脚本の力なのだろうか?先日観劇した「宿りして」の時の感想とはまったく反対で「良い演劇を見せてもらったぁ」という満ち足りた思いで劇場を後にすることができた。名脚本家:山田太一さんの脚本「林の中のナポリ」だった…。
昨日(12月3日)午後、一昨日の「宿りして」の観劇に続いて東区の「札幌市こどもの劇場 やまびこ座」で開演した山田太一作、劇団「座・れら」が演ずる「林の中のナポリ」を観劇した。
※ 会場となった札幌市こどもの劇場 やまびこ座です。ふだんはその名のとおり、人形劇など子供向けの舞台を上演している劇場です。
夫婦と、離婚して戻った娘の3人で経営する高原のペンション「林の中のナポリ」。そこがこの演劇の舞台である。冬を迎え客足の遠のいたペンションに現れた何やら謎めいた一人の老女…。老女ばかりでない。ペンションを経営する親子もまたいろいろと問題を抱えている。そうした中、物語は老女を中心に展開する。
※ この日の舞台です。ペンションのロビーという設定でしようか?
「林の中のナポリ」は、一昨日観た「宿りして」と違い、登場人物の相関図、そしてストーリーの展開が私にも十分に理解できる内容だった。
そして物語は思わぬ方向に展開する。なんと老女とペンションの主人が遠い昔、老女の息子と関りがあったことが判明したり、主人の娘が憎しみ合っていた元の夫と再出発すると言い出したり…。
混乱するペンションの夫婦に、老女は呟くのだった。「人や、人生なんて、思わぬことに出会うものなのよ。そのことを受け入れながら生きなくちゃ…」(確かそのような趣旨のことを彼女は口ばしったはずです)
※ 立ち稽古中の老女役の竹江さん(右)と、ペンションの主人役の斎藤雅彰さんです。
主演の竹江維子さん(老女役)はかなりのご高齢と拝見しました。しかし、演技の方はかくしゃくとして舞台をグッと引き締めていた。それもそのはず、資料を拝見すると札幌の演劇界の創成期から活躍されている方のようである。
ストーリーも、出演者の演技も、観ている私たちが十分に満足できる舞台だった。私は観客が舞台を評価する「オーディエンス賞」には五つ星のフルマークでこの日の舞台を讃えたのだった。