海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「無知は力である」と題するクルーグマンの論説

2012年03月10日 | アフリカの政治・経済・社会
冒頭に、クルーグマンは、アメリカの教育に対して、共和党の二人の大統領候補者が否定的な態度をとっていると指摘しています。サントラム候補は、オバマ大統領が、技術とコンピュータ科学の大学の入学者数を増やそうとしている理由は、大学が宗教的信仰を破壊する「教え込み臼」であるからだと主張して新聞のネタになった。ロムニー候補の大学の学費を心配している高校に対する返答は、もっと重大である。なぜなら、彼が言っていることは、アメリカの教育をさらに掘り崩すような政策の選択を示唆しているからである。
ロムニー候補は、高校生に次のように言っている。「学費が最高の大学には行ってはいけない。よい教育を受けられる少し学費の低い大学へ行きなさい。君はそういう大学を見つけられると希望したい。君が学費を払うためにする負債を政府が免除するなどと期待してはいけない。」
過去の世代にとっては、より学費の低い大学を選ぶことは、私立大学ではなくて、公立大学へ行くことを意味した。しかし、今日では、公立の高等教育が絶えず批判されている。高等教育のセクターは、公共領域の他のセクターに比べて、より厳しい予算削減を求められている。インフレに適応して、高等教育に対する州政府の支援は過去5年間に12%も下げられた。カリフォルニア州では、20%も削減されている。
その結果、学費はうなぎのぼりである。公立の四年制大学の学費は、過去10年間に70%も値上がりした。だから、「少し学費の低い大学を見つける」のは容易ではない。
もう一つの結果は、金に困った大学が教育するのに費用の掛かる領域で削減を続けていることである。フロリダ州とテキサス州を含む多数の州の公立大学は、技術やコンピューター科学の領域を全部なくした。
これらの変化が与えるであろう損害は明らかである。それなら、なぜ共和党は、高等教育を破壊するのか?
サントラム派が何に動かされているのかを理解するのは難しくない。大学へに行くと信仰がなくなるという彼の主張は間違っている。しかし、われわれのの高等教育制度が現在の保守派のイデオロギーに対して友好的な地盤でないということを彼が感じているのは正しい。共和党の保守主義に対して反対なのは、リベラル・アーツ担当の教授たちだけではない。自然科学者の中でも、民主党に同調する教授たちの数は、共和党に同調する教授たちの数に対して9対1である。
ロムニーに賛成するのはどんな人たちだろうか?彼らは、教育に対する十字軍によって危機に瀕している将来の経済的成功に対して関心がないのだろうか?
結局、過去30年間、トップ層の莫大な収入と普通の労働者の闘争との間には驚くべき断絶が存在した。アメリカのエリート層の利害は、この断絶が続くことを確実にすることによって、もっともよく維持されるということにあなた方が賛成しても構わない。だが、それは高所得に対する税金を何が何でも低くして、貧弱なインフラと訓練不足の労働力との帰結に対して心配しなくてもいいということを意味しているのだ。
[訳者の感想]最近新聞を丁寧に読まないので、ロムニーやサントラムが何を言っているのか知りませんでしたが、このクルーグマン先生の論説を読むと、どちらの候補者が大統領になっても、今後のアメリカの社会政策や経済政策にとってかなり厄介な問題になりそうですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする