海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国貿易統計の正確さに対して疑惑が持ち上がっている」と題するフィナンシャル・タイムズの記事

2013年04月11日 | 中国の政治・経済・社会
中国の最近の貿易データは、3月における輸入の増加と結びついて、輸出の急激な低下を示している。しかし、データの中の不安定さと矛盾とは、貿易統計の正確さに対する疑惑を引き起こした。
中国からの輸出額は、3月には昨年3月よりも10%増加したが、本年2月の輸出額と比べると、22%増えている。ところが、3月には、輸入額は14.1%急上昇している。中国税関当局が4月10日に発表したデータでは、2月よりも15%以上下がっている。
この不安定さの一部は、旧暦1月の休暇が長かったことで説明される。つまり、今年は旧暦の春節が2月にずれて、2月の休日が多かったという訳である。
「輸出額の10%増加という数字の背後には不愉快な現実が隠されている。つまり、貿易データが信頼できないか、あるいは、信頼できるとしたら、輸出として記帳されたものが、実際は輸出ではなかったという事実だ」と「IHSグローバル・インサイト」の中国エコノミストであるアリステア・ソーントンは語る。
香港という独立の行政区への中国の輸出は、昨年同月よりも、93%も増えている。これは1995年3月以来の最も急速な増加である。これに対して、EUへの輸出額は、14%下落し、米国への輸出は、6.5%下落している。
3月中の香港への輸出総額484億ドルは、中国の第二の輸出国である米国への輸出総額268億ドルの二倍になる。
「香港への輸出の大部分は、実際には再び、最終の目的地としてのEUや米国へと再輸出されているとしても、これはいささかつじつまが合わない。」
 香港への輸出額の明らかに大きすぎる増加は、昨年後半に始まった傾向である。
 中国税関当局は、2月末までの3ヶ月間の香港への輸出額は、950億ドルだったと発表した。ところが、行政上独立している香港の税関当局は、その大部分が再び外国へ輸出される中国大陸からの輸入額は、590億より少なかったと報告している。北京政府は、台湾への輸出額は、1月には53%増えたといっているが、台湾政府は1月中の中国本土からの輸入額は、35%増加したと述べている。
 アナリストの多くは、中国政府の高度に不安定で、ありそうもない貿易データは、北京政府の制限的な資本統制を避けるために貿易の送り状を装った資本移動の結果であるようだと言った。
 さらに、多くの輸出業者が政府からの輸出奨励金を利用するために、輸出商品の送り状を偽造しているという強力な証拠がある。また、あるアナリストたちは、中国の新しい指導者たちを喜ばせるために、中国の地方政府が予想される将来の輸出額も記載せよと強制しているのかもしれないと示唆した。(以下省略)
[訳者感想」この記事を読んで、中国政府の貿易統計があまり正確ではない理由がかなり分かりました。
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「政治局は、谷開來を使って薄熙来を閉め出す」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2012年08月10日 | 中国の政治・経済・社会
(前略)
谷開來は、普通の女性ではない。彼女は、国際的に名声のある弁護士であると同時に、問題になっている薄熙来の妻である。薄熙来は、今年、4月、規律違反で、政治局と常任委員会から除名された。その直前に毒殺疑惑を理由として彼女は告訴された。この大衆に人気のあるカリスマ的な政治家の事件にはいろいろな側面があって、彼女に対する告訴はその一つの面に過ぎない。犯罪や腐敗や権力乱用のどんな影も、中国の政治エリートの上に落ちてはならないのだ。特に10月に開かれる共産党大会の前には。そこでは、次の十年間の党指導部が選ばれることになっている。
 しかし、まだ解明されていない幾つかの問題がある。「なぜ、裁判は、薄熙来が住んでいた重慶で行われないのか?」、「なぜ、裁判は公開されないのか?」、「なぜ被告人あるいは被告弁護人の告訴に対する反論はないのか?」谷開來の裁判は、左翼愛国主義的な護民官薄熙来を手早く、音を立てないでお払い箱にするための手段に過ぎないように見える。薄熙来は、100万都市重慶の共産党書記長として組織犯罪を撲滅する一方、毛沢東以来の共産党的な歌や文化財の再活性化を行った。しかし、彼の大衆に訴えるやり方は、北京の党指導層の気に入らなかったのだ。
 確かに暴力団犯罪に対する彼のやり方は、人権を無視していた。弁護士や企業人たちは、役所の拷問を非難している。毛沢東語録や紅衛兵の歌は、彼らに文化大革命当時の悪夢を思い出させた。要するには、薄熙来には、支持者もいたが、反対者もいたのだ。腐敗と職権乱用と脅迫とが薄熙来の家族を巡って絶えなかった。そこに家族と親しかった英国人ニール・ヘイウッドの毒殺容疑が持ち上がった。薄熙来の片腕で重慶の警察を指揮していた王立軍がアメリカ領事館に逃げ込んで、谷開来がヘイウッッドの毒殺を使用人に依頼した件を暴露した。裁判所が選んだ弁護人は、谷開来が「殺人容疑を否定しなかった」と述べた。彼女には、10年以上の労働刑か、死刑が予想されている。

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「薄熙来スキャンダルは、中国の政治システムについて何を語っているか?」と題する論説。

2012年07月26日 | 中国の政治・経済・社会
 薄熙来事件は公式の解釈では、「薄熙来は法を破った、それ以上でもそれ以下でもない」というものだ。
しかし、公式説を除くと、すべての他解釈は、第18回党大会の助走となる権力闘争だという点では一致している。
 中国観察者たちは、中国の指導者の移行が、形式化され、制度化されているかどうかという点では意見が分かれていた。われわれが制度化をある過程をコントロールする公式的、または非公式的規則を打ち立てることだと理解するなら、新しい指導者を選抜する過程は、制度化されておらず、指導層自身がそれを変更するということが分かる。江沢民から胡錦濤への移動や現在の胡錦濤から習近平への移動は、派閥闘争で汚されている。江沢民は、胡錦濤に対して支配権を譲り、胡錦濤は10年も経って、習近平にそれを譲ろうとしている。この過程はもっと無秩序になる可能性があった。こう見ると、薄熙来の除去によって、集団指導はその存在への脅威を取り除いたと言えるかもしれない。
 しかし、薄熙来事件は、私の意見では、中国の政治システムにおける基本的な問題に光を当てるように思われる。それは現在の指導層の機構の中で取り組むにはあまりに困難な改革を必要としている。
 中国では去りつつある指導者たちが、登場する指導者を決定する。この方向は、常に妥協の結果である。私の意見では、薄熙来の性格や政策は、中国が現在直面している根本的問題に対してだけでなく、中国をどのように統治するかという問題に対して、決定的なアプローチを見たいと思っている人たちに訴えるものであった。だから、薄熙来の台頭は、中国の問題に対する現在の指導層の漸次的アプローチに挑戦するものであった。それだけでなく、それは集団指導という制度に対する挑戦であった。それゆえ、このエピソードは、単に指導をめぐる闘争以上のものを意味している。(中略)
胡錦濤は、9人の中央委員会によってなされた決定に従属していた。これは習近平になっても変わらないだろう。
 薄熙来のカリスマと彼が重慶で行った政策は、政治に対して次第にシニカルになった中国の公衆にアッピールした。彼のやり方は、9人の政治局常務委員のドライなテクノクラート的統治からの変更を約束していた。(中略)
 薄熙来事件は、あまりに個人的なイニシャティブは危険であり得るということを示した。改革がなければ、権力は常に抑圧によって維持される。もう一つの選択肢である体制内の改革と抑圧は、現指導部においては、推進力である。新しい指導部がどちらの道を取るかは全く不確実である。(終わり)
[訳者の感想]これは、コペンハーゲンにある「北欧アジア問題研究所」のサイトに書かれていた論説です。著者はクリスチャン・ゲーベルというドイツ人のようです。原文は英文です。薄熙来が中国の公衆の一部にとって大きなカリスマだったというのが果たしてどこまで事実なのか私には分かりませんが、ちょっと面白い論説なので訳してみました。
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「中国の運転手のマニュアルは、英語?」と題する『フィナンシャル・タイムズ』の記事。

2010年12月24日 | 中国の政治・経済・社会
中国鉄道省は、自国の高速列車は、一群の中国の技術者によって作り出されたのだから、今や完全に「国産」であると自慢している。しかし、この本物の知的財産を作り出した技術者たちは、鉄道省がわれわれに信じさせたいよりももっと頭がいいらしい。国中で激増している高速列車を設計し、建造した後で、彼らは明らかに鐵道の運転手のための「指導マニュアル」を自国語ではなくて、英語で書くことに決めたらしい。
 この些細な事実は、「中国の高速列車の運転手のナンバーワン」と描かれた中国共産党によって出版された宣伝文書の中で暴露された。その男は、李ドンシャオと呼ばれる。
 国営メディアとのインタービューで、李は、「2008年に北京と天津とを結んだ最初のオリンピック・テストに間に合うように中国の高速列車の運転を学ぶ方法はない」と言ったドイツ人技師との賭に勝ったと言う。
しかし、李は、たゆまぬ労働と不屈の粘りで彼と彼のチームは、英語の指導マニュアルを中国語に翻訳し、たった九日間で新しい高速列車の運転を学んだと言ったのだ。李はドイツ人技師との賭けに勝ったが、この人物が「国産」の高速列車計画にどこまで関与していたかは説明されていない。
 しかしながら、李の話は、このような進歩した高速鉄道技術に追いついた中国人技術者がなぜ中国語しかできない中国人運転手のために完全な技術英語で指導マニュアルを書こうと決めたのかをわれわれに不思議に思わせる。
 もう一つの可能な説明は、シーメンス、オルストム、ボンバルディア、川崎のような会社から外国の鉄道技術を借用し、「消化する」のに忙しくて、新しい列車を「中国製」と商標を書き直す前に、中国人技術者が指導マニュアルを翻訳するのを忘れたということである。
[訳者の感想]設計図さえあれば、機械の複製は簡単かもしれませんが、運転技術までそっくり真似するということは可能なか、どうも中国の高速列車には何かが欠けているという気がします。中国はこのコピー列車を「中国製」と称して南米や東南アジアに売り込んでいるようです。
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「われわれはなぜ自分のところから始めないのか」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2010年07月18日 | 中国の政治・経済・社会
マルクス主義的世界観の中で、中国社会で今日まで一般に広まったものがあるとしたら、それはあらゆる意見と情報とは利害関心に結びついているという説である。それゆえ、北京政府にとっては、西欧のメディアにおける中国についての批判的報道は、中国に悪意をもつ政治的力の産物であるということを国民に確信させために、これより大きな口実は存在しない。
「大人達は世界を殆ど変えられない確固たるイデオロギー的枠内から観察し説明する傾向がある」と今共産党機関誌『人民日報』で述べられている。
「中国がその国際的影響を高め、先進国に圧力を加え始めたことは良いことだ。」公共性はそこでは単なる力の問題、圧力と反対圧力の体験だと見なされている。
両方の文章は、「ハインリヒ・ベル財団」がドイツの中国報道に光を当てているある研究報告についての記事の中に書かれている。「ドイツのメディアは、その中国に関するステロタイプを止めるべきだ」と党機関紙は、その総括についての記事の見出しに書いた。それによると考慮された記事の半分以上が中国に対する否定的なステロタイプを示したそうだ。このことは勿論、誤解を招く主張である。この研究報告は、むしろ、「考慮された中国関係の記事の半分以上において、テーマではなくて、「中国」というキーワードは、単にアレゴリカルな仕方で取り上げられた。
アレゴリーは、確かにしばしば集団的なステロタイプを暴露している。それは、「西欧のメディアがそれ自身の視点を反映しているかどうか」という問いのように、この研究が残念ながらそのままにしておいた事情である。『人民日報』は、この研究が取り上げた他の中国メディアと同様、ステロタイプで満足し、内部の多元主義やドイツのコミュニケーション学者たちが彼らが研究したテキストの中で知覚した細分化を隠した。中国語の党新聞『環球時報』は、報道の前提された党派性を勝手なねつ造のための認可であると見なして、そこには全く書かれていない文章をベルリンで発行されている『ターゲス・シュピーゲル』から引用している。
かなり多くの国家メディアがドイツの研究報告の自己批判的試みをその目的のために利用することが期待された。
それに対して、そこから、今度はその國の内部である議論が持ち上がったのは驚くべきことだ。そこでは、二人の中国知識人が、宣伝臭の強い道具化を厳しく批判した。広東で出ている『時代時報』は、「中国のソフト・パワーを広める際の隠れた作戦」という見出しで、そのような場合に一ページまるまる費やした。そこでは、中国学者のトマス・ヘーベラーと"taz"の編集員スヴェン・ハンセンとカトリン・アルトマイアーが中国メディアにおける研究報告の操作的叙述を批判する機会が与えられた。(後略)
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「新聞で読んだことを信用しないので、中国の指導者は秘密ファイルに依存する」と題する

2010年06月19日 | 中国の政治・経済・社会
独立した情報収集が禁じられている國では、中国の指導者が何を知っているか、彼らがどうやってそれを知るかは大問題だ。中国政府の新聞報道を担当している新華社の主筆であるシア・リンの最近漏れた演説によると、新聞統制は近年ゆるめられたけれども、指導者達は、未だに新華社の通信員によってファイルされた秘密報告にかなり依存している。他の証拠は、彼らの謬りやすいシステムは、次第に重要性を得ていることを示唆している。
先月行われた演説で、シア氏は、昨年7月の新彊ウイグル自治区での人種的暴動についての報道がウイグル族に対する漢族中国人による報復攻撃を抑えぎみに報道したことを暴露した。シア氏は、胡錦涛主席が海外旅行を途中で切り上げたのは報復についての分類された「内部資料」を読んだ後であった。シア氏の演説の要約は、ある聴衆の一人によってオンラインで送信された。検閲官は、それを除去し、それが読み回されるのをどこかで止めようとした。
要約は実証されなかった。しかし、指導者のために秘密のニュースをファイルすることは、新華社の重要な役割の一つである。多くの中国の主要な新聞も、公衆が知るには敏感すぎると考えられるニュースを分類している。
彼らは、情報機関を信用しないが、大抵の他の國では、ジャーナリズムの中心話題であるような問題について報告に頼っている。つまり、公衆の苦情、役人の犯罪、悪い経済ニュース、外国の批判などである。
近年、中国の公のメディアは、政府の補助が引っ込められたために、もっと商業的に経営されており、それゆえ、これらの以前は禁じられていた領域に迷い込むことがあった。しかし、一握りの公的出版の信頼性が増大しているにもかかわらず、秘密のメディアが減少する傾向は見せていない。それらのあるものは、より長く生命を保っている。秘密めいて聞こえる情報は、よく売れるのだ。中国のインターネット採用の速さは、「分類された報道」という新しい分野のために、豊かな素材を提供した。そして中国の指導者たちは、それを楽しんでいる。
2003年に起こった鳥インフルエンザは、「内部資料」システムの決定的な弱点を暴露した。新華社が初めてSARSについて報道したとき、既に患者数は、300人を越え、死者は5人に達していた。2日後、指導者たちはニュースを公表し、WHOに報告した。中国の秘密主義と時間浪費とは、SARSの伝染を広げた原因だと非難された。(後略)
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「米国は、人民元問題で中国を罰しようとしている」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2010年06月11日 | 中国の政治・経済・社会
米国財務省のティモシー・ガイトナー長官は、厳しい言葉で、中国政府の通貨政策を批判し、人民元の為替相場を巡る争いでもっと厳しい手段を取ると示唆した。「中国の為替操作から生じるゆがみは、中国の国境を越えて及び、われわれの必要とする世界的な新しい方向を妨害している」とガイトナー長官は、上院の予算委員会で断言した。
人民元の過小評価は、2005年当時と同じぐらいひどくなっている。「われわれは、少しも前進しなかった。われわれが近い将来、言うに足る前進をする地点にいるかどうか言うことが出来ない。」
中国が人民元の相場を人為的に低く保っており、それによって、アメリカ経済の犠牲によって中国の輸出を促進していると言う理由で米国は中国を非難している。
数名の議員と経済専門家達は、実際の価値よりも40%程度低くされているということを前提しているが、北京政府はこの非難を退けている。
米国議会の側からは、米国政府の政策に対する批判が激しくなっている。財務省は、ずっと前から、「他の人がみな知っていることを公に告白した」と上院の財務委員会の共和党議員チャールズ・グラッシーは言った。「中国は、国際貿易でアンフェアな有利さを作り出すために、為替相場を操作している。」民主党のチャールズ・シューマー議員は、「ガイトナー長官が四月に中国や他の国に基本的に「間違って評価された」通貨使用により罰せられるという法案を立案させた」と述べた。今年11月には、米国の議会選挙が行われる。(以下省略)
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「中国人たちは、グーグルに見捨てられたと感じている」と題する『ツァイト・オンライン』の記事。

2010年03月24日 | 中国の政治・経済・社会
最初は「やっと、誰かが中国人に硬骨を示した」と言われるかもしれない。そして、中国の無理な要求に抵抗しようというのは、グーグルの決断だということが示された。なぜなら、検閲官達は横柄な態度で反応したのだから。だが、彼らはグーグルが香港へ引越すという決定を聞いて驚いた。北京時間で夜中の3時に、グーグルの中国からの撤退が告げられると、役人達は、「完全に間違った決定」について語った。グーグルは「文書による約束を破ったのだ。」この約束がどこに書かれているかは、彼らは説明しなかった。「どんな国でもインターネットは、完全に自由であるわけではない」という彼らが過去数日間繰り返し利用した主な主張も、実際には通らなかった。
中国では特に自由ではないということを検閲官達は承認しようとしなかった。にもかかわらず、彼らは自分達のイメージが損なわれたことを心配し、下手な予防線を張ろうと試みた。公式の態度表明では、「急ぎすぎた結論だった」と言われている。「外国企業にとって、投資環境が悪くなった」と言われているが、「グーグルは例外だ」と彼らは考えている。
 多くの経営者や企業の見方は違う。多くの人たちは密かにグーグルに拍手したが、それはこの検索エンジンが、中国市場の厳しい行動規則にも関わらず、そこで十分稼ぐために彼らの仲間達があえてしなかったことを、したからである。
 だが、グーグルも自分自身に批判的な問いを提出しなければなるまい。彼らは本当に、彼らがそういう振りをしているように、英雄なのだろうか?それは、結局、道徳的決断と言うよりはむしろ、冷静な経営上の決断だったのではなにか?ひょっとしたら、経済的な利害のほうが、道徳的利害に対して勝ったのではないか?
 中国進出は、グーグルにとっては、経済的には割が合わなかった。この3億9千万人のユーザーを持った大国で、この大企業は、インターネットによる総売上高の2ないし4%以上を手に入れることはできなかった。近い将来、急速に取り分が増えないだろうということは、明らかだった。
その上、グーグルの経営者にとっては、売上増加のPR効果は好都合なときに来た。なぜならば、グーグルがますますその「ビッグ・ブラザー・イメージ」と戦わなければならない西欧での問題から目をそらさせることができたのだから。
 検閲に対してある合図をするべきときだったとグーグルは言う。しかし、多くの中国人ユーザーたちの見方は、別である。彼らは自分達が見捨てられ、「百度」に売り渡されたと感じている。これまで、彼らには選択の自由があった。グーグルへのアクセスが一番多くブロックされていたわけではないと彼らは強調する。グーグルは、香港に引っ越す。北京政府は、それで、完全にグーグルをシャットアウトできるのだ。
 このことが、ユーザーたちを怒らせている。驚くべきことに、彼らは政府に対して怒っているのではなく、グーグルに対して怒っているのだ。政府は簡単には変えられない。中国における言論の自由の発達のためには、グーグルが中国に留まるほうが良かったのだと彼らは考えている。
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「中国人民銀行総裁との晩餐」という『ヴェルト・オンライン』のブログ

2010年02月05日 | 中国の政治・経済・社会
だが、すぐに噂を予防するために、次のことを言っておかなければならない。私が中国人民銀行総裁と晩ご飯を食べた訳ではないと。ジャーナリストは、彼に近づくことはできない。これに対して2007年度ノーベル経済学賞受賞者のエリック・マスキンは、昨日(1月27日)の晩、周小川と一緒に晩餐を食べた。今日の昼、私はマスキンと食事をした。その際、彼は北京の印象について全く新鮮に報告することができた。
マスキンは、最もよく知られた中国の経済学者ウー・ジャンリンの80歳の誕生日のお祝いに客として招かれた。「周は、非常にはっきりと、中国は通貨である人民元を切り上げるだろうと言った」とマスキンは話した。それと同時に、中国の通貨政策が問題になる場合、目下、おそらく最も激しく議論されているテーマに触れた。「もっとも、彼はいつ切り上げるかは言わなかった。」
いずれにせよ、しかし、彼の発言は、中国人民銀行も通貨が過小評価されていると思っているということを明らかにした。エコノミスト達は、人民元がドルに対して20%から40%程度弱く評価されているということを前提している。中国が2008年夏に、事実上、再びドルへの連動に戻って以来、特に問題は大きくなった。それ以前は人民元は、2005年以来ゆっくりとだが、上昇していた。
だが、マスキンは、もっと重要な報告をもたらした。「周にとって重要なのは、米国経済がどのように展開するかということだ。彼はすべての点で優れた情報を得ており、彼は情勢がどうなっているかについて、明確な分析的視点を持っている。」彼にとっては、米国経済が上手く行くことが、アメリカ人達にとってと同じく、気にかかっている。このことは容易に理解できる。なぜならば、中国は米国の最大の債権者であり、2兆ドル(180兆円)以上の外貨準備高を保有しているからだ。
資金提供者としての中国の増大する意味は、基本的には肯定的なものである。その負債が中国によって資金援助を受けられるかもしれないギリシャの場合にも、重要であるだろう。「このことによって、純粋に経済的な視点からは、中国がもっと強力に国際的金融システムに結びつけられることなるだろう。」もっとも、中国が人権に関して同じ水準に達していないという政治的な側面もあると彼は言う。
確かに、マスキンも勇気づけられる報告をもたらした。「私にとって非常に興味のある観察は、誕生日を祝って貰ったウー・ジャンリンも含めて出席者の誰もが、中国は長期的に見れば、西欧型の民主主義になるにちがいないということをはっきりと強調したことである。」もっともこれについてもいつまでにという期限については誰も述べなかった。
[訳者のコメント]「ブログ記事」と銘打たれていますが、書いた人はフランク・シュトッカーというジャーナリストですから、内容は信用できると思います。新聞にまでブログが掲載されるというのはちょっと驚きですね。
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「中国の居丈高な調子は西欧政府の間で憂慮されている」と題する『ワシントン・ポスト』紙の記事。

2010年02月01日 | 中国の政治・経済・社会
台湾に武器を売却するという米国政府の計画発表に対する中国の反応は、北京政府の新たな勝ち誇った態度と歩調があっているように見え、それは世界中の政府やアナリストを憂慮させている。
コペンハーゲンの気候変動会議からインターネットの自由、中國とインドの国境問題に到るまで、中国情勢の観察者達は、その政府や代表者や国営シンクタンク出身のアナリスト達が発している強面(こわもて)の調子に注目している。
土曜日にジョン・ハンツマン駐中国大使を呼びつけた外務副大臣のヘ・ヤフェイは、ヘリコプター、パトリオット・ミサイル、掃海艇を含む64億ドル(5,760億円)に上る武器を台湾に売却しよういう決定を取り消さないなら、米国は「重大な報復」に対して責任があるだろうと警告した。この反応は、中国が米国との取引について数ヶ月前から知っていたのに起こった。
 「中国の態度には変化があった」と国家安全保障委員会の官僚ケネス・リーベンソールは言う。「中国人達は外国の人々が彼らを世界の強国だと見なすに到ったということが分かった。このことが彼らの自信を増大している。」
 リーベンソールは、中国の新しい調子のもう一つのファクターは、西欧による二世紀間の搾取の後、中国が世界の偉大な国家の一つとしての役割を取り戻しつつあるという感覚である。
 この新たな態度は西欧の役人やアナリスト達を困惑させている。変化したのは中国の調子だけなのか、それともその政策も変わってきたのか?
