上方落語というと、演者の前に「見台」が置かれ、噺の合間に拍子木で見台を叩きながら噺を進めることはなんとなく知識としてはあったが、上方落語の師匠からより詳しく上方落語の特徴を教えていただいた。
12月9日(土)午後、道民活動センター「かでる2・7」において、北海道文化財団が主催する「北芸亭 寄席演芸講座」の本年度第4回目の講座(本年度最終講座)が開講されるのを知り受講した。
講座の内容をあまり承知しないまま受講申込をしたのだが、会場はかでる2・7の小さな会議室で行われた。私は当初かでるホールで開催されるものと思っていたのだが、定員が20名と聞き、「これは少々マニアックな講座なのかな?」と身構えたところがあった。
講師は「落語芸術協会」(会長:春風亭昇太)所属で上方落語を演ずる真打の笑福亭羽光師匠だった。つまり笑福亭羽光師匠は、東京で上方落語を演ずるという特殊な立ち位置の方である。羽光師匠は当年51歳と落語家としては脂が乗っている世代である。
羽光師匠はまず、落語で使われる小道具について言及した。扇子、手ぬぐいについては江戸落語も上方落語も共通であるが、上方落語はさらに「見台」、「小拍子」、「張扇」といったものが使われる。さらに「見台」の前には「膝隠し」と呼ばれるものが置かれる。そして、上方落語は路上パフォーマンスから発展したもので庶民的であり、派手な衣装が特徴だとも話された。
※ 最も手前が「膝隠し」、その奥の机のようなものが「見台」、見台の上に載っている右手のものが「小拍子」、左手が「扇子」です。
こうした小道具の中でも「小拍子」で「見台」を叩くのが上方落語の大きな特徴だが、その叩くタイミングは “場面転換” とか、“時間経過” を表現する際に使われることが多いそうだ。
羽光師匠は上方落語には四つの派閥(系統)が存在するという。その四つとは、①笑福亭松鶴、②桂米朝、③桂春団治、④桂文枝、ということだが、羽光師匠はもちろんその名のとおり①の笑福亭松鶴の系統に属するとのことだ。
さて、上方落語にはもう一つ江戸落語にはない特長がある。それは「はめもの」と呼ばれるもので、口演中に演出としてお囃子を盛り込むところに違いがある。この日は同じく「落語芸術協会」所属の三味線奏者の成田みち子さんが来札され、羽光師匠の口演にお囃子を入れられた。「はめもの」には、三味線の他、太鼓、笛なども用いられる場合があるそうだ。これらのことを聞いただけでも、上方落語は賑やかな落語が想像される。
※ 三味線の成田みち子さんです。
これらの説明が終わった後に羽光師匠が一席演じてくれた。その演目は「七度狐」だった。演目中には成田みち子さんが三味線で効果的に奏し、声音でも演者を助ける場面があった。噺のオチが良く分かり、会場がおおいに沸いた。また羽光師匠の創作落語「46憶の妄想」という電波少年のような話も興味深かった。
私は札幌でこの種の講座が開催されていることを知らなかった。私にとっては単に落語を聴くよりは、こうした講座的なものの方が興味深く感ずる。幸い、北海道文化財団では来年も開催予定だという。注意深くチェックして来年は是非受講したいと思った。