海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国はどのように青少年や外国人を困らせているか」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月28日 | 中国の政治・経済・社会
太王四神記 オリジナル・サウンドトラック Vol.2(DVD付)
久石譲,ジュンソ,東方神起,Lim bo Kyung,Jeong hoon Ann,In young Park,Maestro-T,TVサントラ
エイベックス・トラックス

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北京でオリンピック競技会が開かれる3ヶ月前に、中国の治安規定は、はっきりと強化された。これは、日常生活にますます影を落としている。そういうわけで、外国人はますますしばしば、パスポートを提示しなければならない。商用で入国しようとする人たちは、数次入国のためのビザを取得することができない。中国の最大の音楽祭”MIDI"は、最近、5月から10月に延期された。学校では、化学の授業ための化学物質を注文してはならない。
「チベットでやられた後では、彼らが現在過剰反応していることは驚くに足りない」と香港大学の「国際関係センター」のデイビッド・ツヴァイクは役人たちの振る舞いを説明した。「彼らが心配する理由は十分にある。」それゆえ、中国は、三月半ばにラサで起こったようなデモをあらゆる手段で阻止したいのだ。
疑いもなく、外国における聖火リレーの際の抗議は中国政府には多くの頭痛の種になった。だって、国際社会の前には最も格好良い姿で現れようと努力してきたのだから。少なくとも、自国では、オリンピック競技会までは、計画と摩擦なき経過とを妨げるようなことは何も起こらないように保証したいのだ。その際どんなリスクも冒したくはない。
特に、若い人とたちの大量集会は、できる限り避けられなければならない。それゆえ、伝統的な北京音楽祭(MIDI)は、延期された。国中の学校には、5月1日から10月17日まで約250種類の化学物質は売られてはならないと通達された。更に、数多くの教育施設の実験室が検査された。
同時に、中国に生活している外国人たちは、しばしば、街頭で警官に呼び止めら、パスポートの提示を要求されると文句を言っている。ホテルと同様。住宅でもコントロールが広げられている。
長い間鎖国状態だったこの国にとっては、世界中から来る50万人の来訪者(その中には、1万5百人の選手と1万8千人の記者が含まれている)にどう対処するかは、大きな挑戦である。一方では中国はオリンピック競技の精神に則って、世界に開かれている自分を誇示したいが、他方では、これは警備当局にとっては明らかに困難である。(以下略)
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「日本での抗議、米国はテロを警告する」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事・

2008年04月27日 | 中国の政治・経済・社会
ハウルの動く城

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英国の外務省も、中国でのテロの脅威について語った。「八月のオリンピック大会のような、多くの公衆が集まる催しは、テロリストにとって格好の目標だ」と米国の旅行警告の中で述べられている。三月の報告では、国務省は、アメリカ人旅行者に、テロの脅威は非常に少ないが、中国への旅行者は気をつけるべきだと述べていた。その後、英国は「外国人旅行者が滞在する公共の場所で、テロ攻撃が起こるかもしれない」と警告した。国際警察のロナルド・ノーブルは、オリンピック競技会についての安全保障会議で、「アルカイダか他の過激派グループが、致命的な攻撃を加えようと試みることはありえる」と断言した。
 多数の抗議デモを伴う16箇所で聖火リレーの後、聖火はその目的地に到達した。土曜日、聖火ランナーは、日本の長野市で、16キロの距離を走破した。その際、チベット活動家の抗議の際、三人が逮捕された。
デモ隊は、何回も、聖火リレーを遮ろうと試みた。走路の安全を確保するために、約3千名の警官が動員された。数百人のデモ隊がチベット国旗を振り回し、「フリー・チベット」というシュプレヒコールを行った。同時に、2千名の中国人留学生が街頭に繰り出し、北京政府支持を表明した。到着地点では、聖火は中国国旗の海に取り囲まれた。長野市は、1998年の冬季オリンピック競技会の開催地だった。
善光寺では、僧侶たちが、チベットのために法要をいとなんだ。元々はこの寺院が聖火の出発点になる予定であったが、僧侶たちは聖火リレーに参加することを拒否した。
聖火は日曜日にソウルに、月曜日には平壌に移る。
[訳者のコメント]この記事についている写真は、中国支持デモ隊と反中国デモ隊の間でもみくちゃにされている制服姿の警官です。
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「デモ隊互いに衝突」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月24日 | 中国の政治・経済・社会
チャイコフスキー:交響曲第4番、第5番、第6番「悲愴」
ムラヴィンスキー(エフゲニ)
ユニバーサル ミュージック クラシック

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チベットにおける中国のやり方を巡る議論は、オーストラリアでも聖火リレーに影を落とした。約80名のスポーツ選手と別の人たちが象徴となる聖火を首都キャンベラの道路を通って運んだ。幾つかの事件で少なくとも7人が逮捕された。
個々の障碍にかかわらず、オリンピック聖火は、計画通り目的地に到着した。三時間あまりの行程で最後の走者は、金メダルを5個とった水泳選手のイアン・ソープだった。
短パンとTシャツを着て、野球帽をかぶった警官が、リレー選手に伴走した。出発から一時間後、聖火の前に一人の男が飛びだしたが、警官によって素早く取り押さえられた。もう一人のデモ隊参加者が、「チベットでの殺人をやめろ!」と叫んだが、警官に連行された。国会議事堂前では、三人のチベット人女性が、道路を遮った。逮捕された人たちは、警察の言うところでは、公共秩序を妨害したかどで裁判されることを覚悟しなければならない。
数千人が集まった市の中央にある公園では、さらなる衝突があった。その際、チベット国旗をもった人たちがチベット独立運動に対する共感を表明した。他のグループは、中国国旗を振った。警察は両方のグループを互いに引き分けようと努力した。その際、繰り返し殴り合いになった。チベット活動家のグループは、中国国旗に火をつけた。
親チベットのグループは、推定500名の支持者とともにキャンベラに来た。同時に、中国人留学生会は、反対行動を呼びかけ、数都市からバスで集まった。オーストラリアの中国人会のサム・ウオンによれば、聖火リレーに参加せよとの呼びかけに対して、1万人が集まった。
オーストラリアの首都の街路を三時間かけて、80人の参加者で運ばれる聖火は、警官の大量動員で確保された。もともとの計画に対して4キロメーター縮められた走路は金属の格子で守られた。「われわれは聖火が全走路を無事に通過することを確実にしようと決心した」とマイク・フェラン署長は述べた。
聖火リレーの途中で最も激しい反中国抗議が行われたのは、ロンドン、パリ、サンフランシスコ、ニュー・デリーだった。土曜日に日本の都市、長野が聖火リレーの見せ場となる。5月2日に聖火は香港に到着し、その後、8月8日に北京でオリンピック競技会が始まるまで中国全土を回る予定だ。
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「中国の反仏デモで、サルコジ大統領は、仲介者を北京に派遣」と題する『シュピーゲル』の記事。

2008年04月21日 | 中国の政治・経済・社会
Standards/スタンダーズ
中西保志,小田和正,川江美奈子,夏目純,吉田美和,山下達郎,久保田利伸,井上陽水,桑田佳祐,浜田省吾,Misia
徳間ジャパンコミュニケーションズ

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パリ・北京発:「状況は切迫している」とカルフールの支配人であるジョゼ・ルイ・デュランは述べた。既に数日前から、憤激した人々が中国にあるカルフールの店の前で、デモをしている。フランスのダライ・ラマ支援に対して抗議するためである。デモはとっくに公然たる乱暴狼藉に転化した。それゆえ、中国政府は市民に秩序ある抗議行動をするように警告した。デュランによると、彼の企業はこれまでにさしたる売上損失を蒙らなかった。
 カルフールは、抗議する中国人にとってはフランスを代表している。丁度、マクドナルドが過去においては反米抗議の標的となったのと同じである。カルフールはチベットの自由運動を支持したことはないという主張は役に立たないように見える。
 ともかく、ジョゼ・ルイ・デュランは、目下、政治からの助けを期待できそうだ。フランス大統領サルコジは、緊張した関係を変えるために、二人の大使を人民中国に派遣する。ピエール・ラファラン元首相は、水曜日にサルコジとシラック元大統領の書簡を持って北京に行く予定である。過去20年間にしばしば中国を訪れたラファランは、木曜日に温家宝首相と会談する予定である。サルコジの外交顧問であるジャン・ダヴィッド・レヴィットは、今週末に大統領の書簡を持って北京へ行く予定である。
 これがフランスに対するかなり多くの中国人の嫌悪の増大にブレーキをかけるかどうか、見てみないと分からない。中国の広範囲な降雨と大量の警官導入にもかかわらず、先週末には、西北部の西安では、カルフールの支店の前に約1千人の人間が集まった。東北地方のハルビンや東部の済南でもデモがあった。中国東部の青島では、AFPのカメラマンは、あるカルフール支店の駐車場に50代以上の警察車両が停まっているのを目撃した。
 湖北省の武漢では、数百人がカルフールの店の前に集まった。彼らは中国国旗と毛沢東の肖像を担いでいた。目撃者によれば、約千人の参加者は、「チベット独立反対、オリンピック賛成」、「フランスの商品にノーを言え」と書かれた横断幕を見せていた。
 安キ省の合肥では、デモ参加者がある百貨店で騒動を起こした後、国営の新華社通信は、中庸のとれた理性的行動をするようにとの呼びかけを放送した。中国では政治的なデモは許可されない。過去には、警察は、政府の路線に従った抗議行動には寛容だった。(以下略)
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「チベット批判に対する中国人の憤激」と題する『ツァイト』紙の記事。

2008年04月20日 | 中国の政治・経済・社会
選手も観客も命がけの北京五輪 オリンピックどころじゃない中国の真実! (別冊宝島 1508 ノンフィクション) (別冊宝島 1508 ノンフィクション)

宝島社

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北京発:今は、チャールズ・チャンも一緒にやっている。中国のポータル・サイト「捜狐」(sohu.com)の創設者でCEOでもあるチャンは、中国の経済ブームの立て看板に数えられ、中国では、ビル・ゲイツと比較される。
その上、チャンが他の百万長者のように身を隠さないで、公に発言することも知られている。彼は中国でのフランス製商品のボイコットを支持したことで、有名になった。「責任ある大国の道徳と理性と寛容さで主張しても、他の大国は、無責任に振舞うだけだ」とチャンは、「捜狐」の上のブログで自分のボイコットを理由づけた。
彼の反応は、その間、西欧のチベット批判とオリンピック・ボイコットに対する中国人の憤激がどの程度ひろまっているかを示している。その際、チベットというテーマは、ますます背景に退いた。ここでも、情報通の中国人たちも、あまり新しい論拠を見出さない。確かに、彼らは、ダライ・ラマに責任があるとする公式の見解が真理のすべてをもらしていないと知っているが、共産党の意見に逆らうことは敢えてしない。。なぜならば、彼らは弾圧を恐れているからである。しかし、もう一つの理由は、彼らが原則的に政府を支持しており、チベットを「中国の一部」とみなしているからでもある。
その際、彼らがチベット自治区における人権侵害に対する西欧の批判を無視しているということは、非難さるべきである。しかし、その代わりに、中国の批判は、一見一方的な西欧のメディア報道や、西欧のオリンピック競技会のボイコットに向けられている。
「われわれは常に西欧に対する取り入りと拒否の間をゆれている」と『新北京新聞』は、批判を説明した。この新聞は、CNNの解説者ジョン・チャファティの解説に対する反応を分析している。中国共産党員は、彼の解説を「この五十年間に存在した同様の犯罪者」と呼んだ。
西欧に取り入ろうとする者たちは、西欧のメディアが原則的に間違わず、このような根拠のない叱責に耳を傾けねばならないというのなら、落胆するだろうと『新北京新聞』は、述べた。しかし、西欧拒否者は、西欧の非難の中に西欧の骨身にしみた反中国的態度を見るだろう。彼らにとっては、CNNの解説は、中国の統一を壊すための陰謀の一部でる。
武漢にある「中国中部大学」のスン・シュウペイ教授は、中国人に対して、細分化したメディア意識をもつように警告した。「われわれは、もっと寛容になるべきだし、メディアも誤りを犯すということを我慢しなければならない」とスンは週刊誌『ナンファン情網』に書いた。外国商品に対するボイコットの代わりに、彼は中国において公共のよりよいコントロールを可能にするより広範な意見の幅を形成することを要求した。
 明らかに多数の中国人は、オリンピック競技会に対する西欧の批判に対する彼らの態度に関して、自己理解の過程にある。共産党の宣伝とCNNの論評との間で多くの人たちは新しい方向付けを探している。このことも、インターネットでのボイコットの呼びかけが人気がある理由を説明している。
{訳者の感想}ゲオルク・ブルーメという人の解説です。
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「独裁者ムガベは、自分が民主制を打ち立てたと主張」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月19日 | アフリカの政治・経済・社会
「中国問題」の内幕 (ちくま新書 706)
清水 美和
筑摩書房

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 議論の的となった三週間前のジンバブエの大統領選挙以後初めて、ロバート・ムガベ大統領は、直接、国民に顔を向けた。「イギリス人ではなくて、われわれが民主主義を打ち立てたのだ。人種差別と性差別を拒否し、人権を追及する民主主義だ」と彼は独立28周年記念に、首都ハラレの郊外にあるハイフィールドのスタジアムで演説した。
 彼は反対派を以前の白人の植民者のための「あぶみ持ち」と呼んだ。南アの放送によると、人権侵害に対する外国からの批判を、彼は不当だと拒否した。
 政府は生活のすべての領域で困窮を和らげるよう努力していると彼は述べた。「われわれは、もっと多くの食料があり、飢えが少なくなるように、農民がもっと沢山生産できることを望んでいる。それゆえ、われわれは彼らにトラクターや他の農業に必要な道具を与えたのだ」と彼は数千人の群集を前にして語った。元イギリス領のローデシアは、1980年に独立した。それ以来。ムガベは、ジンバブエの国家元首である。
 3月29日に行われた大統領選挙の結果は、まだ、公表されていない。反対派の見解では、ムガベは選挙で負けた。今週土曜日に予定されている23の問題のある選挙区で投票数の数えなおすことを、ムガベの党が押し通した。金曜日の午後、裁判官は、数えなおしを禁じてほしいという反対派の請願を却下した。
 大量の警察官投入で、独立記念日のお祝いの安全が守られた。目撃者によると、首都ハラレでは、新たに暴力グループが反対派の支持者を殴打した。そのあとで、ハラレ郊外のグレンビューでは、約40名の兵士が、家から引きずり出された人たちを殴った。選挙後、地方からは反対派支持者の虐待についての報道がなされている。
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「政治家たちはバイオ燃料が飢饉の原因だと断罪する」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月15日 | 貧困問題と食糧問題
イスラーム文化?その根柢にあるもの
井筒 俊彦
岩波書店

