海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ビン・ラディンは必死になっている」とアナリストは言う」と題する『アルジャジーラ』局の論説。

2006年04月28日 | イスラム問題
彼らの疲れ切った運動に活力を与えるために、アルカイダは、「遠くにいる敵」である西欧との戦いをすることに決めた。しかし、これは、米国の軍事力が最後に彼らを破壊することを恐れた他の軍事的運動との裂け目を引き起こした。
先日の日曜日、アルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディンは、オーディオ・テープを通じて、西欧は「ムスリム諸国」に対して「十字軍的戦争」を仕掛けていると非難した。
ニューヨークにあるサラ・ローレンス大学で国際問題と中近東研究の講座を持っているファワズ・ゲルゲスは、ビン・ラディンが必死になっていると考える。
--イスラム教徒に対する十字軍についてのビン・ラディンのメッセージからわれわれは何を理解するべきでしょうか?
ゲルゲス:ビン・ラディンは、必死になって、イラクにいるアメリカと西欧の敵を利用しようとしています。そして若いモスレムに西欧はイスラムに対する十字軍的戦争を行っているのだと信じ込ませようとしています。また、若いモスレムに新たな帝国主義的軍事力に抵抗するべきだと信じ込ませようとしています。
ビン・ラディンにとっては、現在の闘争は、政治的経済的闘争以上のものです。それは生存をかけた文明的な闘争です。彼がはっきり述べているように、彼の使命は、若いモスレムを励ましてこのグローバルな対立に含まれている利害関係を思い出させようとしています。彼の話を聞くと、彼は自分のメッセージが誰の耳にも聞き入れられていないことに失望していることが分かります。ジハードの隊列は彼を置き去りにしました。それは彼が期待していたのとは劇的に異なる方向に動いています。彼は自分の仲間やモスレム社会に自分はまだ生きているぞ、まだ存在しているぞということを思い出させることがどうしても必要だと感じているのです。
 だが、本当のところは、彼の文明の戦いにかける人は少ないのです。イラク人もパレスチナ人もビン・ラディンのために戦争をする気はありません。彼らは、彼のビジョンに賛成していません。彼らはビン・ラディンの野心的で複雑なレトリックよりももっと限られた目標を持っています。
--あなたの本の中で、あなたは、9.11の攻撃はビン・ラディンのアイデアであったが、他のジハディスト達は彼とは意見が違いったと書いています。なぜ彼れらは黙っていたのですか?
ゲルゲス:9.11の攻撃はほんの小さな分派であるアルカイダによって遂行されました。彼らの戦略は大いに批判され、宗教的なナショナリスト達は反対しました。彼れらは戦闘をグローバルに取り上げるよりは、ムスリム世界を変えることに集中したのです。ビン・ラディンの副官達の多くは、自分自身の道を行こうと決心しましたが、そのわけは、彼らがエジプトのイスラム・ジハードであるアイマン・ザワヒリの組織とアルカイダとの間の合同に同意しなかったからです。彼らのなかのある者は、内部のやりとりでザワヒリに対して「よく聞け、俺たちは俺たちの道を進むが、俺たちは俺たちの汚れた洗濯物(内部の対立)を公衆には曝さない。俺たちは決してお前の信用を落としたりはしない」と言ったのです。彼らは深い忠誠と兄弟愛の感覚を互いに持っているのです。
--なぜ、ビン・ラディンとアルカイダは、西欧に焦点を当てようと決心したのですか?
ゲルゲス:ビン・ラディンを「より遠い敵」に向けさせた原因は、1991年の湾岸戦争におけるアメリカ軍の干渉とアメリカ軍のサウディ・アラビア駐留でした。
--あなたはあなたの本の冒頭で、アメリカ議会の9.11委員会の報告書を批判して、米国はジハード運動は一枚岩だと見ている述べています。
ゲルゲス:私は9.11委員会の報告書は、犯罪捜査に焦点を絞っていると考えます。それは
9.11の陰謀がどのように展開されたかを部分的に描写しています。何時、命令が下されたか、誰が命令したか、誰が筋書きの背後にいる指導的共謀者であるかというように筋書きの糸を繋ぎ合わせるようとしています。
 そういうわけで、報告書は、ミクロの細部から出発して、米国が直面した脅威の本性については非常におおざっぱな一般化をしているのです。言い換えると、報告書は、ジハード運動がどのようにしてなぜ米国を攻撃することに決めたかという歴史的社会学的問題を明らかにするには不足です。報告書は、ジハード運動と全体としてのイスラム主義運動とを一からげにしています。
 私の考えでは、おおざっぱな一般化をし、ジハード運動をアルカイダやイスラム主義運動といっしょくたにすることは非常に危険です。
--あなたはなぜそれが危険だと考えるのですか?
ゲルゲス:米国は、アルカイダのようなイスラム主義運動内部の小さな分派に直面しているのではありません。米国が直面しているのは、あらゆるジハード主義者、地方的ジハードや超国家的なジハードやイスラム過激派を包括するイデオロギー上の敵に直面しているのです。
 米国が非常に危険な敵であるアルカイダに直面しているというのとあらゆるジハディストを包括するイデオロギー的な脅威と直面しているというのは区別しなければなりません。それは敵対の本性を変えますし、ジハディストとイスラム主義者との間の違いを余り知らないアメリカ人に、われわれが直面しているのは、私が実存的脅威や戦略的脅威と呼ぶものなのだ確信させるのです。
--あなたは軍事的集団について述べています。レバノンのヒズボラとパレスチナのハマスは、ジハード運動の一部ですか。
ゲルゲス:そうです。だが、ヒズボラとハマスは、過激なイスラム主義者で、彼らは彼らの精力と軍事力をイスラエルの占領に集中している。彼らはアラブ・イスラエル世界の外へジハードを広げようとは思っていません。(中略)
--アルカイダを打ち負かす最善の方法はなんですか?
ゲルゲス:アルカイダに対するアメリカの戦争は、戦場で勝つことはできません。アメリカは、通常の軍隊と直面しているのではありません。米国と国際社会がこの戦争に勝つ唯一の方法は、アラブとムスリム社会との連携を作り出すことです。米国は、本当に揺れ動いている中間層の正当な悲しみに訴えるよう努力し、パレスチナ問題のような地域対立に訴えて、連合を作り出すように努力しなければなりません。
 米国がこのことをなしうるのは、アラブやムスリムの独裁者から健全な距離をとり、アラブ・ムスリム世界の最大の有権者、つまり、アラブやムスリムの若者達との間に橋を建設することによってであります。
[訳者の感想]ここでゲルゲスがアルカイダとジハード運動を区別し、アルカイダのイデオロギー的目標とジハード主義者の目標との間に区別があるというのは一応納得できますが、それが最後に述べたような仕方でアメリカがアラブ・イスラムの青年層を取り込めるかに関しては私は全く可能性がないように思います。結局、アメリカは、アルカイダだけでなくアラブ・イスラム世界全体を敵に回してしまったからです。
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「ブッシュのこれからの千日」と題するアーサー・シュレジンジャーのコメント。

2006年04月27日 | アメリカの政治・経済・社会
百日はフランクリン・D・ルーズベルトと消すことが出来ないほど結びついているし、千日は、ジョン・F・ケネディと結びついている。だが、今週について言えば、ブッシュ大統領の任期は残すところあと千日である。イランに対する不吉な準備と先制攻撃の暗い噂に満ちた日々である。
 大統領の特権としての予防戦争の問題は、決して新しくない。1848年2月、当時、共和党議員だったアブラハム・リンカーンは、メキシコ戦争に対する反対の立場を次のように説明した。「大統領が侵入を撃退することが必要だと思う場合にはいつでも、大統領に隣国への侵略を許すとする。そうするとあなた方は、大統領がこのような目的にとって必要だと思う場合にはいつでも彼がそうするのを認めることになる。あなた方は好きなときに彼に戦争を認めることになる。今日、大統領が英国がわれわれを侵略するのを防ぐためにカナダに侵入することが必要だと考えていると言うことを選ぶとしたら、どうやって彼にそれを止めさせることができるのか?あなたがたは『イギリスがわれわれの国を侵略する蓋然性は見えない』と大統領に言うかもしれない。だが、彼はあなた方に『黙っていろ。お前達には見えなくても、自分にはそれが見えるのだ』と言うだろう。」
 これこそまさしくジョージ・W・ブッシュが「黙っていろ。お前達は見えなくても、自分には見える」という彼の特権を見た仕方なのだ。だがしかし、ハリー・S・トルーマン大統領とドワイト・D・アイゼンハウアー大統領とはどちらも第一次大戦に従軍した兵役経験者であったが、彼らははっきりとヨーロッパを支配しようとするヨシフ・スターリンの試みに対する予防戦争を認めなかったのだ。1962年10月のキューバ危機において、ケネディ大統領は、自分自身第二次対戦の英雄だったが、キューバにいるソビエト軍に対して予防的攻撃を勧めた統合参謀本部の提案を退けた。
 JFKが平和的にミサイルを取り除こうと決心したのは幸運だった。なぜならば、何十年か後にキューバにいたソビエト軍は、戦略核兵器を持っており、アメリカ軍の侵入を撃退するためにそれを使用せよという命令を受けていたことが分かったからだ。このことはお互いに核攻撃する可能性があった。JFKは自分の千日をかけて、アメリカ大学で演説を行ったが、それはアメリカ人とロシア人の双方に、「個人としても国家としても、われわれ自身の態度を再吟味せよ。なぜならば、われわれの態度は彼らの態度と同様、本質的であるから」という力強い弁明であった。この後に制限的テストを禁止する条約ができた。それはジョージ・ケナンの「封じ込めと阻止」という方式と一致し、核による衝突を避けるのに役立ったのだった。
 キューバ・ミサイル危機は、冷戦中の最も危険な瞬間であっただけではない。それは人類の歴史の中で最も危険な瞬間だった。それ以前に、二つの対立する勢力が、地球という惑星を破壊する技術的能力をもったことは一度もなかった。大統領官邸の中に予防戦争の要素があったとしたら、それは恐らく核戦争であっただろう。核兵器が再び使用されるであろうことは確実である。アメリカの歴史家の中で最も異彩を放つ歴史家のヘンリー・アダムズは、南北戦争中につぎのように書いた。「いつか、科学は人類の存在をその手中に収めるだろう。そして人類は世界を吹き飛ばすことによって自殺するだろう。」
 だが、われわれの冷戦中の大統領は、「封じ込めプラス阻止」というケネディ方式を守り、われわれはそれを核戦争にまでエスカレートすることなく、冷戦に勝った。ジョージ・W・ブッシュは、予防戦争の偉大な主唱者として登場した。2003年に民主党の反対が崩壊したことによって、ブッシュは、アメリカの外交政策を「封じ込めプラス阻止」から、「黙っていろ。お前達には見えなくても、俺には見える」という大統領による予防戦争へと移した。観察者達は、ブッシュが自分は神の目的を実現するのだという確信を持った「救世主的」人物だと記述している。だが、リンカーンが彼の二番目の大統領就任演説で言ったように、「全能なる神は、自分自身の目的を持っておられる」のである。
 ブッシュの前には彼自身の千日が展開している。彼はそれを使って、三つ目のブッシュの戦争を始めるかもしれない。アフガン戦争は正当化された。イラク戦争は、幻想と欺瞞と自己欺瞞に基づいていた。イラン戦争も幻想と欺瞞と自己欺瞞に基づいて行われるかもしれない。大統領の予防戦争に基づく外交政策ほど民主主義にとって危険なものはない。
 人情味ある人間のように見えるブッシュ大統領は、毎日の死と破壊の悲しみに心を動かされて、単独の予防戦争を控えるかもしれない。そして、集団的安全保障という利益のために他の国々と協力することに立ち返るかもしれない。そうなったらリンカーンは喜ぶだろうが。
[訳者の感想]この論説を書いたアーサー・シュレジンジャーは、ケネディ大統領の顧問で歴史家でもあります。ブッシュがイランに対して核戦争も辞さないつもりだというのは、かなり本当らしいです。恐ろしいことだと思います。
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「胡錦涛主席よ、ありがとう」と題する『ガーディアン』紙の論説。

2006年04月23日 | 国際政治
 米国の貿易赤字は、一年間に6,860億ドル(80兆9,480億円)に達した。特に中国に対する赤字が大きい。最近のコメントにおいて、トーマス・ポーリーは、アメリカの経済成長の弱さの原因が貿易赤字にあるとし、米国の長期金利を低く維持することによる住宅バブルの責任が中国にあるとした。この見解に対応して、ブッシュ大統領は、胡錦涛主席に何かをしてくれと懇願した。有り難いことに、胡錦涛主席は、何ら特別の行動を約束しなかった。
 中国が、彼らが昨年われわれに売った商品のうち2千億ドル分(23兆6千億円)を売ることを決定しなかったと仮定しよう。直ちにインフレがエスカレートするだろうし、何十億ドルものドルは、もはや売ってもらえない商品を探すことになる。われわれの連邦準備銀行は、利率を上げることで対応するだろう。議会は、支出を削減し、税金を増やすだろう。
 われわれには商品がなくなり、中国にはお金が入らなくなる。誰かが得するだろうか?誰も得しない。
 あるいは、中国が石油や小麦や機械類や良い生活のために手持ちのドルの蓄積を消費しようと決心したと仮定しよう。その場合、インフレは、中国が購入しようと決めたものが何であれ、世界の物価の上昇に火をつけるだろう。アメリカ人の生活水準は下がるだろう。われわれの政治家達は、素早く反応するだろう。そして事態をもっと悪くするだろう。
 結論は明白である。商品を売り、われわれが彼らのために準備した債券を蓄積することで、中国はアメリカに巨大な恩恵を与えているのだ。これは中国にとっては高くついている。もっとも中国は彼らなりの十分な理由があって、そうしているのだが。つまり、それは中国人がかれらの進行中の都市化を管理するのに役立っている。
 だが、この結果、最後にクラッシュすることにならないか?うん、なるかもしれない。いつか、太陽は爆発し、宇宙は冷たい暗黒物質の重さに堪えかねて崩壊するだろう。だが、それが先延ばしできるとすれば、黙示録を思い出させる理由はない。中国が商品を売り、外貨を増やしている限りは、どうして順応したり楽しんだりしてはいけないのか?相互に同意している限り、彼らがわれわれに与えることを止めさせたり、われわれから受け取るのを止めさせるものは何もないのだ。
 特に多くのレトリックとは異なり、中国がわれわれに貸与できる額には限度がない。なぜなら、実際には彼らはわれわれにぜんぜん貸与なんかしていないのだから。例えば、米国の消費者がクレジット・カードで携帯電話を買った場合、彼が国内の銀行から資金を借りている。クレジット会社は、中国のモトローラに支払われるドルを供給している。すると、中国はそのドルを米国財務省の債券と交換する。それは純粋にアメリカのポートフォリオの移動に過ぎない。「外国資本」は、無関係である。
 結果は次の通りである。われわれはわれわれの貿易赤字に資金を提供するために、外国の貯金に依存しているのではない。理論上の問題ではなく、会計上の問題としては、国内の信用が、外国の貯金に資金を提供している。外国部門は、米国消費者の持続的な購買能力に依存しているから、われわれが外国のために維持している金融資産(financial assets)と引き替えに、米国の消費者は、彼らがわれわれに売りたいと思っている商品を買い続けることができるのだ。中国が投入している唯一の資源は、労働と携帯電話を組み立てている部品である。
 ある日、彼らが1兆ドルでなくて、2兆ドルの米国債券を持つとすると、そのことはわれわれ両国の間の関係を現在とは変えるだろうか。ある日、中国が輸入する以上に輸出することを止めることを選ぶとすると、その理由は、中国が国内でその商品を必要とするからであって、中国が必要以上に米国債券を持っているからではない。
 国家の安全保障についてはどうだろうか?戦略的領域で失われた能力についていらいらしている人たちは、簡単な解決を見逃している。なぜ、米国政府は、国内の設備を維持するために必要な割増金を支払って、戦略的商品を国内の生産者から買うことができないのか?できるはずだ。このほうが、国内の製造業(例えば自動車製造業)によって使用されているより安い製品(例えば鉄鋼)を閉め出すために、インフレ的な関税や割当量を課するより遥かに破壊的でない。
 最後に、輸入はアメリカ人の仕事を奪っているか?確かにそうだ。そして、拡大する貿易によって傷つけられられた人々には、援助が与えられるべきだ。だが、貿易によって失われた仕事をより良い仕事と取り替えることができないということは、全く国内問題である。われわれが労働する意欲のあるアメリカ人のために必要な新しい仕事に資金を出すのに失敗したためである。米国に必要なのは、すべての人に開かれたアップデートされたインフラと公共空間と文化センターである。アメリカに必要なのは、もっと良い学校である。アメリカに必要なのは、普通の労働者が労働時間を短縮しても、十分な生活を送れる可能性である。アメリカに必要なのは、ハリーケーン・カトリーナのような災害に対するもっと強力な予防措置と準備である。玩具やテレビや携帯電話を安価に提供したいという中国の態度は、これらの必要に応じることを容易にするのであって、より難しくするのではない。われわれがこの挑戦に立ち向かうことに失敗した場合、責められるべきは、われわれ自身である。
 われわれの貿易赤字を補填するのに「外国から借金をするという無邪気な欺瞞」という表現は、われわれの本当の問題から注意をそらすことである。ある日、これらの間違った問題が消え去れば、本当の問題はもっと悪くなるだろう。そういうわけで、本当の問題がより悪くならないことを希望して、しばらくは、中国人がしていることを非難したりしないで、中国人に感謝しよう。
[訳者の感想]「貿易赤字は中国のせいだ」という声が米国議会筋には多いようですが、中国が安い商品を輸出し、その代金で米国国債を買ってくれるから、米国はインフレにならずに済んでいるというジェームズ・ガルブレイスとウオレン・モスラーの4月21日付け論説です。クルーグマン教授も多分これと同意見だと思います。経済用語が沢山使われていて、拙訳が正しいかどうか自信がありません。

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「家名に泥を塗ったという理由による殺人--判決が理解できない」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年04月22日 | 政治と文化
イスタンブール/ベルリン発:「更なる犯罪を招く」とトルコ在住の女性政治家は、いわゆる「家名毀損による殺人」についてのベルリン地方裁判所の判決を評価した。「判決はとても間違っている。このような判決は、女性に対する圧力を強める」とガイェ・エルバトールは言った。エルバトールは、いわゆる「家名毀損による殺人」の問題を議論しているトルコ国会の調査委員会の議長である。「トルコは、この違法行為ともっとよくたたかうために法律を厳しくした」と彼女は、昨年施行された刑法改革を考慮して言った。他の国々もこの改革を行うべきである。
 ベルリン地方裁判所は、殺害されたトルコ女性ハトウン・シュリュキュの一番下の弟が彼女を射殺したのを有罪だと判断した。彼は9年3ヶ月間の刑に処せられた。だが、彼の二人の兄は釈放された。彼らには犯行に加わったということが立証されなかった。殺されたトルコ女性の行状は、家族の気に入らなかったのだ。
 このような「家名に泥を塗ったという理由での殺人」は、注意深く計画されたものだとトルコの女性センターのナイム・カルダシュは報告している。「死刑判決」は、決して個々の犯人によって下されたものではなく、家族会議によって決定されたものである。7ヶ月間の裁判の間、最年少の弟が死刑執行者として選ばれただろうという憶測がなされた。ハンブルグ大学の社会学者ネクラ・ケレクの推測によると、伝統的な家族構造においては、しばしば、刑を軽くするために、最年少者が選ばれる。だが、判決によると、家族がハトウン殺人の計画に加わったかどうかは証明されなかった。
 「緑の党」の政治家ヨゼフ・ヴィンクラーとイルムガルト・シェーヴェ・ゲリクの見解では、「家族会議」の沈黙が問題である。ハトウンの家の「家父長的役割図式」は、解明されなかった。そのために、二人の兄が共犯者であったどうかも証明されなかった。
 トルコの新聞は、9年間の懲役刑は軽いと評価された。アイヤン・シュリュキュ(犯人の名前)は、軽い刑で免れたと大衆紙『サバハ』は述べた。他の新聞は、判決が出た後のシュリュキュ一家の振る舞いを批判した。他の新聞は、犠牲者であるハトウン・シュリュキュのほほ笑んでいる写真を掲載した。もう一つの写真では、アヤンの兄の一人が笑ってVサインをしている。『ヴァタン』紙は、「彼らは恥知らずにも笑っている」とコメントをつけた。
