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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北大CATS公開講座⑦ 旅先に求めるホンモノとは?

2018-12-16 15:49:14 | 大学公開講座

 講師は言う。人々が旅先に求めるものは、世界遺産の寺院や国宝の仏像などを見に行く旅は“本物”を求めて出かける。しかし、「ホンモノのディズニーランドに行きたい!」と言ったときの“ホンモノ”とは、いったい何だろうか?その“ホンモノ”とは何かを考える講座だった。

 12月13日(木)夜、第7回目の北大CATS公開講座を受講した。7回目(最終回)の講座は「『ホンモノ』に出合う旅」と題して高等研究センターのセンター長である西山徳明教授が講師を務められた。

                   

                 ※ 講師を務められた西山センター長です。

 西山氏の問いを私は次のように解釈した。ディズニーランドは、日本のみならず世界中の人々を虜にし、旅行先として大きな集客力を示している。しかし、ディズニ―ランドは、W.Disneyというアニメーション作家が創作した世界を具現化したものであり、創りものの世界である。W.Disneyはより“ホンモノ”の世界を創り上げようとしたのが、ディズニーランドではなかったのか?そのディズニーの考えた“ホンモノ”とは何かを考えましょう、という問いだと受け止めた。 

 西山氏は次のような逸話を紹介してくれた。世界で最初のディズニーランドはロサンゼルス郊外のアナハイムに建設された。しかし、建設用地が事前に漏れたことで周辺には観光客目当てのけばけばしい建物(ホテルや物販店)が乱立して視覚的にディズニ―ランドの売りである「夢の国」の構想がぶち壊されたそうだ。

 それに懲りたW.Disneyはフロリダに極秘裏に広大な土地を取得して、業者の乱入を阻止して、従業員用の宿舎や関連施設などを網羅してディズニ―ワールドを実現させたそうだ。それはまるで周辺一帯をディズニーの統治国家のような様相を呈しているという。このディズニ―ワールドが完成した時にW.Disneyはすでに他界していたらしいが、これこそが彼の描いた“ホンモノ”のディズニ―ランドではないか、と西山氏は話された。

         

         ※ フロリダに展開するディズニーワールドです。さまざまな施設が広大な敷地に展開しています。

 続いて西山氏は、ハワイに造られた「ポリネシア文化センター(PPC)」の事例を紹介してくれた。PPCはハワイ諸島をはじめとするフィジー、タヒチ、サモア、トンガ、ニュー時ランドといったポリネシアの島々に伝わる伝統文化、風習などを伝える施設(公園)なのだが、この施設がハワイを訪れた観光客を捉えて離さないということだ。PPCの詳しい説明は避けるが、ここで西山氏は「モデルカルチャー」という言葉を私たちに紹介してくれた。「モデルカルチャー」とは、本物ではないが典型的な形で伝統文化、風習などを提示すること、とでもいうことができるだろうか?

               

            ※ ポリネシア文化センターの一部です。ポリネシアの風習、文化を体験できます。

 こうした事例から、誤解を恐れずに言えば、人々を魅了するテーマパークなどを建設する場合には訪れる人が“ホンモノ”と見紛うくらいな緻密さと徹底さを追求することが人々を満足させるということだろうか?バブルの時代に日本中を席巻したかのようなテーマパークはいずれもがその点において中途半端だったと言えるのかもしれない。 

 西山氏はさらに北海道に現存する「北海道開拓の村」についても言及された。「北海道開拓の村」がテーマパーク的施設か否かについては論のあるところかもしれないが、人々が体験し学ぶという点においてはPPCとの類似点が見られる施設である。(「北海道開拓の村」は本物を移築・展示している点ではモデルカルチャーとは一線を画す施設とも言える)

                 

                ※ 北海道開拓の村の全体像です。

 ところが「北海道開拓の村」の現状は人々にとって魅力ある施設となっているかと問われると「?」を付けざるを得ないのが現状である。その点について、ディズニーランドやPPCから学ぶ点が多々あるのではないだろうか、と西山氏は言いたかったのだと解釈した。 

 それほど頻繁に「旅」に出かける自分ではないが、「旅」への憧れは人一倍もっている自分である。今回のCATC(北大観光学高等研究センター)の7回シリーズの講座は(1回欠席してしまったが)どの講座も心楽しく拝聴することができた。