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 欧州連合の環境問題担当のスタヴロス・ディマスは、最初は、落ち着いて記者団の前に現れた。ヨーロッパの大臣たちは爆発的な食料価格の高騰にもかかわらず、欧州連合のバイオ燃料の目標を堅持することで合意した。「持続性を心配するなら、それは結構だ」とギリシャの環境相は落ち着き払った外見を見せた。
だが、数時間後、新たな驚くべきニュースがカリブ海からやってきた。高い食料品価格が原因で一日中騒動が続いた挙句、ハイチ政府が崩壊した。首都のポルト・プランスでは国連軍の兵士が一人殺された。別の場所でも暴力的な乱暴狼藉が行われた。バングラデシュの街頭の騒乱では、約50人の人間が負傷した。
ディマスとは異なり、「国際通貨基金」(IMF)と世界銀行とは非常に警戒しているということを示した。「かなり多くの人たちが車にガソリンを入れる際、心配しているのに対して、他の多くの人たちはどうやって胃袋を満たすかを巡って争っている」と世銀の総裁であるロバート・ゼーリックは、ワシントンででの金融機関の春季大会で述べた。
アジアから北アフリカを経てカリブ海に至るまで、抗議の波が押し寄せている理由は、基本的な食料の価格が数ヶ月の間に二倍に跳ね上がったからである。ラテン・アメリカの最貧国での抗議の際、すでに5人が死んだ。確かに、エネルギーと飼料ための費用の上昇、アジアにおける需要の増大、オーストリアの旱魃も価格の高騰の原因である。
だが、補助金をもらったバイオ燃料も貧困層の生活苦の原因だという批判が増大している。ドイツの開発相ハイデマリー・ヴィチョレック=ツォイルは、ワシントンでバイオ燃料戦略について考え直すように要求した。この世界銀行のドイツ人代表の推定では、食料価格の高騰の30%から70%は、バイオ燃料のせいである。世界は、気候変動に対応し、食料の確実な供給と社会的発展とを調和させるために、新しいルールが必要だと彼女は述べた。
IMFの議長であるドミニク・ストロス=カーンも潜在的な紛争の火種に対して警告した。食料価格の高騰は、貧困国の数十万人の生存を脅かしている。それとともに、未開発国の若くて傷つきやすい民主主義も脅かされている。世銀によれば、もっとも貧しい人たちは、既に現在、彼らの収入の四分の三を食べ物に支出している。「数十万人の人間が飢えており、児童は一生涯栄養失調に苦しむだろう」とフランスの元財務相は警告し、国際的共同体に援助を要求した。救助の穴をふさぐには、少なくとも5億ドル(500億円)が必要だというのだ。(以下省略)
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「若い僧侶、北京政府の計画を台無しにする。」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月14日 | 中国の政治・経済・社会
2010年資本主義大爆裂!―緊急!近未来10の予測
ラビ・バトラ
あ・うん

