今秋、本道を襲った台風、それに続く胆振東部地震は道民(札幌市民)の潜在意識の中にあった安全神話を根底から覆すものとなった。そのことに対して改めて警鐘を鳴らす講座だった。
11月28日(水)夜、札幌市時計台において札幌大学時計台フォーラムが開催された。この日は「私たちの危機管理 ~“絶対”はありえません~」と題して同大学の浅野一弘教授が講師を務められた。
※ 浅野教授の写真はウェブ上に公開されているものを拝借した。
「札幌は、台風もこないし、地震もない」ということが流布されていたという。私も札幌は自然災害の少ない地域だという思いがあった。
事実、札幌市の企業誘致用のHPにはそうした類の文言が謳われていたという。(現在は削除されているということだ)
ところが今秋に連続して本道を襲った台風、そして胆振東部地震は、そうした思いを根底から覆すものだった。
浅野教授は、ご自身が阪神淡路大震災を体験されたことから、根拠のない思い込みはすべきではなく、「うちではおこらない」から「うちでもおこる」への意識変革が必要だと説いた。講座では、このことについてさまざまな角度から私たち受講者に対して喚起を促す内容だった。そのため講座において何か新しいことを獲得したということではなかったが、講義の中でいくつかの新しい言葉(私にとって)を知ることができたので、そのことを記して本講座のレポとしたい。
一つは、危機管理に対してのシミュレーションや訓練に関する言葉である。
「シェイクアウト」~2008年に米国においてスタートした訓練方法で、訓練の参加者は訓練会場において一堂には会さず、おのおのの場所で安全確保を図る訓練をすることだそうだ。
「ブラインド型」~事前に訓練のシナリオを知らせずに、実際の危機と同じ状況をつくり、その場その場で情報を付与していくという訓練だという。
この二つから見えてくるのは、米国においてはより実際的な訓練が主流となっているということだろうか?
※ 会場の2階ホールには、昨年10月に設置されたクラーク博士の座像が設置されていました。
浅野氏は政治学者らしく、本道には自然災害の危機だけではなく、人口減少、道立高校の廃校、公立病院の赤字、基礎自治体の財政悪化、JRの路線存続問題など多岐の危機が忍び寄っている、と説いた。
そうした危機に対して、危機管理の重要性を指摘した。そして危機管理には4つの局面があるとした。その4つの局面とは、①予防、②事前準備、③応急、④復旧、の4局面であるという。浅野氏はその中で、日本においては③の応急の側面が若干軽視されてきたのではないかと指摘した。“応急”を迅速に行うことによって減災に繋がる重要性を指摘した。
最後に危機管理を行っていくうえで大切なキーワードを紹介された。それは“TAPE”だという、TAPEとは「Transparency(透明性)」、「Accountability(説明責任)」、「Participation(住民参加)」、「Equity(公平〔正〕性)」の頭文字を取ったものである。
そして「明日の天気は変えられないが、明日の危機は下げられる!」という言葉を紹介していただき講義を終えた。
考えてみると、「“絶対”はありえない」という言葉は、何も自然災害や人災ばかりでなく、私たちの生活すべてに当てはまる言葉だと自戒する必要があると教えられた今回の講座だった。