 エッセン市にある「トルコ研究センター」のファルーク・センは、いわゆる家の名誉を傷つけたという理由による殺人に対する刑法上の追求は行われなかったと指摘した。「トルコ人社会は、この犯罪の温床をなくすために、もっと多くの圧力をくわえねばならない。」
[訳者の感想]この後日談として、ドイツ政府がシュリュキュ一家に出している生活保護も打ち切りにし、一家をトルコに送還すべきだという意見が出ています。彼らが住んでいるのは、学校内暴力で問題になったベルリンのノイケルン地区のようです。トルコの新聞が地方裁判所の判決が軽すぎると言っているのが面白いと思いました。親が決めたトルコ在住の見ず知らずのトルコ人と結婚させられたのを嫌ってドイツに逃げ帰ったことを男の兄弟達が「家の名誉を傷つけた」と考えたようです。
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「韓国と日本は小島を巡って緊張を高めている」と題する『ワシントン・ポスト』紙の記事。

2006年04月20日 | 韓国関連
4月19日、東京発:一群の小さな島を巡って沸騰している議論が、水曜日、日本が沿岸巡視船を周辺水域の調査に遂行しようとした際、韓国が巡視船20隻地域に派遣させたことによって鋭くエスカーレートした。
 日本がソウルからの警告を拒否し、韓国によってコントロールされている岩だらけの海に突き出した島に対して合法的な要求を強めることを目指して、6週間にわたる地図作製のための航海を実行すると断言した際に韓国が動いた。立腹した韓国の高官は、海軍に警戒態勢を取らせ、必要ならば韓国が主張している水域に2隻の日本の調査船が立ち入ること阻止するために軍事力を行使するだろうと示唆した。両国の中間に位置するこれらの島嶼は、韓国語では独島と呼ばれ日本語では竹島と呼ばれている。
 盧武鉉大統領は、緊急閣僚会議を招集し、韓国の選択を議論し、日本の動きを「攻撃的挑発」と非難した。パン基文外相は、韓国は断固と行動するだろうし、あらゆるシナリオに対する対抗措置を用意しつつあると警告した。
 アナリストの多くは、アジアの二つの勢力が島嶼をめぐる軍事的対立に進むだろうという考えを退ける。だが、最低に見積もっても、緊張の度を加える議論は米国にとって新たな挑戦を突きつけている。最近の出来事は、彼らが中国の軍事的台頭と北朝鮮の核を使った好戦的態度に対する一致した戦線を示そうともがいている時期にワシントンの二つの大きな同盟国の間の外交的断絶を広げた。
 日本の小泉純一郎首相が第二次世界大戦以前の長い軍事的増強に遡る領土的要求を含む一連の問題でより積極的な態度を取ったので、緊張は日本とその隣人達との間の広範な摩擦を強めた。
 韓国と中国とは、日本の長く維持された領土的要求とその過去の侵略行為を美化するための歴史教科書の書き直しに対して怒りを表した。水曜日に、韓国の政治家達は、島嶼を巡る議論を彼らが日本における軍国主義の復活の図式として断罪するものとを結びつけようと主張した。
 安部晋三官房長官は、島嶼問題を解決するために理解と対話をするように呼びかけた。日本のメディアの報道は、二隻の調査船が水曜日夜には、まだ日本の海岸に停泊していることを示唆している。だが、安部氏は、日本は譲歩しないだろうし、合法的権利をもって行動していると主張した。
 「穏健な仕方で両側が問題を扱うことによって、われわれは調査が平和的に行われると期待している」と安部氏は報道陣に語った。
 この状況に詳しい日本の官僚は、調査船の派遣の決断は、韓国政府のウエッブサイトで、6月にドイツで開かれる海事会議の間に、問題となる地域の海底地形に対する韓国の名称を提出することを計画中であると公表した後で行われた。日本は、それに代わる名称を支持するために調査によるデータを使用する予定である。
 匿名希望の官僚は、日本の調査船は、島に直接近づくとは期待されず、周辺の海域の調査に限定する予定であったと述べた。
 日本の公衆は、この議論に多くの注意を払っている。だが、韓国では、この議論は巨大なナショナリスティックな度合いを帯びている。
 両国は、漁業権のために渇望されている領域に対して数百年も古い権利を主張している。だが、韓国はこれらの島嶼に対するコントロールを強化する1905年の日本の動きが1910年から1945年までの35年間の韓半島の領有の前触れであったと見ている。
 日本は竹島が日本の領土であるという主張を増大させたので、韓国は、怒りを増幅させ、島嶼に警官を常駐させ、若い韓国人の夫婦がそこへ移住することを許可した。プレイヤーが日本の侵略者の無慈悲な大隊をやっつける「独島を救え」というビデオ・ゲームは、韓国ではヒットした。
 韓国と日本は、更に、東京では「日本海」と呼ばれ、ソウルでは「東海」と呼ばれるこれらの島嶼を囲んでいる海洋の名称に関しても短気な外交上の争いに巻き込まれている。盧泰愚大統領は、日本における小泉首相との頂上会談の申し出を拒否した。
 アナリストは、韓国は、地図作製のための調査について過剰反応しているが、日本人も、ソウルから期待できたかもしれないどんな善意も追い散らした。
「小泉首相が権力を握ってから、日本と東アジアとの関係は、最悪の点に達した」と早稲田大学のアジア研究を担当する天児慧教授は言う。「今や感情が高まっている。だれが小泉の後継者になっても、新しい指導者は、日本と隣人との関係を悪化させることは、両側にとって利益にならないことを学ばなければならない。」
[訳者の意見]海洋調査船をめぐる日韓の問題をアメリカ人記者がどう捉えているか知りたくて訳してみました。「ソウルから期待できたかもしれない善意を追い散らした」という文章が何を意味しているのか私には良く分かりません。
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「日本、産業スパイと戦う」と題する『アルジャジーラ』局の記事。

2006年04月17日 | 外交問題
彼の向かい側の男は、彼の頭の中にある価値ある秘密を漏らさせるのがどれぐらい難しいか、どれぐらいの金がかかるか値踏みしている。
産業スパイと技術上の秘密のやりとりは、日本では当たり前になりつつあるので、新しい法律は日本の地域的競争者への知識の流出を食い止める試みとして書かれている。
警視庁は、昨年、ロシアの通商代表部のメンバーの一人が東芝子会社の従業員に八ヶ月間、半導体に関するデータを提供する見返りに91万円を支払ったことを明らかにした。
東京駐在のロシアの役人は、日本側の主張に対してアルジャジーラに語ることを拒否した。
価値のある技術の流出を食い止める試みにおいて、小泉首相が座長を務める知的財産権戦略司令部の事務局は、間もなく法律化されるプログラムを立案中である。
「知的財産の保護は、日本では重大な問題であり、われわれはこの包括的な提案が日本の会社に対する脅威を軽減することを希望している」と事務局のスポークスマンは、アルジャジーラ局に語った。
 上記の出来事は、1989年以来日本の警察が東京駐在のロシアの通商代表部が絡んだ産業スパイを調査したのはこれで五度目である。
 2002年の事件では、通商代表部代表は日本の自衛隊の隊員からミサイル技術を買おうとした。警察によると、彼が最初に東芝の社員に近づいた時、その男はイタリア人のコンサルタントであるように見せかけた。この授業員の名前は明かされておらず、罪に問われてもいない。
「その男は、ロシアとは違う国から来たと言い、彼の仕事はビジネス・コンサルティングと関係があると述べた。後で私は何処かおかしいと思ったがその理由は、彼の仕事に不必要な書類を私に頼んだからだ」と東芝の社員は警察に述べた。
「私はその金を娯楽に使った」と彼は言った。
 そのロシア人の男は、東芝社員の申し立てが公表される前に、離日した。警察庁は、彼の再入国は認められてはならないという命令を出した。
 報道されたところによると、装置は、戦闘機やミサイル誘導システムや潜水艦に応用される。
 これらの産業スパイが行われる原因の一つは、日本の人口である。リスク・コンサルタントの「クロル」の支配人であるマイク・オキーフは、日本の労働力が高齢化し、定年に近づいている多くの技術者には、彼らを待っている退職金が余り多くはないだろう思っている。
「彼らのある者は、早期退職を取って、そのまま飛行機に乗って中国へ行き、日本の競争者である中国を助けようとする。ある者は、退職を待たないで、週末に彼の知っていることを譲り渡すのだ」と彼は言った。
 しかし、東芝の社員は、ロシアのスパイが求めた半導体の能力や価値を否定した。
「秘密の半導体は、トランジスターやダイオードなどカラーテレビや他の家電製品に使われている簡単な装置だ」と東芝の役員のケイスケ・オオモリは述べている。
「それは日本の貿易統制法の下で輸出ライセンスを必要とする高度のテクノロジーや製品やサービスを含んでいなかった。」
 オキーフの言うところでは、「誰もがハイテクの秘密をほしがっており、それを護ることは、チャレンジだ。特に日本ではセキュリティーが余り高くない。」
 工場や研究センターの周りの物理的なセキュリティーがしっかりしていても、こういった場所は、データ泥棒が彼らの商品を買いに行く場所ではない。
「窓を壊してつかみ取るタイプの盗みは、非常に稀である。なぜなら、保護されたデータがどこに蓄えられているかを見つけ出すのは難しいからだ。」
 求められている知識とノウハウは、コンピューター・チップを作るのに必要な高度の技術から、シリコン・ウエファーを磨いたり、特殊なプロセスで用いられる一種のバクテリアを捕まえる手段にまで及んでいる。
 「中国は20年前あるいは30年前の日本の技術段階にいるので、日本の技術に追いつこうとしている」とオキーフは言った。「中国は技術上の指導者を恐れており、過去にテクノロジーを悪用した人々(日本人のこと)に追いつく権利があると信じている。日本は、1937年に中国を侵略し、南京で30万人の民間人を虐殺したことを責められている。
[訳者の感想]筆者はアルジャジーラ・テレビの東京特派員であるジュリアン・ライアル記者です。「セキュリティが弱い」というオキーフの指摘は正しいと思います。それはウイニーを通じて自衛艦のデータが流出したという事件でも明らかです。
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「激しい戦闘でタリバン41人が殺された」と題する『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事。

2006年04月15日 | アフガン問題
カンダハル発:アフガン治安部隊は、連合軍のヘリの支援の下で、アフガニスタン南部にあるタリバンの隠れ家を攻撃し、激しい銃撃戦で41人の反乱軍を殺したと土曜日に州知事が述べた。
 アフガンの警官6名が金曜日のサンギサールの戦闘で殺されたとアサドラ・カリド州知事は述べた。9名の警官と数名の兵士が負傷した。
 「タリバンがサンギサールに集まってカンダハルへの攻撃を計画しているという情報を得て、われわれは金曜日にこの作戦を開始した。戦闘は、朝から晩まで続いた」と彼は述べた。
 カリド州知事は、治安部隊は、近くの村落に逃げ込んだタリバン兵士を追いかけていると述べた。彼の述べるところでは、治安部隊は、41名の反乱軍兵士の死体を見たが、そのうち11人しか回収しなかった。
 「連合軍の提供したAH-64アパッチ・ヘリは地上のアフガン軍を支援するためにロケット弾を発射した」と米軍報道官のマイク・コディ中尉は述べた。
 サンギサールにいるAP通信の特派員は、ヘリコプターがミサイルを発射するのを見たが、死傷者を出したかは確認できなかった。
 タリバン反乱軍は、連合軍とアフガン軍に対する攻撃をエスカレートし、国の発展と民主主義への進歩を脅かしている。連合軍は、特に自殺攻撃によって被害を蒙っている。最近、数週間のうちに攻撃がエスカレートした理由は、春の天候がタリバンの使用する山道の雪を溶かしたためである。
 金曜日に、コスト州では、路傍に仕掛けられた爆弾で3人のアフガン兵が殺された。南部のヘルマンド州では、自爆自動車で3人のイギリス兵が負傷した。
 今週も、連合軍とアフガン軍は、タリバンとアルカイダと他のグループが活発になった東部のクナール州で、「山のライオン作戦」と名付ける大規模な攻勢を始めた。
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「米国、グアンタナモ収容所の囚人をドイツへ」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年04月15日 | テロリズム
ベルリン/ワシントン発:アメリカ政府は、12名以上のグアンタナモに収用されている囚人をドイツに押しつけようとしている。『ヴェルト』紙がベルリンとワシントンの外交筋から聞き出したところによると、その上、合衆国は、連邦政府に圧力を加えている。これまでのところ連邦政府は、アメリカの願望に抵抗している。公式には連邦政府は、問い合わせに対して何も表明していない。
 捕虜の集団で問題となっているのは、15人のウイグル人である。中国西部(新彊ウイグル自治区)に住んでいるこのイスラム教徒達は、北京政府に対して武装闘争を行っており、そのために迫害されている。2002年にこれらの男達は、タリバンあるいはアルカイダの戦士としてアフガンニスタンで捕虜となり、キューバのグアンタナモの捕虜収容所に連れてこられた。2003年末にすでに、アメリカ軍当局者は、これらのウイグル人は釈放可能かもしれないと考えた。彼らの何人かは、確かにアフガンニスタンの訓練基地を訪問したかもしれないが、無害であると格付けされたと軍の書類に基づいてアメリカのメディアは報道した。
 逮捕者は中国に引き渡された場合には、死刑になる恐れがあるので、米国は、この集団を引き受ける別の国を探している。アメリカ人の推測では、ドイツが適している。なぜならば、バイエルン州にすでに一連のウイグル人難民が生活しているからである。
だが、新しいドイツ連邦政府は抵抗している。その背景には、中国との関係についての配慮がある。アンゲラ・メルケル連邦首相は、5月末、北京を初めて訪問する予定である。北京の指導者達は、ドイツがウイグル人を引き取ることを非友好的な行為と感じるだろうとベルリンでは言われている。
ベルリンの外交筋では、米国は諦めないだろうということを前提にしている。『ヴェルト』紙の情報によると、ブッシュ大統領は、連邦首相が去る1月初めにワシントンを訪問した際に、このテーマを話し合っている。次回のワシントン訪問の際に、ブッシュは彼の頼みを繰り返すだろう。舞台裏では、ワシントンは、グアンタナモ捕虜収容所の解散を直接間接に力説してきた国々が、捕虜を引き取るべきだと主張している。ドイツはそういう国の一つである。
[訳者の感想]確かにドイツやフランスでは、拘置の理由もなく長期に収容所に入れておくことに対して反対の世論があったと思います。しかし、だからといって、簡単にウイグル人捕虜を引き取ることもできないというヂレンマを抱えているようです。ロシアもかっては1930年代にウイグル人の独立運動を弾圧した前歴があり、引き取る可能性は少ないと思います。日本政府に依頼が来たらどうするでしょうか?
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「退役将軍達、ラムズフェルド国防長官を激しく非難」と題する『ワシントン・ポスト』の記事。

2006年04月13日 | イラク問題
イラクにおけるアメリカ軍の元司令官が、昨日、ラムズフェルドに辞任するよう呼びかけ、軍事的任務をより困難にしたという理由で、国防長官の権威主義的なスタイルを厳しく批判した何人かの他の司令官に加わった。
「私は新たなスタートが必要だと思う」とペンタゴンのトップである陸軍少将ジョン・バティストは言った。彼は2004年から2005年までイラクの第一歩兵師団の司令官であった。「われわれに必要なのは、軍隊が彼らを尊敬すると期待するのと同様に、軍隊を尊敬する指導者なのだ。そして、この指導者は、チームワークを理解するが必要だ」と彼はインタービューで述べた。
バティストは、彼の仲間の多くが同じように感じていると述べた。「私のような男が国防省の指導者の雰囲気について率直に話すことが重要だ」と彼は昨日、CNNで語った。
バティストのコメントは、特に陸軍内部では共感を呼んでいる。イラクに戻って米軍のナンバー2の地位に就くなら、三つ星(大将)に昇格させるという申し出があったが、自分はもはやラムズフェルドの下で勤務する気がないと言う理由で、彼はそれを断った。イラクへ行く以前、彼は当時国防次官であったポール・ウォルフォウィッツの軍事補佐官として勤務していた。
バティストは、ブッシュ政府のイラク戦争の扱いは、命令の統一、努力の統一という基本的な軍事上の原理を犯していると思うと言った。別のインタビューでは、バティストは、他の軍事上の原理の侵犯によって、多すぎる責任を無能な将校や訓練が十分でない部隊に押しつけたことによって、アブグレイブ刑務所のイラク人虐待事件が引き起こされたと考えると言った。
彼のコメントは、ラムズフェルドに対する最近の同様の上級将校の攻撃に続くものである。
「われわれは二度とだまされたくない」とグレゴリー・ニューボルド海兵隊退役少将は言った。彼は2000年から2002年まで、統合参謀本部のスタッフとして作戦指揮の地位にあった。「マクナマラ元国防長官のミクロのマネージメント」のような一連の間違いをやり玉に挙げて、彼はラムズフェルドや他の自分たちのアプローチを根本的に変えたがらない連中の交替を要求した。
先月、イラクに勤務した退役陸軍少将ポール・イートンは、『ニユーヨーク・タイムズ』紙に意見を寄せ、その中で彼はラムズフェルド国防長官を「戦略上、作戦上、戦術上、無能である」と呼んだ。2003年から2004年までイラク陸軍部隊の訓練を視察したイートンは、「ラムズフェルドは、辞任するべきだ」と言った。(以下省略)
[訳者の感想]ライス国務長官以外にもラムズフェルド国防長官に対する非難が退役高級将校の間から噴出してきたようです。イラク戦争開始のときの勢いはどこかへ行ってしまったようです。ブッシュ大統領に果たして彼を辞めさせる気はあるでしょうか。
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「今度はペンタゴンを全焼させるとムサウイうそぶく」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年04月13日 | テロリズム
ワシントン発:37歳のモロッコ人、ザカリアス・ムサウイに対する裁判で、原告は明日、証拠提示を終わる。それは恐らく「靴爆弾」リチャード・リードが証人として出廷することで終わるだろう。リードは、2001年12月にパリからマイアミ行きの飛行機の中で、靴の中に仕掛けられた爆弾を爆発させようとして、乗客によって妨げられた。彼はコロラド州フローレンスの監獄に恩赦なしの終身刑で服役中である。2001年9月11日のテロリスト達と一緒に米国の航空訓練学校に通っていたムサウイの述べたところによると、彼はリードと一緒に飛行機テロを実行する予定であったが、2001年8月16日に捕らえられた。彼はテロリスト仲間の唯一の生存者である。証拠提出は、情緒に訴える形で行われる。これまで公開されたことのない9.11の記録が提示される。火曜日には、ペンタゴンに突っ込んだアメリカ航空77便の内部の写真が初めて示された。ムサウイの弁護士は、これを止めさせようとした。写真は、焼けただれた死体を見せた。生存者は、自分たちの体験と生き残ったという負い目の感情について涙ながらに語った。ムサウイは、この証言を無感動に聞き、「今度やるときはペンタゴンを全焼させてやる」と叫んだ。
 昨日の裁判では、法廷で初めてペンシルヴァニア州の森林に墜落した「ユナイテッド・エアライン」93便のコックピット内部の音を収録したテープが回される予定であた。証拠提示の内で最も重苦しい瞬間だった。乗客がテロリストをやっつけようとした際に、UA93はペンシルヴァニア州のシャンクビル付近に墜落した。録音テープは、乗客の家族の干渉によってオーディオ・データとしては、証拠物件の中に採用されなかった。ただ記録を紙に書き直したものが現れるはずである。4月28日にはUA93を題材にした映画が公開される。
 原告は記録を実演することを主張したがその理由は、彼らの死刑求刑がムサウイが2001年8月16日以後に計画されていたテロ攻撃についての知識を漏らさず、それによって何千人もの被害者の測りがたい苦しみに対して責任があるという事実に基づいているからである。来週、最終弁論を行う予定の弁護団は、被告が統合失調症であると主張するだろう。統合失調症の患者は、アメリカでは処刑されない。弁護団は、ムサウイを分析し、典型的な行動パターンを示唆する証人を招く予定である。その上、彼らは、アメリカ政府がムサウイの黙秘がなくても航空機によるテロ攻撃の予兆を持っていたが、被告の黙秘よりも官僚的な思考のせいでテロ攻撃を防ぐことができなかったということを証明しようと試みるだろう。
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「米軍、ザルカウイの役割を誇大宣伝」と題する『ワシントン・ポスト』紙の記事。

2006年04月10日 | イラク問題
米軍の内部文書と計画を熟知した将校によると、米軍はイラクにおけるアルカイダの指導者の役割を大きく見せる宣伝キャンペーンを指導した。その効果は、ある米軍情報将校がザルカウイの重要性を過大に述べ、ブッシュ政権がイラク戦争を9.11テロに対して責任のあるこの組織と結びつけるのを助けた。
この内部文書の語るところによると、米国のキャンペーンはイラク人をヨルダン人のザルカウイに背を向けさせることを目的としている。米政府の当局者は、この宣伝の成功の結果、イラク人武装勢力がザルカウイの仲間を攻撃することになったと主張している。
過去2年間、米軍の指揮官達は武装勢力におけるザルカウイの役割を公表するのにイラクのメディアや他の手段を利用した。内部文書は、広範な宣伝活動の標的として「米国内の視聴者」と挙げている。
高級情報将校の何人かは、武装勢力内のザルカウイの役割はプロパガンダ・キャンペーンによって強調されすぎたと思っている。「ザルカウイと他の外国人武装勢力は致命的な爆弾攻撃を指揮したが、彼らは「実際の武装勢力の数の非常に僅かな部分に留まった。」イラクにおける軍の情報将校として勤務し、イラクの情報問題を扱う将校の一人であったデレク・ハーヴィー大佐は昨年夏カンサス州のフォート・レブンワースでの集会でこう述べた。
「長期的な脅威は、ザルカウイや宗教的過激派ではなくて、元のフセイン政権に属した連中である。」
最近、ザルカウイとアルカイダ組織との間の対立のためにザルカウイが降格されたか、組織から切り離されたという未確認情報がある。先週、ラムズフェルド国防長官は、ザルカウイとアルカイダの間に何が起こっているのか明らかでないと述べた。
軍の宣伝計画は、大部分、イラク人を目標にしている。
イラクにいるアメリカ官憲による情報漏洩は、普通のことだが、アメリカ人レポーターを使った宣伝作戦の証拠は稀である。
「報道を操作しようという試みは存在しない」とマーク・キミット将軍は金曜日のインタービューで述べた。
別のブリーフィング用のスライドは、米軍司令官がサダム・フセイン政権の残虐さが公表されるように命令した後、心理作戦班の軍人が、イラク内部でばらまかれただけでなく、フォックス・ニュースでも公開されたビデオ・ディスクを作成したと述べている。
