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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

対論「コロナ後の北海道経済をどう立て直すか」

2021-02-23 18:15:13 | 講演・講義・フォーラム等

 人口密度が低い北海道はコロナと共生するうえでの地域特性がある。はたまた、北海道はこれまで何度も経済危機を乗り越えてきた実績がある、等々二人の論者はコロナ後の北海道経済を前向きに語ってくれた。

   

 昨夕(22日)、北海道新聞社と北大公共政策大学院によるコラボ企画 対論「コロナ後の北海道経済をどう立て直すか」が開催された。経済のことなどまるで疎い私であるが、最近はリアルな講演会や討論会が激減していることから、たまあに頭の体操も良いかな?と考え参加することにした。

 登壇者は北大公共政策大学院の石井吉春客員教授北海道新聞の浜中淳経済部長のお二人だった。最初に石井客員教授が「新型コロナウィルス感染症と北海道経済」と題して問題提起された。

 その中で、石井客員教授は国の緊急事態宣言や北海道独自の集中対策期間の施策が功を奏して一定水準にまで感染が減少傾向にあるとし、重症患者や死亡のリスクは持病のある高齢者に集中している現実があるとした。そのうえで陽性患者の死亡率は自然死亡率と同程度の水準にあるとし、全体死亡率が上がっているわけではないと指摘した。石井氏は言外にコロナリスクをあまり大げさに騒ぎ立てる必要はないのではないか、と言われていると理解したのだが…。

 そして石井氏は「ウィズコロナをどう生きるか」という点については、感染対策を行いながら普通の生活を取り戻していく(ニューノーマルな社会の確立)「ウィルスと併存する社会」を志向していくべきではないか、と語った。

   

 続いて、石井氏と浜中氏の対論に入ったのだが、コーディネーター役の北海道新聞の堂本晴美報道センター部次長が三つの論点を示して、それに両者が答える形で進められた。

 一点目は北海道の主要産業の一つである「観光業」の今後について問われた。

 石井氏は、今回のコロナ禍で最も影響を受けている産業だとして、簡単に元には戻らないだろうとの見通しを立てた。そして今後は団体客より個人客、地元客に焦点を当てて質の高いサービスの提供を目ざすべきとした。また、北海道の特産品を広く発信することで旅前・旅中・旅後のサービスの提供も図るべきとした。

 浜中氏は、北海道の観光業が産業として自立したのは2008年以降で、まだ歴史が浅く団体客受入れが中心で、本当の意味で産業としての自立できていない現状だったした。今後は、行政と観光業界が連携して観光政策を確立していく必要性があるとした。その中で、休暇の分散化などについて検討する必要性についても論及された。

 二点目は北海道内の交通、特にJR北海道の苦境について問われた。

 この点について石井氏は、コロナ禍によってテレワークが推進され、出張による移動が大幅に減少するなど、今後も需要が戻る見通しが立たないとした。そうした中、JRは極めて厳しい状況にあるとし、北海道においては例えばLCCの活用など、大胆な交通体系の見直しが必要ではないかと指摘した。

 一方、浜中氏はメディアの代表としてと断りながら、JRの問題は縮小止むなしと思うが、JR問題は経済合理性だけでは語れない側面があるとした。つまり問題は国鉄分割民営化が決定された経過まで遡り議論する必要があるのではないかと強調した。分割民営化当時、国が道民に呼び掛けていた経緯などにも触れ、JR問題を単に北海道の問題として矮小化することの問題点を強調されたと私には聞こえた。

 最後に三点目としてコロナ後の北海道経済の可能性について問われた。

 この点について石井氏は、テレワークが推進され、通勤が無くなったことによって、それぞれの生活が改められ、東京で勤務することの無駄に気づいた人が多いのではないかと指摘した。以前に「地方創生」が施策として打ち出されたが逆に東京の一極集中が加速してしまった経緯がある。しかしICT環境が整備されつつある今、政策が関与することによって真の意味で地方の活性化を図ることが必要だとして、北海道は人口密度が低いことが大きなポテンシャルとなり、本社機能や研究施設などを積極的に誘致することだと指摘した。また、北海道の強みである食料、エネルギーなどの分野において持続可能性が叫ばれる昨今において有利に働くだろうとの見通しも語った。石井氏は、コロナ後は北海道が変わるチャンスであると強調された。

 一方の浜中氏は、コロナ禍が終息しても元には戻らないことを受け止めつつ、北海道の企業経営者はコロナ後を見据えた経営戦略を今から打ち立てておく必要があるとした。また、北海道の地方における人口減少は深刻で、地域のコミュニテイーが崩壊の危機にある。菅首相の言う“共助”の仕組みをどう構築するのか、政府、行政の対策の強化が望まれるとした。

 以上、お二人のお話を私なりの解釈でまとめてみたが、発言者の意図と異なる部分もあるいはあるかもしれない。詳しくは、北海道新聞の27日朝刊でその詳細が掲載されるということなので興味のある方はご覧いただきたい。

 人口の減少が著しい北海道において、コロナ禍がそれに追い打ちをかけている現状の中、北海道経済を語るのは難しいことであり、それを聴く私たちもともすれば暗い思いになるところだが、お二人には北海道が持っているポテンシャル、あるいはその先の光明について語っていただいた対論だったと解釈した。