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 繰り返し大きな叫び声を出して、一ダースあまりのワインカラー色の衣を着た僧侶たちは広場めがけて全力疾走した。二人は、人間ぐらいの大きさの青地に赤い太陽と二頭の雪ライオンを描いたチベット国旗を掲げていた。僧侶たちは、その旗を頭上で振り回した。どうしていいか分からないで、出し抜かれた治安警官たちは、ラブラン僧院の前庭に立ち尽くしていた。彼らは彼らが監視していた北京駐在の11人の外国通信員と同様、外の物音を聞いて、僧院から飛び出してきた。鋭い叫びが「経堂」のほうへつながった。そこでは、数百人の僧侶がお経を唱えていた。薄暗がりのなかでの祈りは、ジャヤーナリストたちに、チベット暴動以来、訪問者を締め出した寺院の正常な状態を見せつけるために、演出されたショウだった。外の若い僧侶たちは、まったく別の現実を白日の下に曝した。
 チベット・ラマ教の最大の聖地の一つであり、ダライ・ラマの出た寺院であるラブラン僧院の訪問は、北京政権が計画したのとは別の仕方で提示された。僧侶たちの第二のグループは、住居の別の角から寺院に向かって走っていった。彼らはチベット語で書かれた横断幕を掲げていた。男たちは私の腕をつかみ、私に話し掛けた。一人は中国語ができた。「われわれは自由になりたいのだ」と彼は言った。「われわれはわれわれのチベット文化と伝統、われわれの人権を守りたい。」他のグループにとっては、ダライ・ラマが大事だった。「彼に帰ってきてほしい。中国は彼と対話をしてほしい。」
二人の僧侶は、自分たちの腕を指差し、手で手錠を示唆した。「彼らはデモの後で、われわれの僧院から7人を逮捕した。」多くの僧侶は話しながら泣いていた。一人は顔を隠した。
 勇敢な僧侶たちは、小さなグループに分かれていた。彼らの数は、2ダースから3ダースに増えた。あちこちに、北京から記者団に随行した人たちが無反応に立っていた。
先週水曜日の行動は、明らかによく考え抜かれたものだった。3月24日の最初のジャーナリストたちのラサのジョカン寺訪問の際よりもよかった。ラブラン僧院は、甘粛省の南部にあり、省都の蘭州から約280キロ離れている。しかし、僧侶たちはわれわれが来ることを知っていただけではない。彼らは、機会を待っていた。それが来たのは、中国人の随行者がわれわれを「経堂」に導いたときだった。その際、治安警官たちが既に寺院の奥にいることを計算していた。(後略)
[訳者の感想]チベット人の抵抗運動はなかなか巧みなようです。
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「中国は、オリンッピク競技会をコントロールできない」と題する『シュピーゲル』誌の論説。

2008年04月12日 | 中国の政治・経済・社会
サブプライム後に何が起きているのか [宝島社新書] (宝島社新書 270)
春山昇華
宝島社

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 彼女の母ゼン・ジンヤンの腕に抱かれた生後4ヶ月のチアンシのイメージを、念頭から追い払うのは難しい。この少女は大声で泣き叫んでいた。彼女のくしゃくしゃの顔は恐怖そのものだった。もちろん、彼女は、なぜ、カメラのチームが彼女に覆い被さっているのか、フラッシュでまぶしくしているのか、その理由をしらない。彼女が耳にしているのは、政府をののしる母親の声であり、彼女が目にするのは母親が涙をぬぐう様子である。 母親は、彼女を自分たちが住んでいる地区へと連れ帰る。それは、北京の郊外にあるトンズー地区であって、「ボーボー・自由市」と呼ばれている。
 その名前は皮肉のかたまりである。チアンシは少なくとも彼女の幼年期を34才の父親フー・ジアなしでこの「自由市」で過ごすだろう。北京の地方裁判所は、国家権力の転覆を企てたという理由で、反体制派のフーに3年半の禁固刑を宣告した。実際は、彼はインターネットで中国政府に批判的な記事を公表しただけである。
 実際、裁判官がこのコンピューター専門家に有罪の判決を下した理由は、彼が第21回オリンピック競技会に来るお客さんに一種の歓迎のメッセージを公表したからである。中国政府の目から見ると、フーが書いたことは、統治システムを危険に曝すのだ。フーは、昨年9月に、訪問者のための公開状の中で、次のように書いた。「北京へおいで下さい。でも、この巨大なお祝い、花の海、ホステスの微笑、花火の歓迎など共産党によって指令されたモットーの下での「調和の喚起」には、ひどく暗い側面があることを忘れないでください」と書いたのだ。「中国には、選挙はなく、宗教上の自由もなく、独立の裁判所もなく、独立の労働組合もない。中国では、効果的な秘密警察が拷問と弾圧を行い、政府でさえも人権を侵害し、国際的義務を守る準備もない」と書いた。
 もちろん、これらの言葉は、北京でのオリンピック競技会の狂騒の結果としてアパートを失った請願者やエイズの患者のためのキャンペーンを何年も行ってきた人の言葉だ。彼の見解が真実だということは、彼が現在、直接自分の身に経験していることである。これらは、中国にとって、オリンピック競技会にとって、又残りの世界にとって暗い日々である。(以下省略)
[訳者の感想]これは、シュピーゲル誌の6人の極東特派員を総動員して書かれた非常に長い論説の冒頭です。
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「中年は今、現金がほしい」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月12日 | 社会問題
哲学個人授業-<殺し文句>から入る哲学入門 (木星叢書)
鷲田清一,永江朗
バジリコ

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 経済・社会の研究者であるマインハルト・ミーゲルは、将来、世代間に取り分の戦いが起こると予想している。連邦政府が決定した行過ぎた年金増額は、老齢化している社会の展開にとっての先駆けである。「これらは最初のツバメです」と「経済と社会研究所」(IWG)所長のミーゲルは『ヴェルト・オンライン』との会見で述べた。「われわれは老人共和国に至る途中なのです。」
 ドイツではますます少子化が進むと同時に、老齢化が増大している。将来、老人が選挙権者の多数を占めるだろう。「共和国が既にいま次の選挙をにらんで改革しなければ、このことは、私を悲観的な気分にしますね」とミーゲルは言った。というわけは、彼は年金生活者が自発的に比較的若い世代の負担可能性に配慮し、自分たちの要求を引き下げるとは予想していないからである。「中年の人口集団には時間の余裕はなく、現在、現金をほしがっている」と社会研究者は言う。
 子供を持たない人たちの割合が増えていることも、社会に巨大な影響を与えている。1965年生まれの女性の3分の1には、子供がいない。子供を産むという行動が変化しないと仮定すると、この年齢のグループには、将来も孫はいないだろう。「若年世代が老年世代の年金を支えるというこの世代間構造は、その場合にはもはや存在しません」とミーゲルは言う。「そえゆえ、社会のシステムにおいて、祖母とその孫の間の配分は、問題になりません。」
 ミーゲルの予言によると、現在成長している世代には、どんどん増大する税負担と支払い負担をする覚悟はできてないだろう。「若い世代は、負担を免れる手段や方法を見つけるでしょう。」この過程は、既に始まっている。普通の市民は、今日既に、過大な要求をされていると感じている。17年前から、すでに、市民は、彼らの実質所得が改善されていないと感じている。実質所得は、それ以来平均して約1,500ユーロ(24万円)にとどまっている。
 それゆえ、政治によって想定された年金保険や健康保険や介護保険の増額を国民が文句も言わずに引き受けると信じることは無理である。年金保険だけでも、2030年までに、現在の所得の19.9%から23%に増えると予想されている。その際、長期的予測は、経済的発展が持続的に増大することを前提している。だが、それは、グローバル化と厳しい競争から見て、決して確実ではないのだとミーゲルは言う。「だから、ドイツの社会システムは、非常にあやふやな磯の上に成り立っているのです。」(以下省略)
[訳者の感想]日本でも、年金が果たして貰えるのか、健康保険や介護保険の負担がますます増えるのではないかという漠然たる不安がありますが、ドイツでは元大統領や社会学者までがはっきりものを言っているなという気がします。今の日本政府にとてもこんな予測をする勇気はないでしょう。
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「新彊ウイグル自治区での静かな死」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2008年04月06日 | 中国の政治・経済・社会
中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす (NB Online book)
遠藤 誉
日経BP社

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ダライ・ラマは、いろいろに呼ばれた。ルパート・マードックは、一度、彼を「グッチの靴を履いて歩き回っている非常に政治的な坊主」と呼んだ。他方、CNNのアナウンサーのラリー・キングは、間違ってこのチベット人の政治的精神的指導者を有名なイスラム主義活動家だと述べた。しかしながら、先週まで、彼をテロリストと呼んだ人は誰もいなかった。
彼に非難を向けたのは、中国政府だった。中国政府によると、チベットにおける最近の暴動は、新彊ウイグル自治区から来た戦闘的なウイグル人と共謀したダライ・ラマによって指揮された。ウイグル人は、オリンピック競技会に対するテロ攻撃を計画していたというのだ。中国は最近二週間の間に二度、新彊ウイグル自治区出身の分離主義者を非難した。しかし、『ガーディアン』紙に載ったパラグ・カンナを別として、この話は、英国の新聞雑誌にこれ以上の報道を引き起こすのに失敗した。
 全く利己的な理由で、私はこのことに失望した。たまたま、私の新しい小説『タイフーン』は、アメリカの援助を受けて、北京のオリンピック競技会を吹き飛ばそうとするウイグル人過激派を扱っている。この種の陰謀が実際に進行中だという中国政府の示唆は、多くの小説家が夢見るたぐいの宣伝である。だが、ここには、もっと重大な点がある。仏教徒のチベットにとりつかれた英国のメディアは、新彊ウイグル自治区、特にトルコ系ムスリムに対する西欧の態度については多くのことを語っている。
 人々が新彊ウイグル自治区について無知である訳は、そこには、世界の注意を引き起こすのに十分な人物、つまりダライ・ラマや、リチャード・ギアがいないからである。もしこういう人物がいたら、われわれはウイグル人に対する野蛮な扱いについてもっと多くのことを知るだろうが。
 新彊自治区の分離主義的運動に対する中国政府の扱いは非常に偏執狂的なので、それは、非常に汚い口実で、無辜の市民を投獄している。
 ウイグル人たちは、彼らの独立の理由に対して同情的な新聞を読んだという理由で、投獄されてきた。ほかの人たちは、米国議会の基金による「自由アジア」というラジオを聞いたという理由で、拘留されてきた。公共の場で分離主義的な議論をするだけで、長期間、投獄される危険を冒すことなる。最近、シルク・ロードの町ホータンで、数百名がデモをしたために、百名のウイグル人たちが逮捕された。(以下省略)
[訳者の感想]ウイグル人の独立運動については、ヨーロッパでも、あまり報道がないようです。記事の筆者、チャールズ・カミングは、新彊ウイグル自治区の情勢に詳しい小説家のようです。
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「イラク政府軍兵士1千人以上、バスラの戦闘から脱走」と題する『ニューヨーク・タイムズ』の記事。