 米国のある高官は、昨年12月の気候変動会議における中国の普段と違う振る舞いに言及した。その期間に、中国はホワイトハウスの特使トッド・スターンを叱責し、国家首脳のためのイベントに外務省担当官を派遣し、低開発国における二酸化炭素削減目標を決定することに、激しく反対した。
 もう一つの問題は、インターネットの自由とサイーバー・セキュリティである。これは中国がウェッブ検閲を止めなければ、中国を撤退するぞというグーグルの脅しによって光を浴びた。中国の要請で、このトピックスは、今年のダヴォスの「世界経済フォーラム」の議題からは削除された。
 アナリスト達は傲慢と不安の結合が中国の気分を駆りたてているように見えると言う。一方で、北京は、中国がグローバルな金融危機を簡単に乗り越えたことによって、そのシステムの優越性が証明され、中国は、台頭しているだけでなく、グローバルな舞台に登場したと思っている。他方では、中国西部のチベットや新彊ウイグル自治区での暴動は、中国政府の指導者達に彼らの一党支配についての不安を引き起こした。そう言うわけで、彼らの権力に対するどんな脅威も激しい反発を招くのだ。(以下省略)
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「西欧は、中国に骨のあるところを見せるべきだ」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2009年12月27日 | 中国の政治・経済・社会
この10年ほど前から、ドイツと中国とは法治国家についての対話を行ったきた。中国の権力者達が「法治国家」という言葉で何を理解しているかを、彼らは新たに証明した。「国家権力を転覆する諸活動を行った」という理由で、反体制派の劉暁波は、人目を避けた素早い裁判の後、11年の禁固刑に処せられた。
文芸評論家の劉の犯罪は、自分の意見を述べたということだけである。彼の『2008年憲章』の中では、「共産党は、10億の人間を人質に取った」と言われている。党の独裁は、嘘っぱちで、腐敗している。それは中国の魂にとって危険であるだけではない。なぜなら、共産党は、世界中の独裁的政権の重要な支えであるからだ。劉の言うことが正しいということは誰でも知っている。にもかかわらず、ギド・ヴェスターヴェレ連邦外務大臣は、「私は自分の國の開放と近代化の道を継続し、人権を維持するように中国政府を励ます」と言う。
何だって?この政府は、人権を護ることはできないのだ。その独裁制は、人権を踏みにじる点にある。自由な意見の発表は処罰され、インターネットは検閲され、精神治療は、政治的反対者を消すために悪用される。チベットでは、文化的なジェノサイドが行われている。ウイグル族のような少数民族は、その文化的な権利を奪われている。世界のどの國でも、これほど多くの死刑は、行われていない。
 世界中の独裁者は、彼らが石油や他の資源を中国の大食らいの産業のために用立てる限り、中国にごまをすっているのに、民主主義的な台湾は毎日脅されている。国連の安保理では、自国民を虐殺している原油供給国のスーダンのような國を正気に戻すことが問題になると、中国は、議事妨害で目立つ。ついでに言うと、スーダンと中国は一緒に、反帝国主義的レトリックで、コペンハーゲンの気候変動会議を妨害したのだ。
 ヴェスターヴェレ外相が実際に言わんとしているのは、中国は非常に強いので、共産党をまじめに批判することはできないということである。欧州と米国とは、毛沢東の言葉を借りると、「張り子のトラ」である。中国は原爆所有国であり、経済超大国である。それは、輸出選手権でドイツ連邦を追い越した。それは、世界中で最も多い外貨保有国であり、ドルの運命を決定する。それは、欧州の二番目に重要な貿易相手である。
パリのオリンピックの松明行進の際、中国共産党のチベット政策に対する抗議があったとき、中国人達は、フランスのスーパーマーケット「カルフール」に対する「自発的」ボイコットで反応した。世界第二の商業会社はその後降伏し、「自分たちは、中国国民の感情を損なうことは二度としないだろう」と断言した。アンゲラ・メルケル・連邦首相がダライ・ラマを歓迎しようとあえてしたとき、ドイツ産業同盟会長ユルゲン・チンメルマンは、直ちに建設的な対話と「相互の尊敬」の基づく政治に戻るように、首相に要求した。
その際、中国の成長する福祉は中産階級を創出し、そのことによって、遅かれ早かれ、この國を自由化されるだろうという大嘘がまかり通った。だが、それは疑わしい。共産党は、重工業と金融部門をコントロールし、国家を党の利害に従属させている。銀行は、中産階級には、その預金に対して、最小の利息しか与えず、金を大企業に貸し、大企業は、安い利息と安い労働力と人為的に安く保たれた人民元で世界市場に中国製商品をあふれさせている。経済危機になると、農村出の権利のない産業予備軍は単純に田舎に追い返される。中国は、国家独占的資本主義を実践しているのだ。(後略)
[訳者のコメント]この記事を書いたのは、アラン・ポーゼナーという記者です。
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「体制に刺さった棘」と題する『ドイツの波』の記事。

2009年10月18日 | 中国の政治・経済・社会
ミュンヒェンの「芸術の家」のファサードは、展覧会の表看板になった。100メートルある正面には、9000個の白・赤・青・黄・緑で彩られたプラスチックのランドセルが掛けられている。ランドセルの色の配置で「7年間、あの子は、この世で幸せに生きていました」という文章が中国語で書かれている。これは、2008年に四川省の大地震で校舎が倒壊したために死んだ娘についてその母親が言った言葉だ。「校舎は崩壊し、数千人の人間が消えた。数千人の子供たちも死んだのに、政府は彼らの名前を公表しようとしない」と艾未未(アイ・ウェイウェイ)は言う。
漢字で書かれたこの文章は、ミュンヒェンの中心に告発者のように立っている。展覧会を見る前に、その文字は、中国の腐敗した政治家に注意を向けさせる。なぜならば、艾未未は、彼らが数千の学童の死に対して責任があると言っているのだ。校舎を建築する際、手抜き工事が行われたからこんなことになったのだと彼は信じている。だが、「この國にとっては、貧しい者の権利はどうでもいいのです」と彼は嘆く。
 艾未未の芸術は、中国における彼の政治的参加の表現だ。彼の作品は、現実の変化を糾弾している。そういうわけで、彼は6000年以上経っている新石器時代の壺に安っぽくどぎつい色の工業用ペンキを塗る。彼は築後数百年経っていたが、近代的な建物やショッピング・センターを建てるために取り壊された寺院の材木や机で仕事をしている。幾つかの作品では、彼は幅30センチある板で古代の木製の机の天板をぶち抜いている。こうして出来上がったオブジェは、がっしりしていると同時に同時に優雅だ。「文化大革命の間、非常に価値のあるものを壊した人は、良い毛沢東主義者でした。私たちは歴史的な作品に対して、今でも全く敬意を払わないのです」と艾未未は言う。伝統的な中国の美学から見ると、これらの作品は、古いものすべてを遠慮なく破壊する近代化の野蛮さを反映している。
 知識と記憶とをコントロールしようとすることは、独裁政の本質に属している。中国では、若い人たちは、1989年6月の民主化運動の弾圧(天安門事件のことを指している)について一度も聞いたことがない。1930年代のドイツにおけるナチの宣伝も、何を思いだしてよいか、何を思いだしてはならないかを定めていた。艾未未は、ミュンヒェンの「芸術の家」で、この統制を取り上げているが、彼はヒトラーがこの建物をドイツ芸術のために、--ヒトラーが頽廃していないと考えた芸術作品ために、--建てさせたということを示唆している。この建物の大きな中央ホールに、艾未未は、長さ35メートルのジュウタンを敷いた。最初はそれは目につかない。なぜなら、彼は、元の床タイルの色や木目を正確に再現しているからである。このジュウタンの上に、艾未未は、100本の木の根や木の部分を置いた。表面下にあるものは、彼の作品では上に向けられており、そこにあったものが、目立つようになっている。
 「私はこの体制と取り組まざるをえないのです。なぜなら、もし、私が何も言わなかったら、私は体制の一部になってしまいます。でも、私は北京に住んでいるから、芸術家として中国と政治的に対決しなければなりません。」それゆえ、彼は、おそらく再び中国に戻るだろう。なぜなら、彼は公然たる批判者、体制に突き刺さった棘でありたいからである。
[訳者のコメント]この記事を載せた「ドイツの波」というのは、海外向けの放送局です。ドイツ連邦外務省の管轄下にあるのではないかと思います。
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「鉄の沈黙」と題する『ツァイト・オンライン』の論説

2009年09月30日 | 中国の政治・経済・社会
書籍見本市は、文化のオリンピックになるべきだと中国では言っている。去年の夏のようにこの國は特に一つのこと、つまり、承認を得たいと思っているのだ。轟音はものすごくなる。500万ユーロ(6億7500万円)で、政府は選抜された作家達をドイツへ来させる。ロジスティクに関する準備以下、平和な文化的大国のイメージをわれわれに信じさせるために、いくらかのことがなされる。われわれが我が国で検閲と呼んでいるものは、中国では「文化政策的」用語を用いて「調和化」と呼ばれている。
裂け目は目に見えてはならない。調和のための努力は、「作家のベイ・リンとダイ・チンが参加するなら、計画されたシンポジウムをボイコットするぞ」という最近の脅しにおいて明らかになった。行事のテーマは、「中国と世界:知覚と現実」である。フランクフルトでは、中国の願いを入れて、両作家の招待を取り消した。この急ぎすぎた従順さは、今年の書籍見本市がどれほど不安定な基礎の上に立っているかを次第にはっきりさせる。
 「中国について対話するのではなくて、中国と一緒に対話して欲しい」と見本市の所長ユルゲン・ボースは言った。だから、この妥協を認めなければならないというのだ。シンポジウムの司会者であるペーター・リプケンは、「反体制派と中国学研究者」との集会が問題ではないと言明した。だが、批判者でないとしたら、一体誰が中国内の知覚と現実との関係に何か貢献できるだろうか。シンポジウムについての公式の告知では、そこでは、数百の後に続く催し物のための第一声がだされるべきだと彼は言う。
それが本当なら、なんとも情けない。そうするとわれわれは、中国がそこで数日間文学の中心であると感じるような見本市を覚悟せねばなるまい。中国はわれわれに出版部数を示し、毎日印刷され販売される数千冊の書物について語るだろう。われわれは、質問する代わりに、驚いて欲しいというわけだ。
中国がなぜ国際的作家団体である「ペン・クラブ」を承認せず、逮捕された反体制派について聞く耳を持たないのか聞きたいものだ。なぜ、中国政府が作家のリュウ・シアボを何ヶ月も監禁しているのか?世界的に有名な芸術家のアイ・ウエイウエイは、国家によって迫害されている。どうして、作家のヤン・リャンケが彼の批判的な長編小説のために出版社を見つけることができず、フランクフルトへ来ることができないのか?このような言論の自由と人権についての質問は、山ほどある。
「10月の見本市は、そのための適切な場所だ」とユルゲン・ボースは言った。だが、開会の数週間前の宥和政策は、別の方向を暗示している。今年の見本市の取り組みは、綱渡りになるだろうと大抵の人が予感していた。
チェン・ダンチンの言葉が耳に響く。この中国人の抒情詩人は、ちょっと前に、『南ドイツ新聞』で述べていた。「あなた方は中国との対話で体制が変わるといつも思っている。実際は中国が君たちを変えるのだ。」書籍見本市が鉄の沈黙のお祭りにならないようにと希望するだけだ。
[訳者のコメント]筆者はダーヴィド・フーゲンディックと言う人です。
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「中国の警察は、すべての人を監視しようとしている」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事

2009年08月22日 | 中国の政治・経済・社会
カメラは官庁、空港、駅を超えて広がっている。それらは銀行や病院にもすえつけられた。エレベーターにも取り付けられている。「大きな兄弟が君を監視している」というオーウエルの『1984年』の中の言葉は、中国ではますます当てはまる。この小説が描き出した未来は、人民中国創立60周年の二月前に、現実になった。
警察庁は、これまで、秘密にされてきたデータを成功の証明として公表した。中国の諸都市では、26万8千件の監視警報システムがこの十倍のカメラとともに据え付けられている。275万台のカメラは、すべての潜在的悪漢を監視している。
中国の豊かな省である広東省は一番多くのカメラを持っていると、治安問題に詳しいジャーナリストのディン・ザオウエイは、主張している。2009年には、広東省では、92万台以上のカメラが据え付けられたが、広東省はそれに対して、10億ユーロ(1兆3500億円)を支出した。2010年には、監視カメラの数は、100万台に達するだろう。首都の広州市では、25万台のカメラが監視している。そこでは、1万8千人の要員が三交代でモニターの画像を追跡するのに従事していると治安当局のウエッブサイトには書かれている。
首都北京には27万台以上のカメラが据えられている。もっとも、オーウエルの故郷である英国では、もう少し先を行っており、英国全土では、400万台のカメラが設置されている。しかし、英国では、それに対する賛否も公的に戦われており、カメラの密度が本当に犯罪件数の減少に貢献しているかが論じられている。これに対して、中国では、建設にまだ熱心である。2003年以来、治安当局は、それ以前の20年間よりも、諸都市にもっと多くの政治的監視システムを設置したと自慢げに報告している。(後略)
[訳者のコメント]世界中に監視カメラ網が張り巡らされているような気がしてきました。
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「ウイグル人が天国的な平和を乱している」と題する『ヴェルト・オンライン』の解説記事。

2009年07月12日 | 中国の政治・経済・社会
天安門における学生たちの抗議が巨大な国の中心を揺るがせた20年前とは異なり、現在、中国は周辺から崩れかけている。だが、1989年の時と同様、政権は今日剥き出しの暴力で答えている。昨年のチベットや現在の新疆自治区での蜂起の鎮圧が示しているように、少数派に対する繊細な扱いは、問題にならない。
ここで、平行性は見事に終わる。なぜならば、ウルムチはラサではなく、米国に住んでいるウイグル人世界会議のレビヤ・カデール女史にはダライ・ラマとの共通点はない。中国政府の目から見ると、分離主義者とテロリズムとは、建前では諸民族の間に支配している天国的な平和(「天安門」をドイツ語訳すると「天国的な平和」という意味になる。)の主要な敵である。毛沢東風のイデオロギーは、今日、過度のナショナリズムにとって変わられる。それは、中国がしばしば貪欲な先進国の犠牲であったがゆえに、共鳴を見出す。特に日本や英国やロシアやドイツでは。
§1.ナショナリズムが毛沢東に取って代わる
政府の主張では、ウイグル人もチベット人も中国の不安な国境の省を入り口にして、中国を不安定にし、分割しようとしている帝国主義的な国々の依頼で、行動していることになる。キューバのグアンタナモ収容所にウイグル人もいたということは、イスラム教徒の抗議デモをテロリストだと主張する口実になっている。確かに、ウルムチのデモには暴力行為がなくはなかった。それは平和な告知から街頭での衝突へとエスカレートした。警察の車に火がつけられ、通行人は血が出るほど殴られた。けれども、その前に、広州では、中国人の少女を強姦したという濡れ衣を着せられたウイグル人の季節労働者がリンチされたのだ。
棍棒を振り回す中国人がウイグル人を駆り立てる様子は、人種主義者のユダヤ人迫害を思い出させるが、それは中国の西部を今日まで形成してきた数世紀間の文化の葛藤の表現である。数百年前に定住するようになりイスラム教に改宗した草原の民族を軽蔑する漢族の儒教文化がある。ウイグル族は、唐王朝以来、中国の朝貢国であり、中央政権が崩壊した場合には、独立を宣言した。最後は、第二次大戦中、「東トルキスタン」という国名で独立を宣言した。このモスレム共和国の指導者は、毛沢東によって招集された協議会に出席する途中、飛行機の墜落で命を落とした。
§2.雑婚は好ましくない
チベットに似て、新彊も自治区であるが、自治は紙の上に書かれただけである。言語は中国語だし、ウルムチは5千キロも西に寄っているのに、時間は北京時間である。雑婚は望ましくない。官吏や警官は、金曜日のモスクでの礼拝に出席できない。メッカへの巡礼は、まれにしか許可されない。カシュガルの古いムスリムの町並みの取り壊しは、経済や行政で音頭を取る中国人の列が続き、ウイグル人を少数派に追いやる限りは、人々の平和に貢献しない。ウイグル人は二級市民であり、言語・文化・宗教は許されているが、促進はされていない。
[訳者の感想]この記事のあとに、読者の意見がブログの形で載っています。それらを書いた人たちの中には、反イスラム主義者がいて、イスラム教徒を批判して、むしろ中国のやり方を支持しているように見えます。
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