田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 225 華の乱

2018-12-22 16:35:31 | 映画観賞・感想

 歌人で作家、そして思想家でもあった与謝野晶子の波乱に満ちた半生を中心に、明治から昭和にかけての文学界などの交友関係を描いた映画である。それは文字どおり晶子にとって華やかで、波乱に満ちた半生だった…。

                

 12月19日(水)午後、道民カレッジが主催する「懐かしのフィルム上映会」がかでる10Fの試写室で開催され参加した。「懐かしのフィルム上映会」は今回で3回目となるが、今回取り上げられたフィルムは、1988(昭和63)年制作の「華の乱」だった。

 この映画は出演陣が豪華絢爛だった。吉永小百合(与謝野晶子)、緒形拳(与謝野寛)、松田優作(有島武郎)、池上季実子(波多野秋子)、成田三樹夫(波多野春房)、松坂慶子(松井須磨子)、風間杜夫(大杉栄)、蟹江敬三(島村抱月)、中田喜子(山川登美子)、石田えり(伊藤野枝)等々…キラ星のごとくである。そして監督はエンターテイメントの巨匠・深作欣二監督である。 

 映画は必ずしも事実をもとにして描かれたものではないそうだ。映画の中では晶子は大正時代にあって恋多き女性として描かれている。しかし、有島武郎との関係は確かにお互いに好意を抱いていたとしても、映画で描かれたような関係にはなっていないというのが通説のようである。また、映画では有島と波多野秋子が心中をして直ぐに発見されたように描かれているが、実際には1か月以上発見されずに遺体が相当に痛んでいたというのが事実である。というように、事実と創作がない交ぜとなった映画と理解しながら観るのが正解のようである。

             

         ※ 与謝野寛との間に11人もの子をもうけた晶子だったが晩年は不仲だった。

 それにしても私には映画の主題が掴めなかった。確かに与謝野晶子を中心(特に晶子と有島武郎の交遊)として描いてはいるのだが、どうもストーリーはそれだけではなく、数々の愛憎劇も同時進行的に描いているのだ。松井須磨子と島村抱月、与謝野寛と山川登美子、大杉栄と伊藤野枝、そして有島武郎と波多野秋子というように…。 

 ウィキペディアでは、与謝野晶子の視点から大正時代の社会運動、芸術運動の群像を描いている、となっているが、私には文学界や芸能界、あるいは思想界など、当時の華のある世界の愛憎劇としか映らなかった…。

 そのような映画の主人公としてはたして吉永小百合はベストなキャスティングだっただろうかという疑問も残る。恋多き与謝野晶子の役は彼女には向かないのではないか?また、与謝野寛の妻として11人もの子どもの産んだ母親という役柄からイメージする母親像からはかなり離れた感じを私はもったのだが…。

             

            ※ 11人の子を育てるためにも懸命に文筆活動に勤しむ晶子だった。

 映画は30年前に制作されたものであるが、当時吉永小百合は40歳である。十分に美しく魅力ある女性として映っている(11人もの子どもを産んだ母親とはとても見えない)が、その彼女がいまだに映画において主演を務めていることは驚きである。

 けっして自分をサユリストなどとは言わないが、若き日から今日まで好ましく思っていた吉永小百合の主演映画であるが、私としては珍しく(?)辛口の感想となってしまった。