海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「アメリカは、歯を食いしばってがんばり抜くだろう」と題する『ツァイト・オンライン』の記事。

2008年12月31日 | 国際政治
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シンガポールの元首相りー・クワン・ユーの見解によれば、金融危機にもかかわらず、米国は、まだ、数十年間経済的にも軍事的にも台頭しつつある中国よりも優勢であるだろう。今後、20年間に中国の軍事力は、遙かに攻撃力を持つようになるだろうが、彼らは当分はアメリカの後ろに取り残されるだろう。中国人達は、30年、40年、50年間は、米国を挑発しないだろう、と1959年から1990年までシンガポール首相だった85才のリーは、述べた。
アメリカの経済的将来について、リーは、「10年から15年ぐらいの間は、再び活性化したアメリカが見える。もはや、すべてに優越した勢力ではないが、あいかわらず、世界の最大の国民経済を持っている。もっとも、米国は、彼の見解によれば、危機を克服するのに助けを必要としている。米国だけでは、この危機は解決できない。彼らは、欧州、中国、インド、そして多分ブラジルを取り込まなければならない。
模範としてのアメリカに対する世界の信頼は揺るがされた。誰も、もはや、ワシントン合意を信じない。それによれば、自由市場と民主主義さえあればいい、すべてはうまくいくはずだった。誰も、もはやこのことを信じない。欧州でも、アジアでも、ラテンアメリカでも、それどころかアフリカでも誰も信じていない。
 経済危機や企業の倒産が社会不安を引き起こした場合、中国は強硬な国家指導を行うだろう。暴動が広がるリスクを、犯さないだろう。万一、そういうことになれば、暴動は徹底的に弾圧されるだろう。これは、人権についての繊細な考察や、世界がどう考えているかによってたじろぐような政府ではない。「中国政府に関心があるのは、秩序と安定であり、政権の生き残りであり、一党支配国家の生き残りである」とリーは述べた。
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「自動車王国の危機」と題する『ツァイト・オンライン』の記事。

2008年12月27日 | 社会問題
自動車産業は、ドイツの輸出の原動力だ。現在、工場は操業停止状態。どこでも時間短縮。将来を考える時間。自動車で食べているか、自動車を利用している人々の出会い。労働者、経営委員会、市長、ディーラー、車を運転する人、危機後の時代のために製品に手を加えている開発者。
ジンデルフィンゲン市のメルツェデスの工場。メルツェデス社の屋上の大きな星印が道しるべになった。そこでは、3万6千人の労働者が働いている。流れ作業で仕事をしている4人の人に聞いた。
「われわれはEクラスの組み立てをやっている」とルイジ・ロッコは言う。彼はドイツにやってきた最初期の外国人労働者だ。Eクラスは、メルツェデスそのものである。ロッコの仕事は、車の最後の仕上げである。「私は37年間、ダイムラー社で働いて来た。こんなことは初めてだよ」とグレイの職工服を着た60才の労働者は言う。次の日、つまり、12月12日に、製造工程で働く2万8千人の従業員にとって、4週間の強制休暇が始まる。工場の管理部は、在庫を作る気はない。それは労働者にもわかっている。しかし、彼らはなんとなく、落ち着かない。なぜならば、「その後で、彼らの多くは、復活祭までは、操業短縮に入るからよ」とレークリンデ・シュルツ看護師は言う。55才の看護師は、16年前にダイムラー社で仕事をはじめた。彼女は自分のことはあまり心配していない。だが、息子が心配だ。彼も工場で働いている。家を買ったばかりだ。自己資産はあまりない。
「俺の親父は、おまえはダイムラーに入れたんだと言ったよ」とトーマス・ハルトマンは言う。当時、彼は18才だった。現在、彼は40才だ。「グローバル化は、専門労働者にとっては、大したことはなかった。」「俺たちがクライスラー社と一緒じゃなくて、良かったよ」とラマザン・ゼンチルチは割り込む。「さもなければ、オペルよりも悪かっただろうよ。」塗装工であるこの32才のの父親は、夜学で経営学を勉強している。今分かったことは、単に学習した職業でうまくやることに頼るわけには行かないということだ。
 最初に出会ったロッコは、下請け業者のところで、もう少しで仕事を失うところだった。以前は、彼はいつもクリスマス前後に2週間半の休暇を楽しんだ。今度はそうはいかない。「この先どうなるか、誰にも分からないわ」とレークリンデ・シュルツは言う。彼女は、仕事については不安はない。企業と労働組合の間の契約によれば、2011年までは解雇されない。「私たちが全金属産業労働組合(IG Metall)をもっているのは良いことよ。」
 春には新しいEクラスができる。通常、このようなモデル・チェンジの際には、生産は急速に向上する。予告された短時間労働は、執行部の慎重な計算によるものだ。「金融危機に対しては、彼らは何もできないだろう。だが、彼らがもっと節約できるエンジンの開発をずっと以前からはじめていたらよかったのに」とロッコは言った。(以下省略)
[訳者の感想]ドイツには「全金属産業労働組合」(イーゲー・メタル)という強力な組織があるので、労働者は、不況のときでも簡単には首を切られないようです。
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「テロの危険に対する政策は、理性的か」と題する『ツァイト・オンライン』の記事。

2008年12月21日 | 災害と事故
ツァイト紙:テロの危険、気候変動、電磁波照射は、そこらじゅうにわれわれを待ち伏せているように見えます。ですが、私たちはそれを一体正しく見積もっているのでしょうか?
ユンガーマン:われわれに印象を与えるのは、いつも、2001年9月11日のテロのような大事件です。私たちはこれに注目し、それに対して不安を持ちます。われわれにとって不気味である事物をより多く恐れるわけは、われわれがそれを理解しないからです。携帯電話から出ている電磁波は、手でつかめませんからね。
ツァイト紙:私たちは、リスクを間違って捉えているのでしょうか?
ユンガーマン:人間が統計的なデータによっても、科学的な認識に適したやり方でも、あるリスクを評価できないということが多くの人を不安にさせているのです。日常、車を運転していて、重大な事故が起こらなかったというのは、単にわれわれが運がいいからです。このことを、われわれはすぐに忘れてしまいます。ドイツでは毎日、平均13人が交通事故で死んでいるのですが。このことは、脅かされているという感情は、事故がおこるかどうか、どれぐらいしばしば起こるかということとは、あまり関係がありません。
ツァイト紙:それでは、私たちは感じられたリスクにだけ従っているのでしょうか?
ユンガーマン:そうです。私たちは、それを知覚されたリスクと呼びます。保険会社は、そうやってお金をもうけています。彼らは泥棒に入られて荒らされた家の中で悲しんでいる女性の写真を見せます。ドイツでは泥棒に入られる確率はとても低いのです。ですが、保険会社はそんなことは言いません。私たちはただ、恐ろしい写真を見て、自分にもこれは起こるかもしれないと想像するのです。こうして、家財に対する保険契約が結ばれることになります。
ツァイト紙:そうすると、知覚されたリスクに従うことは、間違っているかもしれませんね。
ユンガーマン:問題はそのことです。家に泥棒が入るという確率を過大に評価し、心臓麻痺になる確率を過小評価するとしたら、それはかなり危険です。電磁波の危険のように、感覚的に認識できない出来事の危険度を過大に評価することは、十分に意味があります。危険は実際現実的であるとわかるかもしれず、大きな損害を与えるかもしれません。
タァイト紙:ですが、憶測されたテロの危険のために、政治的な行動主義が始まるとしたら、私たちは過剰反応をしがちではないですか?
ユンガーマン:出来事による衝撃は、リスクの判定を短期間に非常に高めます。このことは、飛行機事故の例でわかっています。そして、しばらく経つと、われわれの判断は以前のレベルに戻ります。(以下省略)

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