高級将校達は、宣伝キャンペーンがうまく行った証拠は、過去数ヶ月間にイラクの部族武装勢力がザルカウイの仲間を攻撃したということである。特に文化的に保守的なアンバル県において。「われわれの見るところでは、アンバル県の人々、特にファルージャやラマディの人々は、テロリストや外国勢力と戦うことに決めたようだ」とバグダッドの米軍報道官であるリック・リンチ少将は金曜日に述べた。
[訳者の感想]武装勢力の中ではザルカウイが突出していた時期がありましたが、それが米軍の情報戦略だとは気がつきませんでした。最近、あまり名前が出てこないのは、アルカイダと揉めているせいでしょうか。ザルカウイに軍資金を提供していたのはやはりアルカイダだと思われます。
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「米国、イラク武装勢力と話し合い」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年04月09日 | イラク問題
イラク駐在アメリカ大使は、今日、米国官憲が何人かの武装勢力グループと会談していることを認め、この戦術は攻撃を少なくしたと主張した。
昨年6月イラク駐在アメリカ大使に任命されたザルマイ・カリルザードは、どのグループが話し合いに加わったかを明らかにしなかった。
だが、彼はサダム派あるいは「文明に対する戦争」を追求しているテロリストを除外した。要するにバース党の追従者とアルカイダに結びつく過激派を除外した。
彼は議論は実りつつあると言った。「連合軍に対する攻撃の数は下がった。先月は連合軍に対する攻撃が二番目に少なかった月だと思う。」
この会談を認める言葉が出たのは、イラク内務省がモスク近くでの爆弾攻撃に対する予告的な警告をするのと同時であった。
この警告によると、内務省は、7つの自動車爆弾が計画されているという情報を得ている。
カリルザード・アメリカ大使の公表によって、イラクの武装勢力を構成する多数の民兵グループのいくつかとの接触をアメリカ政府高官が初めて認めたことになる。
アフガン生まれのカリルザード大使は、イラクの不安定が内戦に発展し、もし、制止されなければ、より広範な地域戦争になることを認めていた。
「イラクは成功しなければならない。この国を昨日させるために人間的に可能なことをしないと言うことは、イラク国民にとってだけでなく、中東地域にとって、世界にとって、最も重大な帰結をもたらすだろう。」
、昨日、シーア派のモスレムにとって最も神聖な町であるナジャフにあるイマム・アリ廟の近くで行われた自動車爆弾で13人が殺された後で、宗派間の暴力の恐怖が掻き立てられた。
爆弾が爆発したのは、イブラヒム・ジャファリ首相を支持するデモがアリ廟で行われるのと同時だった。
歴史的にこの国の政治を支配してきた人口では少数派のスンニー派のモスレムは、シーア派主導の政府に反感を持ち、スンニー派モスレムの殺害にシーア派警察が絡んでいると非難している。
[訳者の感想]占領軍に対する抵抗よりも、宗派間の対立の方が、テロの理由になっているようです。シーア派対スンニー派の内戦状態といって良いでしょう。
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「ライス国務長官の言葉に、ラムズフェルド国防長官が反論」

2006年04月06日 | イラク問題
 ライス国務長官が先週、米国は何千という「戦術上の誤り」を犯したと言ったとき、彼女が何についてそう語ったのか自分には分からないとラムズフェルド国防長官は述べた。
ノース・ダコタ州のファーゴにあるWDAY局で火曜日に行われたラジオ・インタービューで、ラムズフェルドは、戦争中の軍事的戦術の変更を「間違い」と呼ぶのは、戦争の理解が足りないのを反映していると言った。ラムズフェルドは、彼のイラクに対する戦争計画を弁護したが、このような計画は敵との最初の接触以後に変更されるのは不可避であると付け加えた。
 「何故だって?敵にも頭があるからさ。敵はわれわれのやることをじっと見ていて、それに合わせてくる。そこでわれわれは常にわれわれの戦術、技術ややり方を適合させ変えなければならないのだ。」ラムズフェルドは、インタービューの相手であるスコット・ヘンネンに次のように言った。「誰かがそれは戦術的誤りだと言うなら、それは理解が足りない、少なくとも戦争が何であるかについての私の理解を持っていないのだ。」
 ライス長官のコメントに対するラムズフェルドの疑問は、イラクや他の問題を巡る国務省と国防省との間の長期にわたる対立関係の中で生じた。ラムズフェルドと国防省は、議会の議員から批判され、退役した将軍達からも武装勢力を予期しなかったというイラクでの誤算を批判された。
 英国への旅行の途中で、先週金曜日、ライス国務長官は、「われわれが何千もの戦術的誤りをしたことを私は認める。だが、戦略的決定は、歴史家が判断するものだ」と言った。
 翌日、このコメントについて質問されると、ライスは、「私は座って米国の戦術的誤りを数えたわけではない。コメントは比喩的に言っただけだ」と述べた。「私の述べた要点は、もしわれわれが決断したとすれば、われわれがした決断においてわれわれは疑いもなく間違いを犯したのだ。だが、重要なことは、大きな戦略的決断を正しくすることであり、サダム・フセインを倒し、イラク国民に平和と民主主義の機会を与えるという決断は正しい決断であったと私は確信している。」
 ラジオ・インタービューで、ヘンネンは、ライスが「われわれは数千の戦術的誤りを犯したと比喩的に述べ、重要なテストは、正しい戦略的決断をすることであり、それは歴史のテストだと示唆したと述べた。ヘンネンは、「あなたはライス長官の意見に同意するか?われわれは何千もの戦術的誤りを犯したのか?そしてこれはあなたのことを言っているのか?」とラムズフェルドに尋ねた。
 「正直に言って、彼女が何のことを言っているのか私には分からない」と彼は答えた。
ラムズフェルドは、過去三年間に合衆国が戦術を変えなければならなかった理由が、初めから予見できないイラク戦争の本性にあることを指摘した。
 「われわれが静的な状況にあって、その静的な状況にどう応えるかの点で間違い犯すならそれは間違いだろう。だが、われわれが直面しているのは静的状況ではなくて、ものを考え、頭を使い、常に適応している敵を相手にした動的状況なのだ。だから、われわれの司令官は常に戦術的適応をしなければならないのだ。」
[訳者の感想]バグダッドを占領したときに暴徒の略奪を全く制止せず、「自由を得た人間が行きすぎをやるのは大目に見るべきだ」などと言っていたラムズフェルドは、その間に旧イラク軍の武器が大量に持ち出され、それが反乱軍の手に入ることも予測できなった点で最大の失敗をしたと私は思っています。武力を使ってフセイン大統領を倒してもその後で、イラクが民主国家になる可能性についても国務省も誤算していたと思います。現在のアメリカは、イラクが民主国家になるかどうかにも余り関心はなさそうです。メンツを保ってイラクから撤兵する方法を考えているのだと思います。
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「学校暴力を巡る激しい論争」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年04月02日 | 政治と文化
 学校内暴力についてのベルリンの学校教師の危険信号を発する書簡は、外国人生徒の扱いに関して激しい議論を引き起こした。バイエルン州首相のエトムント・シュトイバーのような政治家は、移民受け入れと統合について考え直すことを要求している。「ドイツに統合出来ない者は、我が国を去って故国に帰らなければならない」とシュトイバーは、『ヴェルト日曜版』に語った。
 ベルリンの問題地区ノイケルンのリュトリ基幹学校(Hauptschule)の教師は、市庁宛の書簡で、生徒の暴力がもはや手に負えないという理由で、自分たちの学校を閉鎖することを要求した。この基幹学校の生徒の80%以上は、移民の家族の子弟である。金曜日以来、警官が学校の前にいて休み時間中の秩序を護っている。一月前から空席になっている校長の地位はふさがった。市庁はアラビア語とトルコ語ができるソーシャル・ワーカーを学校に配備した。
 文教担当参事であるクラウス・ベーガーと共に市庁に対する批判が激しくなっている。緑の党の代表レナーテ・キュナストは、『ベルリーナー・モルゲンポスト』紙で「市庁の全面的失敗」について語った。ベーガー自身が間違いを認めている。文教局が彼に知らせるのが遅すぎた。学校内での暴力の問題に手をつけるのは、教師達の書簡以来ではない。
連邦首相のアンゲラ・メルケルは、ベルリン市長で社会民主党所属のクラウス・ヴォヴェライトの下での学校行政が学校の状態に対して責任があると述べた。市庁は、教育政策に間違った強調をおいた。メルケル首相は、移民の子供のドイツ語知識を改善することを要求した。なぜなら、児童は教師の言うことを理解できなければならないからである。
バイエルン州首相のシュトイバーは、激烈な攻撃を加えた。「お人好しの多文化主義は、挫折した。ドイツに子供達と暮らしながら統合を拒否している外国人家族に対しては、生活保護給付は短縮されるべきだ」とシュトイバーは、『ヴェルト日曜版』に述べた。「統合を長期的に拒否する場合には、次のステップとして、ドイツ滞在も終わりにしなければならない。」緑の党党首のラインハルト・ビュティコーファーは、その提案を退けて、「それは該当者に対する悪意のある告発だ」と言った。
 ベルリン市長のヴォーヴェライトは、リュトリ基幹学校は、新しい校長とソーシャル・ワーカーの助けを借りて、妨害のない授業を取り戻さなければならないと述べた。新学期の初めに、新鮮なアイデアを持った新しい教師達が学校に配置される。「そこに長年勤務していた同僚は燃え尽きた」とヴォーヴェライトは言った。これに対して、社会的な焦点にある学校にもっと金を出すべきだというベーガーの要求を彼は退けた。「金が足りないというのは余りに単純すぎる」と市長は述べた。
 社会民主党幹事長フベルトウス・ハイルは、メルケル首相と同様、ドイツ語の知識を入学の前提にすることを要求した。「われわれは州政府と一緒に数年内にドイツ語が話せないでドイツの学校に来る生徒一人もいないようにしなければならない。」だが、ベルリンのリュトリ基幹学校の場合は、統合の問題だけではない。「われわれは社会階層がばらばらになってゆく社会的な崩壊過程を体験しているのだ。われわれの社会では、他の国々よりも、社会的な出自が、教育や生活の機会を決定している」と社会民主党の政治家は批判した。
 キリスト教民主同盟所属のヴォルフガング・ショイブレ内務相は、学校内暴力に対して断固とした処置を取り、降参しないことを要求した。「リュトリ基幹学校で起こったようなことは、社会全体の問題である。青少年は結局、明確な限界を引き、重要な規範を断固と貫くことを怠っている社会を反映しているすぎない」とショイブレは、『ビルト』紙に語った。
 CDU/CSU会派の代表代理であるカタリーナ・ライヒェは、ドイツではもっと多くの教師ともっと小さな学級が必要だと考えている。「爆弾が爆発するまで待っているわけにはいかない」と彼女は警告した。
 これを支持しているのは、連邦政府の統合問題担当のマリア・ベーマーである。「私たちは、基幹学校を強化し、基幹学校卒業生に職業上の展望を与えなければならない」と彼女は『ヴェルト日曜版』に語った。「私たちは、基幹学校を卒業してくる青少年にもっと多くの訓練場所を与えなければならない。」ベーマーは、ノイケルンの事件を防ぐためには、もっと多くのソーシャル・ワーカーが必要だと述べた。「事実上、学校にだけ任せてきた。」リュトリ基幹学校の教師達は、生徒を混ぜるために、彼らの学校を実科学校(Realschule)と合併するように要求していた。
[訳者の感想]今ドイツで一番大きな国内問題は、アラブ系トルコ系の生徒が80%を越えたベルリンの基幹学校で生徒間だけでなく教師に対する暴力が頻発し、先生の言うことを聞かないため、その学校の先生達がベルリン市庁に学校を閉鎖するよう要求した事件です。基幹学校とというのは小学校4年生終了後に進学できる5年制、あるいは州によっては、6年制の学校で、日本で言うと小学校上級と中学とを合わせたような学校です。小学校の4年が終わると児童の一部はギムナジウムか実科学校か基幹学校に進学し、その後社会に出て就職することになります。ギムナジウムを卒業した生徒だけが原則として大学に進学できます。基幹学校の職業訓練は十分でないようで、基幹学校の卒業生に就職の機会は余りないようです。基幹学校の生徒の12%から23%は、未修了まま退学するので、未熟練労働しか就くことができないようです。これは結局、ドイツの全人口の8.8%に達する外国人、特にアラブ・トルコ系の移民をどう統合できるかというもっと大きな問題の一部だと思います。
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「新しい種類の軍事行動と開発援助」、リフキンの近著『ユーロピアン・ドリーム』より。

2006年04月01日 | 国際政治
 ヨーロッパ連合の外交安全保障政策は、二本の柱の上に築かれている。第一の柱は、軍事的参加の役割を領土の防衛についての古い国民国家的考え方から離れて、「平和維持と人道的介入」という新しいトランスナショナルな考え方にむけて再定義することである。第二の柱は、国民と国家の間のより大きな協力を確保するために、「経済援助」を外交政策として使用することである。危機紛争の解決がヨーロッパの軍事的目的の中心になっている。過去半世紀の間、ヨーロッパ連合のメンバーは、世界中の紛争地域に派遣された平和維持軍の80%を提供し、再建のための基金の70%を拠出した。時に「しっかりした平和維持」とか「第二世代の平和維持」といわれるヨーロッパの軍事作戦の目標は、戦っている当事国の間の暴力を停止し、効き目のある平和的合意を確立するための条件を作り出すことである。この種の軍事的介入は、全く新しい軍事的戦略を必要とする。「安全な港」や「飛行停止地帯」や「人道的廊下」というような新しい軍事用語は、近年、事典の一部になった。 新しい軍事的方式は、通常の軍事的参加とは反対の仮定から出発する。古い軍事的図式では、考え方は、敵に最大の兵員の損害を与えることであった。新しい軍事的図式では、目標は、紛争当事国の双方における兵力の損失を最少にすることである。兵士に対する命令は、もはや、自分の生命を危険に曝し、敵を殺すことではない。平和維持部隊は、別の使命を持つ。市民の生命を救うために自分の生命を危険に曝すことである。ロンドン経済大学の「グローバルな統治と人権」担当教授であるメアリ・カルダーは、次のように簡潔に言う。「合法的な武器の担い手である兵士は、自分の国のために死ぬ覚悟がなければならかったが、平和維持軍の兵士は、人道のために自分の生命を危険に曝すのだ。」ヨーロッパ連合の構成国が提供した平和維持軍の兵士の数は、米国の10倍に達する。「ヨーロッパは、世界の警官であるという責務をアメリカの肩に背負わせている」というしばしば聞かれるアメリカ人の主張は嘘である。 ヨーロッパ連合は、人権についてのヨーロッパ合意を侵害する場合には、秩序回復のために、どの構成国の国境へも軍隊を送ることが出来るという考え方自体、革命的である。軍事行動の目的は、もはや土地を占拠したり、人々を支配したり、財産を蓄えたりすることではなくて、むしろ、人々の普遍的な人権を保護することである。雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載された論文の中で、レスリー・ゲルブとジャスティン・ローゼンソールは、この新しい種類の軍事的思考の歴史的な重要性を指摘している。EUのような統治制度は、彼らが軍事的行動の目的をどのように感じるかの点で根本的な変化を示している。「考えても見たまえ。道徳が主権を打ち負かすという原理を国家が是認しているのだ。」 
 ヨーロッパ連合の外交安全保障政策のもう一つの柱は、「開発援助」である。大抵のアメリカ人は、合衆国が世界中で一番気前の良い国だと思っている。それは事実ではない。アメリカの対外援助は、国民總収入(GNI)の僅か0.1%であり、ヨーロッパ諸国の3分の1に過ぎない。ヨーロッパは、世界中の民間の開発援助の50%を提供し、世界中の人道援助の47%を提供している。米国は36%を提供しているに過ぎない。2002年には、EUの人道援助は、殆ど12億ユーロ(1680億円)に達した。人道援助は、難民や避難者への援助を含み、緊急援助は、自然災害や民族紛争の犠牲者を助けている。だが、合衆国は、食糧援助では指導的供給者である。ヨーロッパの開発援助の増大する割合は、構成国からEU自体へと移されている。現在、EUは、構成国によって集められた開発援助基金の17%を管理している。(以下省略) 
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