2008年04月04日 | イラク問題
北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠
浜田 和幸
祥伝社

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バグダッド発:先週行われたバスラ市でのシーア派民兵に対する戦闘の際、1千名以上のイラク軍兵士および警察官が戦うことを拒否するか、簡単に彼らの持ち場を離脱したと、木曜日にイラク政府の高官が述べた。イラク軍の将校によると、このグループには、数十人の将校と二人の野戦司令官が含まれる。
重要な戦闘の最中の脱走は、アメリカ軍が訓練したイラクの治安部隊の有効性に新たな疑いを投げかけている。大統領官邸は、アメリカ軍撤退の条件としてイラク軍と警察の準備ができることを挙げた。
バスラ作戦についての脱走問題や他の問題によって作り出された危機は、十分深刻なので、ヌリ・アル・マリキ首相は、急いで地方のシーア派部族からの募集兵がイラク軍に参加するように煽った。この動きは、すでにスンニー派の部族の間に怒りを生み出した。その理由は、スンニー派の反乱軍や犯罪集団に対する戦闘で彼らが協力したにもかかわらず、マリキ首相が、スンニー派から兵士を募集することには熱意を示さなかったからである。
 英国軍の将校は、マリキ首相が既にバスラ市に駐屯している3万人の治安部隊に対して6,600人の増強を行ったと述べた。米軍の高位の将校は、自分は1千名から1千5百名が脱走したと考えていると述べた。それは、投入された兵士の約4%にあたる。
 新しい「イラクに関する国家情報評価委員会」は、治安の改善を引用しているが、治安はもろいと結論している。
 役人たちは、バスラ作戦中のイラク軍の計画と遂行にかかわる問題を記述しているけれども、ムクタダ・アル・サドルとの緊張は再び増大する兆候が木曜日に出ている。日曜日に、支持者たちに戦闘を停止せよと要請したアル・サドルは、木曜日には、百万人のイラク人が、アメリカ軍の占領に抗議して、来週、シーア派の聖地であるナジャフに行進するよう要求した。彼はまた、マリキがイラク政府との協定の条項に違反したという理由で、マリキ軍に対する脅迫を述べた。
 戦闘に参加したなかったカラフ大佐が参加しなかった理由は、イラク治安軍は、彼が受け取った生命に対する危険に対して自分を守ることができないからであるとカラフ大佐の仲間は述べた。「もし、彼が戦えば、彼は何時か殺されるかもしれない。」(以下省略)
[訳者の感想]ムクタダ・アル・サドルには、軍人を脅迫する力があるようです。

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「世界はアメリカをより肯定的に見ている」と題する『BBCニュース』の記事。

2008年04月02日 | 国際政治
サブプライム金融危機―21世紀型経済ショックの深層
みずほ総合研究所
日本経済新聞出版社

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米国は肯定的な影響を及ぼしているという人々の平均的パーセンテージは、一年前の31%から35%に増えた。米国は否定的な影響を及ぼしているという人々の割合は、5%下がって、47%になった。
世界世論の一部である調査は、34ヶ国に住む1万7千人にインタビューを行った。調査期間は、2008年1月末までの三ヶ月間だった。
しかし、調査は、世界における米国の影響についての評価がなお主として否定的であると見いだした。もっとも、昨年調査された23ヶ国のうち11ヶ国では、改善されたのであるが。アメリカについての評価は、カナダとレバノンとエジプトでは悪くなった。
「BBCワールド・サービス」は、2005年以来、諸国の影響について人々の意見を調査している。2005年以来、毎年調査された17ヶ国のうち、アメリカについての肯定的な考え方は、今年32%に改善された。それ以前の三年間は、減少し続けていたのであるが。
世論調査の結果に関して、国務省の高官であるカート・ヴォルカーは、近年否定的だったということを認めたが、2003年と2004年とは、「イラク戦争」のせいで、異常だったと述べた。
「世論は、我々がしていることの遅れた指標であると言いたい」と彼はBBCとのインタービューで述べた。「誰でも愛されたいからね。しかし、われわれは超大国なのだ。われわれには、巨大な責任がある。大きな経済と大きな外交的軍事的到達範囲がある。だから、当然、世界は、ほかのどの国よりも米国を非常に注意して見ているのだ。」
他の国のなかでは、イランとイスラエルが最も否定的に評価された。イランの影響の否定的な見方は、54%に達した。だが、イスラエルについての否定的評価は、57%から52%に下がった。パキスタンは、三番目に大きな否定的な評価を受けた。
ドイツ連邦共和国は、初めて56%の肯定的な評価を受けたが、18%の人は否定的な評価をした。日本が肯定的評価を受けた第二位の国で、56%の人が肯定的な評価をし、21%の人が否定的な評価をした。しかし、隣国である中国と韓国では、多数の人が日本に対して否定的な評価を下した。ロシアは、調査された国々のなかでは、肯定的に評価する人が、29%から37%に増えた。
 調査はメリーランド大学の「国際政策態度プログラム」(PIPA)の協力を得て、国際的な世論調査機関である「グローブ・スキャン」によって行われた。
 PIPAの所長であるスチーブン・カルは、米国についての肯定的評価が改善したのは、間近に迫った大統領選挙に結びつけられるかもしれないと述べた。「米国が大統領選挙に近くなると、米国に対する見方が、新しい政府が世界中で不評だった外交政策から変わるだろうという希望によって和らげられるからかもしれない。」
 調査の対象となった人々は、ブラジル、英国、中国、フランス、ドイツ、インド、イラン、イスラエル、日本、北朝鮮、パキスタン、ロシア、米国、欧州連合が肯定的な影響をもつか、否定的な影響をもつか、意見を述べてくれと要求されたのである。
[訳者の感想]捕鯨問題が表沙汰になる前の調査だから、肯定的評価が高かったのかもしれません。あるいは、ドイツも日本も人畜無害だということかもしれません。
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「ディルバート戦略」と題するポール・クルーグマンの論説。

2008年04月01日 | アメリカの政治・経済・社会
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 大きな組織で働いた人なら誰でも、「組織図」には詳しい。なすべきことについて、自分自身にアイディアが欠けていることを隠すのに、マネージャーは、時に、誰が誰に報告するかを示すボックスやラインを置き換える。
われわれにはブッシュの行政府が形式上は今日公表される予定の金融改革のための新しい提案の背後にある原理が何であるか理解できる。それは実質的なことは何もしないで、現在の危機に対応する外観を作り出すための提案なのだ。
 過去数ヶ月間の金融上の出来事、特に過去数週間の出来事は、米国の金融システムが大きな改革を必要とするということを、すべての人に確信させた。改革がなければ、われわれは次々に危機に陥るだろう。そして、危機は次第に大きくなるだろう。
 ベア・スターンスの救済は、特に、パラダイムを変える出来事だった。伝統的な、預金を預かる銀行が、1930年代から規制されたわけは、世界大恐慌の経験が銀行の失策がどのように経済全体を脅かすかを教えたからだ。しかしながら、ベア・スターンズのような「貯蓄とは無関係な」機関が規制されなかった理由は、「市場の規律」がそれらが責任をもって運営されることを保証するはずだったからだ。
 だが、いざというときになったら、FRBは、あえて市場にその成り行きに進むように規制させなかったのだ。その代わりに、FRBは、ベア・スターンズの救済に向けて突進し、納税者の何十億ドルもの税金を危険に曝した。その理由は、主要な金融機関の崩壊が財政システムを全体として危険に曝すことをFRSが恐れたからなのだ。
 そして、ベア・スターンズのような金融機関が、以前には預金銀行にのみ限られた救済を受けるとすれば、その意味は明白であるように見える。つまり、それらの金融機関も銀行と同様、規制されるべきなのだ。
 しかし、ブッシュ行政府は、政府による金融産業の監督を廃止しようと過去数年を費やした。事実、新しい計画は、もともと、「競争力ある金融サービス分野が世界を指導し、引き続き経済的革新を支持するのを促進するように」構想されたものだ。それは、巨大な金融オペレーターをうんざりさせる規制を取り除くための銀行家の言い分である。
 路線を変更して、拡大した規制を求めるために、行政府は、その「自由市場イデオロギー」を放棄しなければならないだろう。そして、行政府は、このイデオロギーが間違っていたという事実に直面しなければならないだろう。しかし、この政府は自分が間違いをしたということを絶対に認めないだろう。
 そういうわけで、月曜日に行われた演説原稿で、ポールソン財務長官は、「現在の混乱に対するわれわれの規制構造を非難することは、公平でも、正しくもないだろう」と宣言したのだ。(後略)
[訳者の感想]現在、FRBや米国財務省がやっている金融機関への規制強化は、これまでの市場自由主義と矛盾していることを鋭く指摘した論説だといえるでしょう。『ニューヨーク・タイムズ』紙に載った経済評論です。
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