。今度はまごついたのは彼のほうだった。
「ねえ君、あれは僕の妻だよ。あれが何のために僕に金を払わなければならないのかね?」(後略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする