海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国は強大であろうとしているが、傷つきやすい」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事

2007年11月29日 | 中国の政治・経済・社会
自己ベスト-2
小田和正
BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)

このアイテムの詳細を見る

シンガポールのリー・クアンユー元首相は、北京で、シンガポールの新聞の通信員を呼び集めた。11月半ばの胡錦涛主席との会談後、彼は中国の元首が途中で与えた告知を非常に警告的であるとみなして、それを素早く公にしようとした。
それは、中国からの独立を画策している中華民国に対する警告だった、とシンガポールの新聞は、後で報道した。北京の指導者たちは、何人かの台湾政府要人が引き出した間違った結論について憂慮しているということだった。
実際、台湾の要人は、台湾が3月22日の選挙で、国連加盟についての国民投票を国民に呼びかけた場合、中国が手をつかねて見ているだろうと思っている。台湾の政治家たちは、それが2008年の北京オリンピックを危険にさらしたくないから、北京政府がそれに対して何もしないだろうと恐らく思っているとリー・クワンユーは、胡錦涛主席との話し合いを漏らした。
「だが、この思いこみは致命的な間違いだ」と、中国指導者の心理を誰よりも良く知っているリーは心配している。彼は自分が胡錦涛主席から聞いた思い切った言い回しを中国語で繰り返した。「皿が並んでいても、ネズミめがけて投げる。」ドイツ語で言うと、「子供をたらいごと流す。」元シンガポール首相にとって、明らかなことは、北京は、虚勢を張っているのではない。中国の指導者たちは、高度の国民的関心である台湾問題で、危険を恐れない。オリンピック競技会のボイコットも恐れない。
台湾は、良く耳を傾けるべきだとリーは、警告したが、彼の警告は米国にも向けられていた。この台湾の馬鹿げた歩みを米国の影響力で止めない場合は、想像できない帰結が生じるかもしれないと言うのである。
台湾を国民投票前に押しとどめ、最後の対決を避けるために、中国は同盟国を探している。国民投票は、国連加盟を通じて台湾の独立を国際的に承認させる陳水篇大統領の試みであるというのだ。これに対して力で反応するぞという中国の警告は、ヨーロッパにも向けられている。今日、北京で始まる第10回「EU中国サミット」の一週間前に、高位の外務官僚が北京の外国通信員と会見した。
彼らはアンゲラ・メルケル首相のダライラマ接見に対する批判や、EUとの経済問題では、新しいことは何も言わなかった。新しいことは、EUサミットが台湾の国民投票に反対する明確な告白を言うことを望んでいるという点だった。
民主的な基本的人権の行使に触れる国民投票問題では、ヨーロッパは意見が分かれている。「欧州連合」大統領のホセ・マヌエル・バロソは、火曜日、この問題を避けた。彼は、ヨーロッパは、明確な中国政策を追求し、対話を促進する中国と台湾との間のあらゆるイニシャチブを歓迎すると述べた。
しかし、国民投票については、彼は中国指導部との今日の会談の後で、態度を決定できると述べた。ブリュッセルで中国の特派員から国民投票についての意見を尋ねられた外務大臣のソラナは、「心配している」と述べた。
例外はサルコジ・フランス大統領である。彼は、最初の中国訪問で、台湾問題の現状維持と独立や国民投票を拒否した最初のヨーロッパの政治家である。しかし、同時に、サルコジは、「すべての一方的な行動は正当化されない」と付け加えた。中国でオリンピック競技会が開かれる2008年後半に欧州連合大統領を務めるフランス大統領に、北京政府は、希望をかけている。
中国の新聞どれも、サルコジの国民投票反対の記事を第一面に掲げた。『中国日報』は、彼がはっきり「一つの中国」原則を告白したという理由で、彼を賞賛した。火曜日に彼は黄金の握手で中国を立ち去った。サルコジは、200億ドルの経済協定を手に帰国した。
[訳者の感想]記事を書いたのは、ヴェルト紙にしばしば優れた記事を書いている中国特派員のジョニー・アーリングです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「金持ち中国のジレンマ」と題する『ツァイト』紙の記事。

2007年11月27日 | 国際経済
 少し前まで、中国は、安価な製品を製造し、輸出する世界の工場だと思われていた。中国が世界の金融大国であるとは誰も言わなかった。だが、あっという間に中国は金融大国になった。中国共産党のコンツェルン「中国石油」は、数年前にはまだ、落ちぶれた国家企業だった。初めて上海株式市場に上場すると、それは、アメリカの石油コンツェルン「エクソン」をしのいで、世界で最も株価価値のある企業になった。
 それから、中国中央銀行のシュウ・ジアンが来て、次のように言った。「基軸通貨としてのドルは、動揺している。ドルで表示された資産価値の信用価値は下がっている。」それは、ドルがユーロに対して記録的な下げを示した日だった。
 予想できなかったのは、為替の展開ではなくて、初めて中国人がこのような事柄について、一緒に語ったという事実である。中国共産党の幹部は、こういう言葉を述べて、ドルを下落させたのだ。
 だが、それでもって彼らは自分自身に損害を与えたかもしれない。なぜなら、彼らは、予想されなかった問題を前にしている。つまり、あまりに沢山のドルを持っているという事実である。「われわれはわれわれ自身の金を使えない」と北京の社会科学院経済研究所の経済学者ズオ・ダペイは不平を述べた。責任は、中国中央銀行にある。「それは外貨保有量をあまりに急速に増やしてしまった」とズオは言う。
 数年前から、中国中央銀行は、「人民元」をやすく保つために、ドルを大量に買った。人民元は、中国の通貨のことである。低い人民元は、中国の輸出経済を助けた。なぜならば、中国製の商品が外国人にとってはそれだけ安かったからである。こうして、中国は世界中で最も多くの外貨を保有することになった。
 二年前に、北京政府は、ドル・ペッグを少しゆるめた。元は一日に0.5%だけ上下してもよいということになった。それは理論的には平価切り下げに等しい。過去二年間に、中国通貨は、ドルに対して約5%だけ切り上げられた。これはあまり劇的には聞こえない。もし元が自由に取引されれば、ドルに対して、30%か40%切り上げられるだろう。だが、中国中央銀行にとっては、5%の切り上げでもかなりのものである。なぜなら、中国が保有する外貨を1兆ドル(108兆円)と見積もると、500億ドル(5兆円)の目減りを意味するからである。腐敗した共産党幹部でも、良心の呵責を覚えるだろう。
「われわれは、弱い通貨に対して強い通貨を優先すべきだろう」と北京の人民会議の常任委員会副議長である陳シウエイが言った。この言葉がきっかけで、先週、ドルはさらに下がった。(以下省略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「三峡ダム付近で、地崩れ」と題する『BBCニュース』の記事。

2007年11月24日 | 中国の政治・経済・社会
 事故は、巴東県で起きた。660キロある三峡ダムに隣接する山並みで、鉄道のトンネル工事が行われていた。
 新華社通信によると、事故の原因は不明であるが、ダムが周囲の環境を脅かしているという警告が増えている最中に起きた。
 専門家たちは、ダム周辺での地滑りの危険が増大していると警告してきた。三峡ダムは、世界最大の発電用ダムである。それは、中国の最大の川である長江をせき止めており、2008年末には、完成の予定である。
 地滑りは、火曜日の朝に起こった。土砂と岩石が四人を飲み込み、道路を封鎖した。一人は、後に救出された。新華社によると、この地域は数日来大雨に見舞われていた。
住民が「ロイター通信」に語ったところによると、この地域は、貯水池の水位が上昇するにつれて、地震や地滑りが増えている。
 先月、国営メディアは、少なくとも4百万人がこの地域から移動する必要があると伝えた。険しい山の斜面の土砂崩壊によっておこる地滑りの危険が増大しており、飲み水の汚染が進んでいる。
 火曜日、三峡ダム計画委員会は、この地域を保護するための新しい措置を公表した。
この措置には、水道供給の保護と、町や企業が貯水池に汚染物質を投棄するのを防ぐことが含まれている。しかし、声明のなかで、委員会は、ダムよって発生した環境問題を解決するには「長い道のり」が必要だと述べた。
[訳者の感想]兵庫県の猪名川ダムでさえ局地地震の原因になったぐらいですから、三峡ダムから生じる影響はまだ、いろいろありそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「学校は、ドイツの子供たちを不幸にしている」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2007年11月12日 | 教育と科学技術
ドイツの子供たちは、自分たちの家庭では高い程度に安らぎと幸福を感じている。しかも、社会のすべての階層で。これに対して、学校は子供たちにとっては、年齢が高くなるほど、陰鬱な「反対世界」であり、「幸福の破壊者、ナンバー・ワン」だと思われている。これは、四歳児から十二才児の幸福感を調査した最初の研究報告の驚くほど分裂した結果である。それによると、40%の子供は、自分の子供時代を「非常に幸福」と評価し、44%は、「幸福」、14%は、「幸福でも不幸でもない」と述べている。これは、傾向として「情けない」と言っていると評価されうる。
1989年以来、世界中で、幸福に対する児童の権利が存在する。当時、国連は、「人格を完全に発達させるために、児童は、幸福と愛と理解に包まれて成長しなければならない」と要求した。だが、その18年後、子供たち自身が、どれほど幸福を感じているかが、科学的に調査された。その最も重要な結果が「ヴェルト・オンライン」に提出されたこの研究報告は、ザルツブルク大学の幸福度研究者であるアントン・ブッハーの指導で、「中央ドイツテレビ局・メディア研究」のために作成された。
研究者たちは、あらゆる社会階層に属する1,239人の児童を対象に調査を行った。児童向けテレビ「タバルガ・テレビ」の開局10周年を記念して、この研究結果は、木曜日に、マインツで開かれる専門学会で紹介される予定だ。この研究報告は、児童福祉にとっての家族におけるカウンセリングの意味について実際の議論に影響を及ぼすかもしれない。
以前の青少年研究と比べて、この研究は、世代間の関係におけるある変動を確認している。子供たちが両親や祖父母たちとこれほど良く理解し合ったことは一度もなかった。彼らとの人間関係は、摩擦がなく、協力的である。
児童の幸福は、家族における健康と活動と密接に関係している。愛情と承認と支持によって形成された家庭的な雰囲気や、共同の活動は、幸福を増進する。もっとも、この効果は、年齢が増えるとともに、減少するけれども。次に育ち盛りの子供にとって、親が真剣に取り合ってくれているという感情が、特に重要である。
「片親の子供は不幸だ」という偏見は、この研究では、否定されている。ブッハー教授によると、片親に育てられた子供たちの半分以上は、自分をむしろ「幸せだ」と述べている。
今日、子供たちは、家庭で、以前よりもずっと多くの権利や発言権を持っているとミュンヘン大学の家族研究者であるクリスチャン・アルトは述べた。児童は、高度の社会的コミュニケーション能力を展開しているが、家庭内の自由な空間に非常に関心を持っていると述べた。
児童の幸福にとって、決定的なのは、学校の状況である。ドイツの学校の評価は、その場合、総じて良くない。容易に学習し、積極的に授業に参加し、学校を刺激的だと感じる児童は、そうでない児童よりも、幸福である。宿題に長時間かける必要がない生徒の66%は、「とても幸福だ」と述べている。宿題に苦労したり、何時間もかける生徒の39%が「幸福だ」と述べている。
生徒の年齢が高くなるにつれて、彼らはますます学校を批判的に見る。6歳児の50%は、まだ、「学校へ行くのは好きだ」と言うが、13才児でそう言うのは、わずかに16%である。
高等学校の生徒は、どちらかと言えば、学校に満足しているが、「基幹学校」の生徒ははっきりと満足していない。
学校は児童の福祉を増進することができるが、ドイツでは反対であると、中央テレビ局の「メディア研究部」のズザンネ・カイザーは述べた。比較的年長の生徒は、授業があまりおもしろくなく、先生たちはますます、親切でなくなると感じている。この研究報告の責任者たちは、自分たちの分析を、子供たちを将来もっと目標を絞って育成するために、ドイツの学校制度を改革せよというアッピールだと理解している。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「なぜ、大学入学資格(アビツーア)は、テロを防げないのか」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2007年11月06日 | テロリズム
ジョージ・W・ブッシュとオスカー・ラフォンテーヌ(ドイツの左派政治家)、アル・ゴアとゲルハルト・シュレーダー(元ドイツ首相)に共通しているのは何か。彼らはみな、貧困と教育の欠如がテロリズムの原因だと信じている。彼らはみな間違っている。
注意深い観察者は、(1970年代にテロを行った)ドイツ赤軍のメンバーが大学教授や牧師の子弟であったことを考えて、マンションや大学入学資格は、テロリズムの誘惑を防がないということを予感していたかもしれない。
しかし、まさに、米国で、個人の経済的状況とテロリズトになりやすさの間に関係があるという主張が頑固に維持されている。本土安全省のマイケル・チャートフなどは、二年前のロンドン・テロは、ヨーロッパがそのムスリムについて特別の問題を抱えていると述べた。米国では、ムスリムは、一般的にもっとうまく統合されているから、「自家製」のテロリズムは殆ど何の役割も演じていないのだと彼は述べた。
アメリカ人にとって、良い知らせは、米国のムスリムが実際、より良く統合されているということである。当然、米国に住んでいるムスリムの圧倒的多数は、ドイツや、イギリスや、スペインのムスリムと同様に、彼らの子供たちのために、より良い仕事を未来を望んでいる。
だが、彼らにとっての悪いニュースは、マーク・セージマンや、エドウイン・バッカーや、アラン・クリューガーや、ロバート・レイケンが、「イスラム原理主義者のテロリストは、大多数平均以上の教育を受けており、社会の中流階層の出身だ」ということを裏付けたということである。
 そういうわけで、(WTCに旅客機でつっこんだ)モハメド・アタの周辺にいたハンブルクのアルカイダ細胞は、奨学金を給付された大学生から構成されていた。2005年にロンドンの地下鉄テロを実行した4人のテロリストはイギリスの中流階級の出身だった。昨年、漫画でムハンマドを侮辱したことに対する報復として、ドイツの旅行客を殺そうと、列車内にトランク爆弾を仕掛けたテロリストたちは、技術系の学生だった。
昨年6月にロンドンのナイトクラブとグラスゴーの空港で自動車爆弾を爆発させようとした「テロの医師」と呼ばれた医師のグループも、テロリスト下層階級説を反駁している。
米国でも事情は似ている。「ラッカワンナ・グループ」のメンバーは、フットボールをするティーン・エージャーだった。彼らはアルカイダの援助で、テロ訓練キャンプに参加し、終身刑を受けた。2007年5月には、FBIは、6人を逮捕したが、彼らは、できるだけ多くの兵士と警察官を殺すことを目的にしていた。容疑者のうち2人は、ある中流階層の工場の所有者で、他のメンバーは、サービス分野で働いていた。
昨年米国で起こったテロ未遂事件では、ジョン・F・ケネディ空港、ニューヨーク地下鉄、ロサンジェルス国際空港、シカゴのシアーズ・タワーが標的だった。
今年5月に行われた「ピュー研究所」の世論調査によると、アメリカ系のイスラム教徒の36%は、米国でのイスラム急進主義の増大を心配している。他方では、回答者の13%は、イスラム教を守るためには、自爆テロは当然だと答えた。回答者の5%は、アルカイダに対して好意的な意見を持っていた。
アメリカ在住のムスリムの95%が、愛国者だとしても、いくつかの理由でジハードに参加しようと思っているイスラム主義者は十分いる。
個人的な貧困と教育の不足が、テロの原因だとする主張に固執することは、米国の内政
がパキスタン出身のイギリス人の入国制限や、メキシコ国境の守りを固めることに集中するということになってはならない。さもないと、アメリカン・ドリームは、すぐに悪夢になるかもしれない。
[訳者の感想]筆者の意図が、パキスタン出身のイギリス人の入国制限やメキシコからの密入国制限に反対することだとすると、立論の根拠全体がちょっと怪しいのではないかと思います。その前提となっている事実はこれまでにも知られたことです。どうして、教育のあるイスラム教徒がテロリズムに走るのか、この問題に答えるべきでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする