海外のニュースより

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「アフマディネジャド、ブッシュにキリスト教的価値について講義」と題する『ニューヨーク・タイムズ』記事

2006年05月11日 | 国際政治
 教師の口調と信者の自信をもって、イラン大統領の最近のブッシュ大統領に宛てた書簡は、西欧の民主主義は失敗したし、イラク侵攻や囚人に対するアメリカの扱いやイスラエル支持は、キリスト教的価値と折り合わないと述べている。
 イランの核開発計画を巡って西欧諸国と対立するはめになったマームード・アフマディネジャド大統領は、月曜日に18ページに及ぶ考察をした。
 書簡は、アメリカ高官によって重要でないとして片づけられたが、それはテヘランのものの考え方についての興味ある窓であることが分かったという人もいる。
 その書簡は、米国との政治的論争の一覧表を展開している。それはまた自分の宗教的信念について公にしているブッシュ大統領にキリスト教的価値に照らして自分の行動を吟味することを要求している。
 「われわれが見ているのは、世界中の人々が全能の神である主要な焦点に向かって押し寄せているということだ」とアフマディネジャドは書いている。「疑いもなく神に対する信仰と予言者の教えを通して、人々は彼らの問題を克服しようとしている。あなたに対する私の質問は、あなたは彼らの仲間入りをしたいかということだ。」
 広範にわたる書簡は、完全に宗教的な用語で縁取りされ、反米主義のポピュリスト的な宣言を展開している。それは中近東の人々の間にイラン大統領の信奉者を作りだしたもののをいちいち列挙している。彼は自分自身をムスリムの擁護者としてだけでなく、アフリカやラテン・アメリカの抑圧された人々の擁護者でもあると提示している。
 だが、彼の主要な焦点はシーア派イスラム教にとって中心的な宗教的原理である。特に公正な支配者と抑圧に対する戦士という概念である。彼は自分のほうが優位にあるのだという調子で、アメリカの偽善の実例を展開するのに問答形式を用いている。
 「私の基本的な質問はこうだ。世界の他の部分と相互作用するこれより良い方法はないか?今日、何億というキリスト教徒や何億というムスリムやモーゼの教えに従う何百万の人々がいる。すべての神的な宗教が共有し、敬う一つの言葉がある。それは一神教であり、あるいは唯一の神があって他の神は存在しないという信念である。」
 それは何ら特別な提案をしていないが、書簡は一神教の諸原理に基づく議論の共通の地盤を確定しようとしている。
 「もし米国がその手紙を退けるなら、それは大きな間違いであるだろう。それを哲学的宗教的歴史的書簡だと考えるならば、ブッシュ大統領がそれに返答するというのは良い考えだ」とテヘラン大学の政治学教授ナセル・ハディアンは述べた。
[訳者の感想]ブッシュ大統領はこんな宗教問答には全く関心がなさそうです。イランの大統領には相手がどういう人間であるかが分かっていないように思われます。アメリカはこれはイランの時間稼ぎの一種だとしか受け取っていません。中世だったら、イスラムの支配者がこんな手紙を寄越したら、例えば、13世紀前半、シチリアのパレルモに居城があった神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒII世ならもう少し真面目な応対をしたに違いありません。現代の西欧の政治家の多くはもはや宗教的哲学的論争には興味がないのです。イラン大統領にとっては、お気の毒というよりありません。
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